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24話 不時着、夢幻島

『侵入者二名を確認』


 扉の中に入った瞬間、声が聞こえた。驚くほど無機質で固い声。でも、どこかで聞いたような。気になるが、先に地上へ降りてしまう。これ以上の航行は困難だ。


『支配者の喪失を確認。現在、侵入者三名。規定に従い、次期支配者候補を選定。候補者α(アルファ)、潜在魔力量グリーン、肉体頑強度グリーン、理知性判断レッド。判定、不適格。支配者代行権限により、候補者αを島外へ排除』


 やはり、聞き覚えのある声。だが、それよりも内容だ! 判定に合格しなければ島外へ排除されるのか!?


『候補者β(ベータ)、潜在魔力量グリーン、肉体頑強度はイエロー、理知性判断グリーン。条件付適確者に合致。接触を図る』


 この候補者βは、条件付きで合格したらしい。


「ヤマトさん、この声は一体?」

「分かりません」


 正直、分からないことだらけだ。あ、だけど一つ気付いたことがある。どこかで聞いたと思ったが、フェリアの声に似ている。彼女から感情を排除すると、こんな声になると思う。声の主は人工生命体の一種かもしれない。


『候補者βに問う。汝、夢幻島の支配者就任を受諾するか?』

「まさか俺に言っている?」

『イエス。繰り返す。汝、夢幻島の支配者就任を受諾するか?』


 この状況で判断できるか! 何とか情報を引き出さなければ。


「質問がある。夢幻島の支配者とは?」

『回答。夢幻島を管理する存在。島内の環境を整え、島民を導く存在である。主な能力は天候操作、魔獣配置、転移管理』


 質問に対して応答があったのは僥倖だ。少なくとも支配者について分かることがあった。この調子で必要な情報を聞き出そう。

 フェリアの声に似ているためか、彼女と話しているような口調になった。まあ、いいかな。向こうも気にする様子はない。


「ここにいる島民の数は?」

『回答。現在の島民数ゼロ』


 つまり、ここには誰もいないのか。


「さきほど侵入者と言いましたよね。それは何者ですか?」


 あれ? サクラさんの言葉には、何も反応しない。聞こえていないか、あるいは聞こえているが答えないのか。


「侵入者について教えてほしい」

「回答。許可を得ずに夢幻島へ来訪した者のこと」


 違う! 言葉の意味は合っているけど、そうじゃない!


「直近で排除した侵入者の詳細を教えてくれ」

『回答。35日前に機械魔獣が侵入。前支配者と交戦。前支配者を夢幻島の結界外へ追いやる。その後は島内を徘徊。前支配者の喪失に伴い、支配者代行権限をもって排除』


 今度は返答がある。俺の質問には答えるようだ。支配者候補βが俺で間違いないだろう。前支配者というのは、おそらく火竜王だな。


「機械魔獣とは?」

『回答。異世界の自立型戦闘機械が、飛空世界で魔獣化した存在。その元になった機械により、戦闘能力が大幅に変動』


 それなら侵入した機械魔獣は、火竜王より強力な存在ということだよな。これは危険かもしれない。


「その侵入者は、ここに戻ってくるのではないか?」

『ノー。排除後、転移機能を遮断。外部からの侵入は不可能』


 少なくとも今すぐ侵入者が来る心配はないのか。竜王種を退けるほどの存在だ。楽観視はできないが。


「ヤマトさん、転移機能を遮断と言っていましたよ! この島からは、出られるのでしょうか?」

「そうだ! 島の中から外へは出られるのか!? どうやったら出られる!?」

『ノー・アンド・イエス。仮支配者権限では不可能。夢幻島最深部に行き、支配者本登録後に転移機能・全解放権限を付与。別解、転移装置の封印を断ち切ること。仮支配者であれば、転移装置の起動が可能』


 封印って何だ? 俺は転移装置である扉に視線を向けた。気付かぬ内に、巨大な鎖で覆われている。あれが封印か。


「サクラさん、あの鎖を斬れそうですか?」

「残念ですが、無理だと思います」


 やはり無理だよな。恐ろしいほど魔力が込められた鎖だ。断ち切るのは、相当な威力の攻撃が必要だろう。解呪魔法も同様だな。


「とにかく今は情報が必要か。辛抱強く質問を続けよう」




 それから謎の声と質疑応答を繰り返した。まず聞いたのは名前。だけど個体名は無いと回答された。不便なので、以降は補助者と呼ぶことにする。支配者の補助を行う存在と言っていたからだ。


 補助者によると夢幻島は、かつて探求者が創造した島だ。下層の東部に存在するらしい。大陸崩壊直後に創り上げた、勇者や魔王級が挑むための迷宮を擁する島。つまり危険度が極めて高いということ。迷宮に近付くほど狂暴な魔獣が生息して、そもそも迷宮に挑むこと自体が難しい。


「ヤマトさん、どうしましょう?」

「食料が尽きるまでに、扉の封印を破るしかありませんね」


 不利益は無さそうだし、仮支配者は受け入れた。そもそも仮支配者でなければ、転移装置の扉は開かないらしい。真の支配者として登録するには、迷宮最深部へと行く必要があるみたいだ。現時点では、不可能と判断した。まあ支配者になりたい理由も無いけど。


 そこまで話を聞いたら、急激に疲労が襲ってきた。魔力を使い過ぎたのだろう。どうやらサクラさんも、かなり疲れているようだ。一度、休息することに決めた。携帯食で空腹を満たしたら、宿泊の準備をしよう。転移扉の周囲は安全地帯であり他の魔獣は入ってこないと聞いた。結界の魔力から判断して、信用できそうだな。ゆっくり休むとしよう。


 ――次の日。まず最初に、火竜王の肉を冷凍保存した。冷凍庫には入りきらないため、氷魔法と結界魔法を併用して保存をしている。結構な魔力を消費するから、昨日はできなかったのだよな。魔力合一の副作用だが、朝の時点で収まっている。朝食の後、身支度を整えた。それから俺とサクラさんは、夢幻島からの脱出方法を相談する。


「二人で修業したら、鎖を斬れますでしょうか?」

「正直、俺は自信ありませんね。そっちは、どうです?」


 サクラさんは、無言で首を横に振る。まあ、そうだよな。しかし食料の問題で、時間に限りがある。島で食料を探そうとも思った。だが点在する安全地帯を除き、天時級や地利級魔獣などの巣窟となっているらしい。今の俺たちで戦える相手とは思わない。短期間で封印を破る方法を考えよう。


「確実とは言えませんが、一つ手段があります」

「本当ですか、ヤマトさん!?」


 手段があることは本当だ。しかし実行するためには、飛空船創造スキルの説明が必要不可欠。ソウルスキル所持者は、良い意味でも悪い意味でも注目される。

 実力や経験の足りない駆け出しのときに公表するのは危険。まあサクラさんなら大丈夫か。他に方法も思い付かないしな。


「これから話すことは、秘密にしてほしいと思っています。お願いできますか?」

「秘密というなら、自ら話すようなことはしません。ですが私は隠し事が苦手で、絶対に大丈夫とは言えません。ごめんなさい」


 サクラさんが隠し事を苦手なのは理解できる。無理な頼みをしたかもしれない。秘密を押し付けるようで、悪いことを頼んだかな。


「可能な限り、気を付けてもらえれば大丈夫です。今から俺が使うソウルスキルの説明をします」

「ソウルスキルですか! もしや時空魔法に関連したスキルでは?」


 ずいぶんと鋭い指摘だな。確かに飛空船創造は、時空魔法と関連が深い。召喚や送還は異空間倉庫魔法と同質とも言える。船を創造するさいも、異次元に干渉して力を引き出しているらしい。自分の魔力だけで、数十メートルもする飛空船を創り出すのは至難の業だ。


「素晴らしい推測です。結構、近いと思いますよ。何か気付かれるような出来事はありましたか?」

「他の魔法と比べ時空魔法の練度が高すぎる、とピヌティが言っていました。私は時空魔法が得意なんだな、くらいにしか思っていませんでしたけど」


 そうか。ピヌティさんなら気付くかもしれない。最初に飛空船を見せたときも、異空間倉庫の練度が高いと驚いていたしな。それなら、彼女にも話しておいた方がいいか。隠し事が原因で、サクラさんと仲違いする恐れもある。


「とりあえず見てもらいます。飛空船、召喚!」


 まずボートを召喚して、この場に出現させた。見た目が完全に崩壊寸前である。原形が残っていることを、不思議に思う。空魚に襲われた時も壊れてしまったし、少し申し訳なく感じる。


「よく使っているボートですよね。今は壊れてしまっていますが。これがスキルと関係あるのですか?」

「俺のソウルスキルは飛空船創造。使っている船は全てスキルで創ったものです。当然、このボートも」


 あ、サクラさんが驚いている。分かりやすいな。


「わ、わかりました。つまりスキルを使用して、鎖を断ち斬る船を創るのですね。風刃翼の発展型でしょうか」

「先にボートを修復してしまいます。魔石以外で、火竜王が落とした素材は三つ。火竜の肉と翼、それに牙です。すみませんが火竜の牙を使用します」

「もちろん、構いません」


 価値としては、火竜の牙が圧倒的に高い。後で埋め合わせする方法を考えよう。サクラさんは気にしないように言うと思うけど、この辺はしっかり精算しないと。倉庫を開き、火竜の牙を取り出した。左手に持ったまま、右手でボートに触れる。


「では、いきます。飛空船、修復!」


 牙が消失し、力に変わる。俺を通して、力がボートへと流れ込んでいく。完全に沈黙していた飛空船が、再び息を吹き返した。見た目も新品同様。だが込められた力は、以前の比ではない。修復と同時に、強化も完了した。


「成功しました。そして飛空船、送還!」


 ボートと漁船を同時に送還する。これから、結構な量の魔力を使うためだ。少しでも使える魔力を増やしておきたい。


「次が本番となります」

「本番? もしかして新型飛空船の創造でしょうか?」

「その通りですよ」


 何度も失敗していた創造が、今なら可能だ。脳裏に浮かぶのは火竜王の姿。魂を震わせるほどの恐怖。だが打ち勝った。今ならできる。

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