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14話 登録完了、魔獣狩り協会

 俺は団長の部屋を辞したあと、そのまま詰所の外に出た。門の入り口には、人の列ができている。そこで身分証や来訪した目的を確認しているようだ。並んでいる人々には、様々な人種がいる。列の最後に並び、しばらく待つ。ようやく俺の番がきた。


「身分証の提示を」


 門番が簡潔に指示を出す。俺は少し緊張しながらステータスカードを見せた。


「仮証明書か。町に来た目的は?」

「魔獣狩り協会へ登録しに来ました」


 この理由は先程、団長から助言を受けたものだ。辺境だと登録所が無く、町へと来る若者は多いらしい。


「了解した。身分証に問題は無いが、仮証明だと制限がある。すぐ魔獣狩り協会へ向かうといい」

「わかりました」

「協会は大通りをまっすぐ行くと、右手側に見えてくる。左側には魔獣退治組合があるから間違えないようにな」


 団長から協会の場所は聞いていたけど、組合は聞かなかったな。向かい合って、建っているのか。


「ありがとうございます」




 門番に礼を言って、町の中へと入った。見る限り木製の建物が多い。列に並んだ時間を考えると、寄り道しないで協会に向かった方がいいだろう。

 しばらく歩くと、目的の場所が見えてきた。周囲の建物より、一回り大きいな。看板も目立つ場所に掲げてある。ゆっくりと扉を開け、中に入った。どの受付も、順番待ちがある。さて、どこの受付に並ぼう。


「見ない顔だな。依頼か? それとも新入りか?」


 声を掛けてきたのはスキンヘッドの大男。顔に大きな傷があり、強面で目付きも鋭い。背中には巨大な斧を背負っている。物々しい鎧を身に着けて、今から決闘にでも行きそうな雰囲気だ。


「新しく登録をしにきたヤマトと言います。魔獣狩り協会所属の方ですか?」

「その通り。協会所属の魔獣狩人アクスだ」


 アクスさんが近付いてくる。雰囲気だけで強者と分かった。今の俺では、勝負にならないだろう。普通に戦えばだが。


「さて、新入り。貴様に良いことを教えてやろう」


 声は重々しく、迫力があった。さて良いこと、か。俺に逆らうと痛い目にあう。大人しく従う方がいいぜ、とかじゃないよな。相手の動きを見落とさないように、注意を払う。


「ご親切にありがとうございます。お聞かせください」

「新規登録のことだ。五つの受付席で、対応しているのは1番だけ。他は対応していないから気を付けろ。なんでも魔導機械の調整で、今だけ限定にしたらしい」


 本当に良いことだった! 1番以外だと、並び直しの恐れもあったよな。考えてみたら、少し顔が怖いだけで警戒したのは失礼だったかも。反省しよう。


「助かります。どこに並ぼうか考えていましたので」

「いいってことよ。助け合いの精神が大切だからな」


 アクスさんは、笑いながら立ち去る。そのまま出口に向かい、外に行く。感じのいい人だったな。俺は1番の受付に向かい、列の後ろに並んだ。待っている間に、辺りを見渡す。

 気になるのは掲示板だな。特に魔獣の素材を納品する依頼が張り出されたもの。飛空船の強化には素材を使うけど、同じ素材だと強化効率が落ちる。余った素材を納品して金を稼ぎつつ、多種類の素材を探しに行こう。




「お待たせしました。次の方、どうぞ」


 意外に早く、俺の番が来た。受付席に進む。首から会員証を掛けていた。名前はトリアさんか。美人な女性だ。ちょっと緊張する。


「担当のトリアと申します。本日は、いかがなされましたか?」

「新規で登録をしたいのですが」

「かしこまりました。それでは身分証明書を魔導機械へと差し込んでください」


 言われた通り、ステータスカードを機械へと差し込む。緑色のランプが点いた。とりあえず問題なさそう。


「ヤマト様、ですね。お話は伺っております。はい、これで登録は完了しました。以降、本証明書として利用できますよ」

「どうもありがとうございます」


 俺は礼を言って、カードを受け取った。発行者が魔獣狩り協会に変わっている。


「新規の登録ですので、当協会について説明させていただきます。ご存じのこともあるでしょうが、必ず説明する決まりです。少しだけ、お付き合いください」


 そこまで言って、トリアさんは軽く頭を下げた。


「魔獣狩り協会の目的は、主に二つあります。人類を脅かす魔獣を退けることと、狩った魔獣から素材を入手することです。また魔獣退治組合も同様の目的を持った組織となります。ただし組合は前者を、協会は後者を重視する傾向が強いですね」

「……つまり人間の生活を守るのが組合で、人間の生活を豊かにするのが協会か。なんとなく分かりました」


 この辺りは本にも書いてあった。でも実際に所属する会員から聞くのは、大切と思う。今まで漠然と戦闘重視か探索重視、そんな風にしか考えていなかったから。そういえば、サクラさんは組合の所属と言っていたな。なるほど。


「あら良いことを仰いますね。ところでヤマト様は、別の国や大陸に移る予定などあるのでしょうか?」

「あります。いろいろな場所に行ってみたいので」


 できれば魔法都市に行きたいな。大型の飛空船博物館があるらしい。また専門の魔法教育機関も気になる。飛空船を強化する魔法を探してみようか。


「それなら、絶対に覚えていただきたいことがあります。協会も組合も世界規模の組織ですが、国や地域によって重要度が異なるのです」


 重要度? 信用とか依頼の多さに関わるのかな。


「歓迎されることもあれば、ごろつき同然の扱いをされることもあります。場合によっては、謂われなき尋問を受けることすらあるでしょう。そのときは協会まで、ご一報ください」


 思ったより立場が変わるんだな。身分証を手に入れて万事解決とはならないか。まあ国から見れば、民間の武装集団を警戒するのは当然と言える。


「この国はどうなんでしょうか?」

「カイス王国では、とても良好な関係を築いています。騎士団や衛兵団とも上手に共存しているのです」


 たしか騎士団は外敵に備えること、衛兵団は都市内の治安を守ることが仕事だ。道中でピヌティさんが言っていた気がする。実際は明確な区別が難しいとも言っていたけど。


「ただ騎士団と衛兵団の仲が悪くて、仲裁が大変なんですよね」


 うーん、この国は大丈夫なんだろうか。防衛組織と治安維持組織が喧嘩中なんて笑えない話だ。


「今のカイス国には、三人の王女様がいらっしゃいます。騎士団は第一王女派で、衛兵団は第二王女派。本当に険悪な関係で困っています」

「派閥争いですか」


 世界が変わっても、この辺りは変わらないよな。国民に被害が及ばないよう願うしかない。


「第一王女の青い髪が美しいと言えば、第二王女の赤髪こそ国を照らす光の象徴と反論する。第二王女の剣舞は全てを魅了すると言ったら、第一王女の歌声は人々に癒しと安らぎを与えると対抗するのです」

「今、政治の話をしていますよね!?」


 切実に、この国は大丈夫なんだろうか?


「まったく嘆かわしい! 第三王女のバイオレット様こそ、至高の存在です!」

「……トリアさん、あなたもですか」


 なんか急に疲れてきたな。


「ただ現状の要因として、貴族の存在を忘れてはなりません。一部の貴族により、騎士団と衛兵団は政治に関する権限を奪われたのです。政治への介入はもちろん、話題に出すことさえ禁止されるようになりました」

「……建前上は政治の話をしていないことにして、派閥争いは容姿や芸術の話題を出すようになったのですか」


 そこまでして、派閥争いを続けるのか。それより気になるのは、話題に出すことすら禁止する貴族の方だな。実権を握るために、むりやりな制度を作ったようにも見える。


「ただ騎士団と衛兵団の関係は、改善の兆しが見えています。ある貴族の屋敷に、黄腕党が押し入りました。そのときに両団の権限を奪って、自分たちの私兵にする計画書が見つかったのです」


 そんな計画が見つかったら、さすがに協力しようとするか。自分たちの権利が、全て剥奪されるわけだからな。その後、本当に改善されるかは状況次第。


「もしかして黄腕党が生け捕り最優先になったのは?」

「考えている通りだと思います。計画に関わっていない貴族が身の潔白を証明するため、計画の全貌が判明する証拠を求めているのです」

「やはり、そういうことですか」


 その結果、サクラさんは待機となったわけだな。


「それに一部の貴族が暴走しているのを快く思っていない者は、貴族内部にも沢山います。大半の貴族は善良といってもいいですよ」


 大半は善良でも、一部の貴族による暴走を止めることができなかった。あるいは善良だからこそ、止めることができなかったか。悪辣な手段は苦手そうだし。


「魔獣狩り協会としては、人間同士の争いに関与したくありません。ただ現状ではそうもいっていられないのです」

「関連した依頼もありますよね」


 魔獣退治組合からも人が出ているんだし、協会にも依頼が来ているのだと思う。戦力が必要なんだろうな。でも依頼が増えているなら、稼ぎやすいかもしれない。


「正直、投げ捨てたくなるほどに依頼はあります。そちらに人を取られて、素材の収集も滞りがちなのも痛いです。ヤマト様は飛空船を異空間倉庫に収納されているとのこと。船を活用して、周辺の浮島にいる魔獣を狩ってもらえると助かります」


 あれ? なんで飛空船を収納していることを知っているんだ。どこかに密偵でも放っているのか? 協会、怖いな。


「その飛空船ですが、勝手に乗り回したら駄目ですよね。登録とか必要ですか?」

「必要です。発着場の隣に登録所がありますから、そこで手続きをお願いします。協会の仕事で必要と伝えれば、すぐに許可が出るはずです」


 次の目的地が決まったな、飛空船発着場に行こう。トリアさんに、正確な場所を聞く。


「すぐに地図を用意します。それから、細かな規則が記された書類です。口頭でも説明しますが、後で目を通してくださいね。ついでに主要な施設が載った案内書も同封しました」

「ありがとうざいます」


 手渡しで書類を受け取った。結構、量があるな。案内書は助かる。提携している宿泊所や雑貨屋なども載っていた。所々に書き込まれた感想は、協会員によるものだよな。


 それからは簡単に規則の説明を受けた。むやみに暴力を振るわないとか、依頼の注意書きはしっかり読むとか、そんな内容ばかりだった。ちょっと気になったのは階級についてか。協会が普段の活動を査定し、昇級を決定する。ただ試験を受けて昇級したり、大きな功績を挙げると特別昇級が認められたりもするらしい。


「――以上となります」

「ご丁寧にありがとうございました」

「いえ、職務ですから。ヤマト様のご活躍を、お祈りいたします」


 俺は書類を異空間倉庫にしまい、改めて礼を言って立ち去る。

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