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126話 二回戦、蒼玉船のドミヌス

 これから、二回戦が始まる。制限時間は、一回戦と同じく三十分である。勝負がつかなければ、五人の審判による判定だ。

 俺の試合は、今日の最後となる。それまでは観戦だな。情報収集も兼ねている。自分が戦うときを、想定しながら見ようと思う。




 ――夕刻、やっと試合の時間がきたな。俺は竜人船トライバスターに搭乗して、開始位置まで進んでいく。相手も準備ができたようだ。魔法と武器を駆使して戦う女性選手と聞いている。


『蒼玉船のドミヌス選手は、剣と魔法を使います。相手によって戦法を変えており一筋縄ではいきません』

『扱う飛空船も欠点が少なく、非常に優秀だな』


 突出した点が無い代わりに、大きな弱点も存在しない相手か。


『竜人船のヤマト選手は、豊富な魔力量が最大の特徴と言えるでしょう』

『重量級の飛空船を、正面から打ち破るほどの魔力だからな。近付くのは、覚悟がいるだろう』


 予想した通りの説明だ。ありがたいな。これで少し作戦が展開しやすくなった。今の話を聞けば、接近戦が危険と判断されやすくなる。後は相手の行動によるか。さて、時間だ。


『闘技大会二回戦、第十六試合の開始です!』


 俺は足を止めて、魔力を高める。


「光の槍、七連!」


 七条の槍が上空に向かった。当然ながら、このままでは結界に衝突するだろう。途中で軌道を変えて、蒼玉船を狙う。


 だが俺の目前には、巨大な氷塊が迫る。俺は火魔法を発動させて、氷を融かす。この水にも魔力が込められている。気を付けよう。


『ヤマト選手、氷魔性を防ぎました! 火魔法による迎撃です!」

『一方のドミヌス選手は、危なげなく光槍を避けているな』


 人型飛空船の扱いに、慣れているようだ。回避する姿が、様になっていた。再び魔法を発動させたか。氷塊の次は、氷槍。数は一。


「火球、槍を迎え撃て!」


 一直線に向かってくるなら、さほど怖くない。余裕を持って、撃ち落とせるな。とはいえ、それは俺の攻撃も同じだ。


「光の槍、八連!」


 このうち半分は一直線に、残り半分は上空から狙わせる。速度を調整し、同時に命中させることを意識した。


『ドミヌス選手! 前方から来る光槍に近付き、剣で切り払います!』

『あえて近付くことで、個別に対応が可能となったのだ』


 前進した分、蒼玉船が後ろに下がった。魔法合戦に付き合ってくれるようだな。昨日の試合を見て、近接戦を警戒したのだと思う。


「こういうのは、どうだ! 光の矢、三十連!」


 俺は自らの周囲に、三十本の光矢を作り出した。全てを蒼玉船に向け撃ち出す。狙いは甘くなるが、気にしない。


『おおっと! ヤマト選手、大量の光魔法を放ちました!』

『数で勝負ということか』


 次々と光矢が、蒼玉船に襲い掛かる。そこそこの数が地面に当たっているけど、計算通りだ。最後に勝利することが、目的だからな。


 蒼玉船は光の矢を避け続ける。当たりそうな矢は切り払い、あるいは魔法の盾で防いでいた。防御魔法も使えるようだな。


『素晴らしい回避能力です! あれだけの魔法に一度も当たっていません!』

『避けるときと、防ぐとき。的確な判断をしている。見事なものだ』


 最後の矢が避けられた。次の攻撃魔法を使おうと考えていたら、蒼玉船の周囲に氷の矢が発生。お返しだろうか。おそらく回避をしながらも、反撃の用意を進めていたのだと思う。


 数は二十ほど。竜人船の方に向かって、飛んでくる。俺は冷静に火の壁を作り、全ての氷矢を水へと変えた。


『ヤマト選手、炎の壁で矢を防ぎました!』

『この試合、長引くかもしれないな』


 解説のオルノブさんが言う通り、簡単に勝負がつきそうもない。お互い魔法戦を得意としているからだ。





 ――試合時間は、残りわずか。五分を切っている。両者、クリーンヒットなし。何度も魔法を使ったが、距離が開いているため決定打にならない。


 この魔法戦で、俺の周囲は水浸しになっていた。相手の使う氷魔法を、火魔法で迎撃しているからな。


『両選手、互いに譲らぬ魔法戦です!』

『水や氷の魔法を得意とするドミヌス選手。火や光の魔法を使い分けているヤマト選手。どちらも見劣りしない腕だろう』


 そろそろ相手が勝負を仕掛けるころか。判定を狙うことは、まず考えられない。


『オルノブさん。このまま判定となったら、どちらが優勢なのでしょうか?』

『四対一で、ヤマト選手が有利だろう。審判の一人は、機動力を重要視している。その者だけが、ドミヌス選手に票を入れるはず』


 おそらく、相手も理解していると思う。だからこそ、このままでは終わらない。必ず何か行動に出る。


『機動力で、ドミヌス選手が優っているのですね』

『そういうことだ。それも当然だな。ヤマト選手は、試合開始から一度も船を動かしていない』


 そう。俺は動かずに、魔法を使い続けている。下手に動いて集中を切らすより、魔法だけに専念するため。おかげで終始、優勢に試合を続けられている。有効打が無いのは、相手の回避が上手かったからだな。


 俺は魔力感知を、最大限に高める。蒼玉船の方から、莫大な魔力を感じた。氷の槍。ただしサイズが普通ではない。十メートルは、あるだろうか。人型飛空船でも直撃すれば危険だ。


『ドミヌス選手! 巨大な氷の槍を、上空に飛ばしています! そこから竜人船を目掛けて、落下させました!』


 最後の勝負か。俺は竜人船に魔力を(みなぎ)らせる。


「炎の槍!」


 氷槍と炎槍が、中空で衝突した。周囲に大量の水が、降ってくる。直に接触した部分は、一瞬で蒸気に変わったはず。熱の余波で、氷が解けたのだ。炎槍に込めた魔力が相手を上回った証左だな。


 次の瞬間、地面から水の槍が襲ってくる。氷魔法が融かされ、魔力を込めた水が大地に満ちていた。それを利用し、隙を見つけて発動させたのだ。さっきの氷槍は上空に注意を引き付けるのと、水の槍を発動する鍵にしていたのだろう。


『地面からの魔法攻撃! 飛空船が串刺しになっています!』

『今、試合終了の合図が出た』

『竜人船、ヤマト選手の勝利です!』


 俺の視界には、大地の槍に突き刺された蒼玉船が映っている。あれだけ傷付けば戦闘続行は不可能だろう。


『最後は二人とも、似たような攻撃方法でしたね』

『大地に魔力を込め、機を捉えて発動だな。媒介にしたのは、氷魔法や光魔法か。どちらも外れることを前提に、仕込んでいたのだ』


 最後に勝つための布石だな。大地の槍が消失し、蒼玉船が倒れる。


『ドミヌス選手は、大丈夫でしょうか』

『すでに担当者が向かっている』 

『――どうやら、無事に救出されたようです』


 救護班が蒼玉船に近付いて、対応した。ドミヌスさんに、ケガは無いみたいだ。これで一安心だな。


『同じような攻撃を受けたのに、蒼玉船と竜人船では被害が違いますね』

『ドミヌス選手は攻撃に気を取られて、防御面が疎かになっていた。一方のヤマト選手は、攻撃を予測していたのだろう。魔法防御力を高めていたようだ』


 蒼玉船の損傷は深いな。至る所が、貫通していた。この威力ならば、装甲が厚い操縦席でも貫けるぞ。地竜の爪による強化が効いているのか。




 休憩室に戻ろう。俺は竜人船を飛ばし、格納庫に停めた。後で忘れずに、調整をするつもりだ。最後に水の槍を受けたからな。見た目に傷は付いていないが、念のために様子を見たい。


「ヤマトさん、お帰りなさい!」

「ただいま戻りました」


 一回戦のときみたいに、サクラさんが出迎えてくれる。休憩を勧めてくれるのも同じだ。しかし今日は、竜人船の調整をする必要があるな。夕食後に行うよりは、先に済ませてしまいたい。作業用の服に着替えたら、さっそく始めよう。


 作業が終わったころ、夕食が完成したと告げられた。ありがたく、いただこう。明日も試合だからな。しっかり食べて、しっかり休もう。

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