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125話 一回戦、大熊船のバルガ

 今日から個人戦が開始される。複座式戦は、個人戦が終わってからだな。当初は並行して進める案も出たらしい。最終的に、日程をずらすことに決定したようだ。俺みたいに両方の試合へ出る場合は、ありがたいと思う。


 準備を済ませたら、会場に向かう。時間に遅れたら失格となる。今日の試合は、三十分の時間制限があると聞いた。一日で16試合を終わらせるとのこと。手続きをしたら、格納庫へ行く。


「ヤマトさん。他の人たちも、集まっていますよ」

「そうですね。問題を起こさないように、注意しましょう」


 格納庫内は、選手ごとにスペースがある。勝手に他の場所へ侵入すると、失格となる場合もあるらしい。人型飛空船を置いたら、割り当てられた休憩室に向かう。


「しばらくしたら、試合の組み合わせが放送されるはず」

「魔導放映板を、見逃さないようにします」


 後で試合表を貰えると聞いたけど、最も早く分かるのが魔導放映板での発表だ。それまでは本でも読んでいるか。


「始まったよ!」

「あ、最初はクラースさんですね」


 マリアさんの声で顔を上げ、放映板を確認した。試合の組み合わせが表示されていく。


「ヤマトさんの名前が出ました!」

「一回戦の三十二試合目、終盤ですね」


 本戦には64名が出場する。つまり一番、最後である。サクラさんは少し首を傾げているな。気になることが、あるのだろう。


「この位置、偶然だと思いますか?」

「まさか。騎士団の出場枠が、決勝戦で当たるようになっているのでしょう」


 抽選で組み合わせを決めたとは、言っていないしな。有力選手たちの試合は後にしたいのだろう。


 話をしていたら、連絡係の人が試合表を届けに来てくれた。これから、開会式があるらしい。その報告も兼ねていた。各自が人型飛空船に搭乗して参加だ。準備をするか。――開会式は思ったより、早く終わった。休憩室に戻ろう。


「お疲れ様です。どうでした?」

「本当に疲れました。苦手な雰囲気ですよ」


 俺はサクラさんに、苦笑を浮かべながら答えた。すでに観客がいて、驚いたよ。開会式を見るのも、楽しみにしている人が多いらしい。

 さて、もうすぐ第一試合が始まる。クラースさんの応援でもしようか。相手は、知らない人だな。


「すぐに試合が放送されるみたいだな。見るだろう?」

「もちろんです。戦い方の参考になりますから」


 皆で感想を言いながら、観戦をする。出場者には、俺の知っている人もいたな。実戦部隊の人たちも、頑張っているようだ。


 一日で行われる試合は16試合。俺の出番は明日だ。休憩室は宿泊所も兼ねていると聞いた。今日から泊まりだな。そして本戦の初日が終わる。




 明くる日。試合開始の時間が来た。一回戦の第17試合からだよな。選手の動きを見ると、実力者が揃っていると分かる。


 しばらく観戦を続けていたら、ようやく俺の出番がきた。係員の指示に従って、会場の入り口で待機する。前の試合が終わったようだな。少しだけ待つと、入場の合図が掛かる。さあ、行こうか。




『本日、最後の試合となりました。大熊船に搭乗するバルガ選手と、竜人船を駆るヤマト選手の入場です!』


 試合会場に入ると、実況――ラナさんの声が聞こえる。そして見物人の歓声も。飛空船格闘を思い出すな。


『バルガ選手は重量級の飛空船に乗り、力で押すのが得意だ』

『予選では大抵の攻撃を、厚い装甲で弾いています。防御力も見事ですね』


 反面、機動力は低いみたいだな。それに遠距離での攻撃も、苦手にしていると。要するに純粋な戦士型なのだろう。


『一方のヤマト選手だが、人型飛空船の公式試合に出場した記録は無い』

『地竜討伐のため、予選も辞退しています。しかし、その功績によって騎士団から特別出場枠を譲られました』

『騎士団との模擬戦記録を、提供してもらった。実力があることは、間違いない』


 その記録には、マリアさんも協力している。見学をしながら、対応してくれた。騎士団に渡したら、好評だったな。


『両者、開始位置に着いた。準備は良さそうだ。審判も問題なし』

『時間になりました。それでは闘技大会一回戦、第三十二試合の開始です!』


 合図と同時に、ゆっくりとバルガさんが動き出す。一直線に、近付いているな。俺は速度を合わせながら、前へ進んだ。


『どちらも前に出ました! もう手が届く距離です!』


 竜炎牙刀に魔力を込め、正眼の構えを取る。相手の武器は大剣だな。重量なら、向こうの方が上だろう。後は魔力の量で決まる。


 一歩、進み出た。刀と剣が衝突する。凄い力だ。武器と船体の重さを合わせると竜人船の倍くらいかもしれない。だが魔力で補う!


『なんと押し合いを制したのは、竜人船です! バルガ選手、大きく後退!』

『重量で劣る分を、魔力で覆したようだ。それと飛空船の出力に差があるな』


 何度も強化した飛空船だ。出力では、そうそう負けない。そして後ろに下がった大熊船を追い、距離を詰める。


『ヤマト選手、バルガ選手に急接近! 追撃を仕掛けます!』


 本戦に出場する選手だ。ただのパワーファイターとは、考えられない。機動性や遠距離攻撃を重視する敵に慣れているはず。中途半端な距離で戦うより、近接戦を選んだ。


 魔力を込めて、刀を振る。もしも技術に長けた相手なら、受け流されるだろう。しかしバルガさんは、技を重視するタイプではない。一合、二合。そして三合目。大熊船の剣を弾き飛ばす。


『バルガ選手、武器を飛ばされました! 逆転の手は、あるのでしょうか!?』

『苦しい立場だ。おそらく正面から衝突し、押し負けた経験は少ないはず』


 ここで終わらせる!


「竜炎牙刀、一の太刀!」


 大熊船の右腕を斬り飛ばす! ちなみに二の太刀とか、三の太刀は無い。気合を入れるための声だ。人間相手なら、深読みして警戒しないかなと思っている。


『これは素晴らしい一撃! 審判は、どう判断するのでしょう!?』 

『この時点で試合終了を宣言しても、不思議はない。近接重視の大熊船が、片腕を失ったのだ。魔法型なら、様子を見るかもしれないがな』


 直後、終了の合図が掛かった。審判により、俺の勝利が告げられる。


『試合終了! ヤマト選手の勝利です! どうでしたか、オルノブさん』

『興味深いのは、竜人船の戦い方だ。ただ魔力を込めた斬撃。技術よりも、威力を重視している。魔獣を倒すために、鍛えたものだろう』

『魔獣狩人ならではの、戦闘方法でしょうか。次回の試合も楽しみですね!』


 まだ解説は続いているけど、すぐ休憩室に戻ろう。短時間の戦闘ではあったが、かなり魔力を消耗している。一撃を弱めれば、押し負けたのは俺だったからだ。




 格納庫に竜人船を停め、休憩室に入った。試合は無傷で勝利している。修復する箇所は無い。このまま休もう。


「ヤマトさん、おめでとうございます!」

「なんとか初戦は勝ちましたよ」


 部屋に入ると、最初にサクラさんが出迎えてくれた。少し遅れてピヌティさんとマリアさんからも、声を掛けてもらう。皆から祝いの言葉を聞いた。明日の試合も頑張ろうと思う。


「今から夕食の用意をするので、ゆっくりしてくださいね」

「ありがとうございます、サクラさん」


 お言葉に甘えて、休ませてもらおう。夕食の後は、明日の試合に備えないとな。いくつか作戦も考えておく。


「ところで、ヤマト殿。今日は自ら接近戦を、仕掛けていたな。明日の戦法は?」

「相手は魔法戦士型ですよね。可能ならば、遠距離戦を挑みます。さっきの試合を見ていたら、近接戦は仕掛けてこないでしょう。上手く魔法勝負に持ち込みます」


 想定通りに進めば、明日は魔法戦の根競べになるはず。食事を取ったら、早めに休もう。

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