122話 報告、地竜討伐
地竜との戦闘が終わり、周辺を見渡した。まだ光魔法の効果が残っているため、視界に問題はない。
「ひどい状況ですね」
「地竜の魔法だな。整備するのは、大変そうだ。……まあ、村の人に任せよう」
ピヌティさんが苦笑を浮かべていた。地面に激しい凸凹が、多く存在している。地竜も派手に使ってくれたな。
「ヤマトさん。光を消した方が、よろしいのでは?」
「そうでした。ありがとうございます」
サクラさんに礼を言って、光魔法を解除する。あたりに暗闇が戻った。今は深夜だけど、ほとんどの人は起きているだろう。こんな近くで地竜と戦闘していたら、怖くて眠れないはず。光が消えれば、戦闘が終わったことに気付くと思う。
村から離れて、戦うことができたら良かった。だが遠くの場所だと、作戦決行が難しい。狩場を覚えた地竜は、繰り返し襲うことが多いと聞く。場所を離して村が襲われたら意味がない。
「俺は村長に報告へ行きます。みなさんは休憩してください」
「お風呂に入って、着替えるね!」
服はボロボロで、さらに血だらけだ。ただ竜種と正面から戦って、この程度なら上々の戦果だろう。
「少しだけ、ヤマトさんも休憩をなさっては?」
「村の人も心配しているでしょう。村長に地竜討伐だけ伝えます。俺もすぐに休むつもりです」
ということで村長宅へ向かう。玄関の明かりで俺の姿が見えたのか、かなり驚いている。
「ひどいケガですよ!」
「治療はしましたので、問題ありませんよ」
目立つ場所だけでも、浄化魔法を使えば良かったな。報告のことだけしか、考えていなかった。
「とにかく、地竜の討伐は完了です。村の人に伝えてあげてください」
「本当ですか!」
俺は地竜の魔石や素材を見せた。どうやら安心したようだ。村長は地竜の素材を知っていたらしく、一目で理解してくれた。博識だな。
「詳細は明日にでも、説明しましょう」
「村の者に知らせてきます!」
慌てて村長は走っていく。素晴らしい健脚だと思う。さて俺は風雷号に戻ろう。炎雷丸は遠くに置いてあるからな。
風雷号の休憩室に入り、隣の浴場に向かう。風呂から出ても、三人の姿は見えなかった。さすがに今、晩酌は駄目だよな。報告書の準備をしておくか。しばらくは書面と格闘をしよう。
みんなの声が聞こえる。風呂から上がったようだ。
「あ、ヤマトさん! 報告、どうでした?」
「何事もなく、済ませましたよ。ただ詳細は、明日ですね」
四人が揃ったし、今後の予定を相談する。近くの村が安心できるように、急いで帝都テノプルに戻るべきだ。そこで報告を済ます。近隣の村への連絡は、騎士団や魔獣狩り協会が行うだろう。
「うーん、ゆっくりできないね」
「仕方ありませんよ、マリアさん。被害の調査も必要でしょう」
時間が経つと、調査も困難になる。雨でも降ったら、大変だ。俺たちへの依頼は地竜の討伐。すでに調査の準備が、進められているはず。速やかに引き継ぎたい。
「それに地竜が一体とは、限らないのです」
「通常、竜種は単独で行動すると聞いたが?」
「例外もあります。あと別の地竜が住みつく恐れも、あるでしょう」
なんでも竜の巣窟と呼ばれる場所があるらしい。今回は関係ないだろうけどな。最初に貰った資料では、地竜の数は一体と記載されていた。状況が変化しない内に帝都へ帰還をしたい。
「ならば帰りも夜通し、移動しますか?」
「そうしましょう。明朝に改めて村へ報告したら、そのまま出発ですね」
報告は、すぐに終わった。村長から礼をしたいので、泊まってほしいと言われてしまう。急いで戻る旨を伝えて丁重に断る。せめてもの気持ちに、秘蔵の酒を贈ると伝えられた。
だけど、この依頼は騎士団から出ているはず。つまり国の正式な依頼だ。事前に定められた報酬を除いて、受け取らない方が良さそうだな。鍛え抜かれた精神力で誘惑に耐え、気持ちだけで十分ですと断った。
そして炎雷丸へ乗り込み、帝都に向けて出発する。最初の操船は、マリアさんに頼む。俺は先に休憩を取らせてもらう。帝都に着くまでは、交代しながら三人での運航を行うつもりだ。俺は休む前に、後甲板で警戒しているサクラさんの姿を見にいった。一番の重傷だったからな。
「ヤマトさん、頑張りましたね」
「俺も成長していますよ。秘蔵の酒を断ることくらい、たやすいことです」
我ながら冷静で完璧な対応だと、自負している。
「……断るとき、声が震えていましたよ。あと、お酒の話ではありません!」
「あれ? それでは何の話ですか?」
「地竜との戦いです! 前線での回復役を、立派に務めたでしょう!」
あ、なるほど。普段は回避をメインにして、隙を見て攻撃を仕掛ける。正面から戦うのは、珍しい。
「ありがとうございます。サクラさんの傷は大丈夫ですか?」
「すぐに治療してもらいましたので、今は全く問題ありませんよ」
無事なら良かった、本当に。さて長居すると、警戒の邪魔になるな。部屋に戻るとしよう。次の操船に備えて、身体を休めたい。
二日後の早朝に、帝都テノプルへ到着した。途中で俺とサクラさんは、報告書の作成に専念させてもらっている。思ったより、時間が掛かってしまったな。操船や警戒は、ほとんどマリアさんとピヌティさんが担当してくれた。
「マリアさん。格納庫まで頼みます。停めたら、すぐに俺は魔獣狩り協会に向かうつもりです」
「は~い!」
依頼を受けるときに貰った許可証で、通行の手続きは早く終わった。これなら、昼前に報告が済みそうだ。
「私も魔獣退治組合に行くのですよね」
「間違いなく、呼び出されるでしょう。早めに行った方が、いいと思います」
もともと竜斬りの異名を持つサクラさんに、話が来るはずだったからな。組合としても、詳細が知りたいだろう。
帝都にある協会と組合は、少し距離が遠い。俺は一人で魔獣狩り協会に向かう。受付に行くと、すぐに支部長室へ通された。
「早い帰還だな。首尾は?」
「地竜を一体、討伐しました。後の調査は、お願いします」
そして作成した報告書を提出する。同時に地竜の魔石も出した。支部長は真剣な表情で、確認していく。
「間違いないようだ。依頼は完了だな。危険魔核結晶石取扱者の実務経験は免除とされるだろう。だが筆記と実技の試験は、受ける必要があるぞ」
「承知しました。筆記に受かる自信はありますよ」
高速思考術があるからな。その手の試験は問題ない。実技に関しては何とも言えないだろう。毎回、内容が変わるみたいだ。
また飛空船の使用許可証は、そのまま貰っていいとのこと。これで帝国内なら、飛空船で移動できる。観光名所にでも行ってみようか。
「ところで支援物資の運搬依頼がある。地竜の被害に遭った村への援助だ。受けてくれると、助かるのだが」
「構いませんよ。すぐに動きましょう」
みんな、村の様子を気にしていた。この依頼は率先して受けよう。
「ありがたい。物資の準備ができたら、また連絡する」
「それなら連絡が来るまで、飛空船で待機しています」
そうと決まれば、すぐに戻ろう。炎雷丸の休憩室に行くと、全員が揃っていた。サクラさんの報告も終わったようだな。運搬依頼を受けたと話す。
「いいことです!」
「もうひとがんばりだね!」
「ヤマト殿の異空間倉庫なら、積み込みの時間が大幅に減るからな。適任か」
サクラさんとマリアさんは、依頼に積極的だな。ピヌティさんも賛成している。あとは連絡があるまで休憩しよう。
――思ったより早く、準備が完了した。物資を受け取ったら、すぐに出発する。いくつかの村を回るため、時間が掛かるだろうな。闘技大会の予選試合は、完全に終了しているはず。クルスさんとパストールさんは、通過できるのか。




