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109話 対話、エリート騎士クラース

「ヤマト殿、いくつか伺いたい点がある。よろしいか」

「構いませんよ」


 少し態度が改まった。今までが失礼だとも思わないけど。不審者の対応として、理解できる範疇(はんちゅう)だからな。


「黄腕党の首謀者を捕らえたと聞いている。間違いないか」

「正確には、説得して出頭を頼んだのですよ。黄腕党の終焉に関わった、といえば間違いないと思います」


 身柄を拘束したわけではないし、捕らえたとは違うと思う。


「ここに来たのは、カイス王国の密命を受けたからでは?」

「そんな事実はありません」


 仮にあったとして、密命なら正直に言わないだろうけど。そのあたりは、相手も承知だよな。明らかに俺の表情を確認している。偽りを述べていないか、判断しているはずだ。


「そうか。目的は闘技大会と言ったな。優勝を目指しているのか?」

「いいえ。危険魔核結晶石取扱者の実務経験が、優秀な成績を修めたら免除されると聞きました。そちらが目当てです」


 時空魔石についても、言った方がいいな。情報が手に入るかもしれない。


「資格を取得したら、時空魔石を探すつもりです」

「それを、どう使う?」


 おそらく開拓の件は、広く知られていると思う。王都では支援を求めているし、特に秘匿しているわけでもない。それでも念のため、確認しておこう。


「俺が島を開拓しているのは、ご存知でしょうか。二つの村を繋ぐ転移陣を必要としています」

「たしか夢幻島という名称の流刑地だったな。時空魔石は帝都で入手できるかもしれないが、転移陣の作成は困難のはず」

「難度の高さは、挑戦しない理由になりませんよ」


 少し疑っているな。ただ嘘は言っていないから、気にする必要はないか。堂々としていよう。それと夢幻島には優秀なブレインがいるからな。転移陣の製作・設置も不可能ではないと考えている。


「そうか。大会の他に目的は?」

「空いた時間で商売ですね。王都カイスの品と、東方の衣服を運んでいます」


 こっちも上手くいくといいけど。


「それは喜ぶ者もいるだろう。だが、その言葉を鵜呑みにはできない。点検をさせてもらいたい」

「かなりの量があります。大半は異空間倉庫内ですので、甲板に出しましょう」

「よろしく頼む」


 俺は次々と商品を甲板に出していく。班長には商品の目録を渡した。両者を照らし合わせながら、不審な点が無いか確認していくのだろう。


「これで商品は全てです」

「手数を掛けた。ところでヤマト殿、点検には時間が必要となる。その間、騎士団による審査を受けていただきたい」


 まあ、仕方ないか。


「承知しました。どこで行うのですか」

「この場で実施する。クラース殿、お願いします」

「分かっている」


 降りた四人の中に、騎士がいたみたいだな。ただ見掛けでは、判断ができない。もっと騎士らしい装備を、しているものと思っていた。


「荷物検査と同時に、他の者も身分証を確認する」

「私が担当します」


 捜査班長の言葉に、女性の軍人が進み出た。サクラさん達に、口頭で質問をしている。




 そして俺の前には、クラースと呼ばれていた騎士が立つ。筋肉質なようで軍服が窮屈そうだな。剣と魔導銃を持っており、頭には軍帽を被っている。

 周囲を威圧しているみたいだ。睨んでいるように見えるな。


「初めに言っておく。俺は貴様を疑っている」

「それが仕事だと思いますので、気にしていませんよ」


 正直、疑う気持ちも理解できるしな。帝国から見たら、誰が敵で誰が味方なのか判断が難しいだろう。


「カイス王国から、我が国を乱すために来たのではないか」

「捜査班長にも伝えましたが、そんな目的は無いですよ。そもそも王国と帝国は、敵対していません。なぜ帝国を乱すのですか?」


 一部の貴族が組んで、物品の横流しをしていた。これは問題だろうけど、国同士の争いと判断するのは早計だ。やはり国家転覆を計画していた件で、慎重になっているのだと思う。


「このままだと、埒が明かないな。仕方ない、一つ情報を開示しよう。帝国の方で捕まった者を調べても、密輸入した物品が出てこなかった。裏帳簿では間違いなく横流しをしている。それでは、どこに物が消えた?」

「つまり品物を受け取った、何者かがいるのですね」


 それがカイス王国の人間ではないと、断言できないか。


「そういうことだ。自分が最重要容疑者だと、理解したな」

「まあ、疑われるでしょう」


 飛空船を所持して、異空間倉庫魔法も使える。そしてカイス王国の関係者だと、思われているからな。


「理解ができたなら、協力してもらおうか」

「もちろん取り調べには、正直に答えますよ。魔獣狩り協会の者に、手荒な尋問はしませんよね」

「当然だ。敵に回すと厄介な組織だからな。だが協会から呼び出しを受けるのは、間違いないぞ」


 それは仕方ないな。とりあえず聞かれたことには、正直に答える。話せないのは異世界関連か。そろそろソウルスキルは、公開しても構わない気がしている。自分から言いふらすことは、しないけど。


「分かりました。あ、ところで横流し品は何ですか。密輸していたなら危険な品物でしょう」

「聞くのは、こちらだが。……まあ、いい。極めて危険な魔石だ。無資格者だと、所持するのも禁止されている。違反者は重い罰を受けるな」


 時空魔石より、危険な代物みたいだ。さすがに具体名は出さないか。


「ありがとうございます」

「満足したなら、話を進めるぞ。聞きたいことは、山ほどある」


 それから荷物の点検が終わるまで、質問は続いた。黄腕党の一件から始まって、夢幻島の開拓。飛空船競技会や東方の旅など。人となりを知るために、重要なことだそうだ。各地の酒について話したら、興味深そうに聞いていたな。少し親近感が湧く。




 そして荷物の点検が終わった。話を中断し、異空間倉庫に商品を収納する。


「協力に、感謝する。捜査班の見解としては、荷物に不審な点は無かった」

「それなら良かったですよ」


 捜査班長の言葉を聞き、少しだけ安心した。しかしクラースさんの尋問は、まだ続きそうだ。もう少し雑談が混じると、話しやすいのに。


「ヤマト殿! 敵だ、右側方! おそらく再生アゲハチョウ!」

「全員、戦闘態勢を取ってください!」


 ピヌティさんが魔獣発見の報を上げた。


「待て、左側方からも来た! オオカミの群れだ!」

「了解しました!」


 このままだと、挟み撃ちか。魔力の塊、大型飛空船二隻分。これに釣られて来たのだろう。


「班長と、クラースさん。協力しませんか? 俺たちが再生アゲハチョウを相手にします。オオカミを頼みたいのですが」

「承知した」


 捜査班長が即答し、指示を飛ばしている。戦艦型飛空船の乗組員に連絡をしたのだろう。


「待て、ヤマト。俺も再生アゲハに回る。貴様は帝国の空域に来たばかり、不慣れのはずだ」

「そうですね。お願いします」


 連携に不安はあるけど、そこは何とかやってみよう。


「貴様は戦闘開始までに、何分かかる?」

「三分です」


 飛空船創造スキルの利点だな。準備に掛かる時間が極端に少ない。三分のうち、ほとんどは皆と簡単な打ち合わせをする時間である。


「上等だ。班長、すぐに戻るぞ!」

「分かっている。エリート騎士の実力、見せてもらおう」


 小型船に乗り込み、戦艦へ帰還していく。向こうが用意を終える前に、こちらも戦闘準備を進めよう。


「マリアさん。炎雷砲の発射準備を、お願いします」

「ずっと練習したもんね、任せて!」


 実際に彼女の発射精度は、どんどん向上している。安心して任せられるな。


「ピヌティさんは、後甲板に行ってください。帝国部隊に動きがあれば、連絡してほしいのです」

「承知」


 この状況では、後方に一人は配置したい。オオカミの魔獣が、こちらに来る恐れもあるしな。


「サクラさんは前甲板で、警戒を頼みます」

「分かりました」


 再生アゲハチョウが炎雷丸に来た際に、対応してもらう。サクラさんなら秘刀術により、遠距離攻撃も可能だからな。

 これで基本方針は問題ないだろう。


「それでは戦闘準備、始めましょう」


 言葉と同時に、黒雲を生成。転移で竜人船トライバスターに乗り込んだ。再度、黒雲転移を発動。前甲板の上方に出た。よし、いつでも戦闘が開始できる。

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