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108話 サイクロンマグロ、そして臨検部隊

 早朝、出発の準備は整った。まだ日が昇る前である。深夜と言った方が正確かもしれない。時間が時間のため、見送りは断った。二日前には宴会を開いてもらい、昨夜は激励の言葉を頂いている。十分すぎるほど、応援してもらった。


「それでは封印の鎖を斬ります!」


 竜人船トライバスターを発進させる。カイス転移扉の目前で、停止した。魔力を込め静かに集中する。

 右手は竜炎牙刀の柄を、左手は竜水鱗鞘を握らせる。全体に魔力を送り、標的を見据えた。


「一閃!」


 刀を鞘から解き放つ。閃く斬撃。魔力が迸り、鎖を切り裂いた。これが強い力を持つ魔獣にも、命中できるよう頑張りたい。大型飛空船に戻ると、竜人船を格納庫に置く。甲板に行ったら、サクラさんが出迎えてくれた。


「お見事でした」

「ありがとうございます、なんとか封印の鎖を斬れましたよ」


 これで転移扉が通れる。封印の鎖が復活する前に、進んでしまおう。目指す地はナミソゾロ帝国の首都テノプルである。


「闘技大会の開催は、来月でしたよね」

「例年通りなら、来月の上旬でしょう。ただ複座式の大会が開催されるのならば、日程が変わるかもしれません」


 これは現地に行ってみないと分からない。もしくは途中の町で、情報収集か。


「炎雷丸の速度なら、三週間ほどで着く想定だったな」

「そうですよ」


 カイス転移扉を通過した後、ピヌティさんが到着時間を確認してきた。予想ではあるけど過去の情報を基にして、十分に試算したものだ。信頼できる数字だと自負している。




 そして十日が経過した。今までは、順調に進んでいる。ナミソゾロ帝国の空域が近い。


「魔獣を発見! おそらくサイクロンマグロだ!」

「資料によると、風魔法を使うらしいです! 注意してください!」


 俺は竜人船トライバスターに乗り、格納庫から飛び出す。道中の戦闘は竜人船を主に使う。可能な限り、戦闘経験を積みたい。


「結界外に出ました! 前甲板に少数の魔獣を通します!」

「了解!」


 ピヌティさんは左手に直刀を、右手に五行クナイを持っている。火の属性だな。サクラさんは普段と変わらず、刀を構えている。初見の敵でも、おかしな気負いは無さそうだ。


 俺は前甲板の戦闘を二人に任せ、後方に向かった。サイクロンマグロの一部が、大回りしていることに気付いたからだ。


「ヤマト君、炎雷丸の援護射撃は必要!?」

「いえ、様子見してください! 相手の動きが見たいです!」


 それと念のため、防御結界に魔力を多く使いたいしな。


「炎雷丸から離れます! マリアさん、操船は頼みました!」

「任せてよ!」


 さあ、打って出よう。俺は後甲板に近付く、サイクロンマグロに向かった。大きさは三メートルを超えているだろう。唐突に相手の魔力が強くなる。この距離で、攻撃魔法か! それも群れ全体で、同時に使用だ。その数、十を余裕で超えているだろう。


「黒雲、生成!」


 緊急脱出用に、黒雲転移の準備をしておく。来た! 資料の通り風魔法である。思ったより、威力が強い。大気と魔力が乱れ、風魔法での会話が困難になったな。ここからは魔導通信機が頼りだ。マリアさんのいる操舵室とは、連絡が取れる。


「あ! 雲が飛ばされたよ!」

「想像以上の風魔法です! ご注意を!」


 なんとか人型飛空船は無事だったけど、黒雲が散らされた。転移は難しそうだ。ならば反撃しよう。


「炎雷、発動!」


 竜炎牙刀に雷の力を付与する。そのまま一直線に、魔獣の群れへ向かう。途中で二度目の風魔法が発動された。間違いなく直撃コースだな。


「風を消し飛ばせ! 炎雷斬!」


 炎と雷の力を宿した斬撃が、荒れ狂う風と衝突した。そして風が、止まる。その隙を逃さず、サイクロンマグロに接近。急加速で、一気に距離を詰めた。

 まず目前の敵を斬る。それから手近な相手に向けて、攻撃魔法の狙いを定めた。


「炎の槍、十七連!」


 十七条の炎槍が魔獣を襲う。命中したのは、半分ほどだな。俺の精度だと十連を超えたら、かなり外れやすくなる。


「後ろから来るよ!」

「緊急回避!」


 魔導通信機から、マリアさんの声が響いた。同時に後方を確認し、魔獣の突進を避ける。さらに通り過ぎる瞬間を狙い、一刀両断にした。高速思考術が無ければ、不可能だったな。最大限に使用すると、時の流れが遅くなったような感覚になる。


「マリアさん、魔導映写機の調子はどうですか? この付近は、かなり魔力が乱れていますけど」

「大丈夫、ちゃんと映っているよ!」


 それなら問題ない。俺は周囲の様子を確かめる。魔獣は、かなり数を減らした。この調子でサイクロンマグロを倒していこう。斬撃と魔法を組み合わせて、魔獣を討伐していく。


「残り三匹――いや、魔獣だから三体か!」

「どっちでもいいよ! 油断しないでね!」


 そのとき、目前の二体が左右に分かれた。向かって右に行き、切り裂く。直後、竜人船の背中に衝撃を受けた。


「しまった!」


 この間合いだと、刀が当たらない。半身を捻りつつ、左腕でサイクロンマグロを振り払う。あ、倒した! 十分な魔力を込めたからだな。残りは一体。頭上か!

 竜炎牙刀を強く握り、思い切り突き上げる。サイクロンマグロを串刺しにした。魔獣の身体が消滅し、素材を落とす。すかさず異空間倉庫に収納。


「帰還します。前甲板の様子は、どうでしょう?」

「二人とも無事。優勢だよ」


 だったら一安心だな。だが戦闘は終わっていない。急いで戻る。炎雷丸に着くと、甲板上にいた最後の魔獣が倒されるところだった。ちょっと遅かったか。


「お疲れ様でした。俺は竜人船を格納庫に、入れてしまいますね」

「ちょっと待った。甲板の床を開くと、素材が落ちる。私とサクラが回収しよう」

「すぐに終わらせますので、少し待ってくださいね」


 言われた通りに、少し待つ。素材を集めたところで、格納庫の入り口を開いた。竜人船の動作を停止させ、操縦席から降りる。これで一息つける。俺は甲板に戻り二人の様子を眺めた。声を掛けようと思ったとき、ピヌティさんの様子が変わる。


「遠方に戦艦型飛空船と、人型飛空船! あの紋章はナミソゾロ帝国の部隊だな」

「ヤマトさん。あの船、味方だと思いますか?」

「単純に考えると、帝国の巡回部隊ですよね。善良な市民から見たら、味方と言えなくもありませんよ」


 でも面倒事には、なりそうだ。一難去ってまた一難かな。


「あのヤマト君、船はどうするの? 止めた方がいいかな?」

「進路も速度も変えないでください。現状のまま、まっすぐに行きましょう」

「わかった!」




 だんだんと船影が近付いてくる。すでに俺の目でも、はっきり確認できるほど。このまま何事もなく、通り過ぎてくれないかな。


「こちらナミソゾロ帝国臨検部隊。大型飛空船に告ぐ。至急、停止されたし」


 まあ、そうなるか。マリアさんに伝えて、炎雷丸を止めてもらおう。周囲には、人型飛空船が待機している。抵抗は危険だな。戦艦から小型船が出てきた。何人か乗っている。それも武装して。


「今から甲板に向かう。結界は最小限に」


 ここは大人しく、指示に従っておこう。ゆっくりと小型船が前甲板に着陸する。乗っているのは、全員で五人のようだ。一人だけ船に残って、四人が降りてくる。服に勲章や階級章が付いている。一番、豪華なのが指揮官だな。


「臨検部隊の捜査班長だ。責任者は誰か」

「私です」


 俺は捜査班長の前に出た。


「身分証を検めさせてもらう。どこに向かっている? それと航行の目的は?」

「どうぞ、ご確認を。私たちは人型飛空船の闘技大会に出場するため、帝国の首都テノプルを目指しています」


 班員の一人が近付いたので、身分証を渡す。内容を見ると、わずかに顔色を変えた気がする。


「班長、カイス王家の関係者です。名前はヤマト、噂に聞く容姿と一致します」

「……それは面倒なことに、なりそうだな」


 小声で言っているけど、五感を強化中だから完全に聞き取れてしまう。お互い、面倒事と認識するとは。それでも無視するわけには、いかないのだろう。向こうも仕事だ。


 さて臨検の本番は、ここからのはず。俺も細心の注意を払い、応対しよう。

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