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104話 商店街、二人で挨拶回り

 最初に訪れたのは、魔獣狩り協会。受付に行って、素材の納品に来たと告げる。別室に案内されると、すでに担当者が部屋にいた。落ち着いた雰囲気をしており、執事みたいな人だ。俺は異空間倉庫から、素材を取り出した。あまりの量に、驚いているな。確認するだけでも一苦労だろう。


「どれくらい時間が掛かりますか?」

「おそらく一日や二日では、終わりませんね。三日後の朝、また来てください」


 まあ、そうだよな。一ヶ月を超える期間、未開空域にいた。夢幻島で貰った素材もある。量を考えると、早いくらいだ。作業を頼んで、退出する。

 次は魔獣退治組合だ。ほぼ同じ量の素材を見せる。こちらでは、三日後の昼くらいまで掛かるらしい。時間は問題ない。よろしくお願いしますと声を掛けてから、その場を離れた。組合の外に出る。


「次は商品の販売です。マリアさん、先導を頼みます」

「任せて!」


 自信満々に、彼女が歩いていく。三人で後を追った。着いたのは、中規模ほどの店舗だ。入口には花が咲いており、柔らかな印象を受ける。中に入ると、ご老人が椅子に座っている姿を見た。店主だろうか。


「お爺ちゃん! 久しぶり!」

「おや? 最近、姿を見なかったね。元気にしていたかな」

「あたしは元気だよ! 前に東方へ行くと、話したでしょ! いろいろ買って!」


 ずいぶんと親し気に話している。


「それなら品物を見せてくれるかい? お兄さんが出してくれるのかな」

「そうです。ただ結構な量なので、倉庫に出しますよ」


 この人、初対面だったはず。俺が異空間倉庫を使えると、知っているのか。商人

たちのネットワークかもしれない。


「今は丁稚が、使いに出ている。先に隣へ行って、出しておいてくれ」

「分かりました」


 言われた通り、隣の部屋に行く。倉庫として、利用しているみたいだな。かなり広い部屋だ。鑑定しやすいよう、間隔に注意しながら荷物を置いていく。この店で売る品物は、マリアさんと相談してある。迷わずに品物を積んでいった。ちょうど作業が終わるころ、お爺さんが来た。


「おやおや。また、たくさんあるのう。老体に鞭打つとするか」

「ご迷惑をお掛けします」

「大丈夫だよ、ヤマト君! お爺ちゃんなら、パパっと終わらせてくれるよ!」


 それだけ信頼できるということか。鑑定に掛かる時間を聞いて、二日後に取引の約束をした。隣に戻ると、少年が店番をしている。一声かけてから店の外に出た。

 さて商売は終わりではない。マリアさんの先導で、いくつかの店を巡る。どこも商談が終わるまで、一日から二日は掛かるみたいだ。商売は二日後、納品は三日後で予定を組み立てる。これで明日はフリーだな。顔見知りに、挨拶へ行こうか。




 日が沈み、日が昇る。今日、俺はサクラさんと町へ行く。だいたい、知り合いが一緒だからな。ピヌティさんとマリアさんは、それぞれ異なる知人がいるらしい。二人とも別々に行動すると聞いた。どちらも今日は知人宅に泊まるみたいだ。


「サクラさん、準備はできましたか?」

「はい! いつでも行けますよ!」


 まず行くのは雑貨店だ。愛想は無いが、気の優しい店主がいる店である。まずは土産を渡す。東方の菓子を用意した。賞味期限の都合上、カイス王国で並びにくい食品だ。転移門を利用することで、ショートカットできる点を活かしている。


「すまないな、嬢ちゃん。」

「店主さんには、お世話になっていますから」


 あ、黄色の布が売っている。黄腕党の影響で、以前は無かったものだな。多少は混乱が収まったのだろうか。それは置いといて、日用雑貨を買っておこう。在庫が少ない物があった。


「ヤマトさん。休憩室に飾る置物を買いませんか? お客様が来たとき、楽しんでもらえると思います」

「いいですね。一緒に探しましょう」


 互いに意見を出し合う。話が部屋全体のインテリアデザインにまで及んだけど、ここで買うのは少し洒落た置物くらいかな。


「あ! フクロウですよ!」

「縁起も良いし、買っていきますか」


 生活雑貨と一緒に、フクロウの置物を購入する。船内が揺れても問題ないよう、固定できるものにした。


「無事に帰ってきた祝いだ。兄ちゃん、少し負けておく。嬢ちゃんと仲良くな」

「ありがとうございます」


 軽く会話を交わし、店を出た。次に行くのは、老夫婦が経営する青果店だ。元気だろうか。記憶に残る道を進み、店内に入った。


「まあ! サクラちゃん、お帰りなさい」

「ただいま戻りました。お婆さん、お爺さん」


 そして俺は土産を渡した。菓子と野菜の種だ。家庭菜園が趣味だと聞き、これを選んだ。変わった野菜を育てるのが好きらしい。


「ありがとう、二人とも。お爺さんと一緒に、大事に育てますね」

「ヤマトさん。野菜と果物を買っていきませんか」

「いいですね。青生姜が残り少ないですし」


 つい食べ過ぎてしまうのだよな。せっかく来たのだ、他にも購入しておこうか。しばらく買い物を続け、青果店を出た。そして次の目的地は喫茶店だ。落ち着いた雰囲気の店だったはず。


 ここの土産は菓子と茶葉だ。それも緑茶の葉である。店主は不在のときが多く、俺は会ったことがない。サクラさんの話だと、陽気で口達者な若い女性らしい。


「土産は緑茶で、いいのですよね?」

「間違いありません。出発の前に、店長から頼まれました」


 そんな理由があったのか。メニューに緑茶系を増やすための、研究用の可能性も考えられるな。まあ、とりあえず中に入るか。そして案の定、店主は不在だった。

 顔見知りの接客従業員に土産を渡す。店員の分もあると伝えたら、とても喜んでくれた。


「サクラさん、軽く食べていきませんか?」

「ぜひ、そうしましょう。浮島二人セットは、どうですか」

「それでは、注文しますね」


 この店で食べるのも、ずいぶんと久しぶりだ。注文を済ませ、しばし待つ。届くまでの間に、のんびりと会話を楽しむ。


「よく見たら、新商品もありますね。店長がいたら、詳しい話を聞けたのですが」


 あ、本当だ。見覚えのない菓子名が記載されている。ここの店長は話し好きで、菓子のことを語り出すと止まらないらしい。紅茶を満喫して、次の場所に向かう。まだ他にも土産を渡す人がいるからな。


 ――知人を訪ね歩き、おおむね全ての人に土産を渡した。折悪しく不在で、会えなかった人がいるのは残念だ。すでに時刻は昼過ぎ。少し腹が減ってきた。


「昼食にしましょうか。菓子と紅茶だけでは、足りないですよね」

「どこに行きますか?」


 この辺だと……あ、良い店があった。サクラさんから教えてもらった飲食店だ。そして初めて二人で食事した店でもある。彼女を誘い、店内に入った。個室を指定したら、店員の案内で席に着く。ここで頼んだ料理は、しっかり覚えている。


「俺はレッサーヤクルスの塩焼き定食にします」


 後でヘビ型の魔獣と知ったときは、ちょっと驚いたな。まあ、美味いからよし。サクラさんは、笹食い狼の肉野菜炒め定食を頼むようだ。

 料理が届き、久しぶりの味を楽しむ。なんか懐かしい気分になってきたな。二人で思い出話に花を咲かせる。それから彼女は、追加でデザートを頼んだ。


「このバニラアイス、食べてみたかったのですよ。ヤマトさんも、ご一緒にどうでしょうか」


 二人分の(さじ)が付いてきたし、少し分けてもらおうか。


「美味いですね」

「ええ! 評判になるのも頷けます」


 食事を終え、支払いを済ませた。普段の食費は、チームの資金から出している。そろそろ炎雷丸に戻ろうか。




 食後の運動がてら、近接戦の訓練を行う。その後、居合術を見てもらった。それなりに、形にはなっているらしい。夜になるまで、訓練を続けた。夕食の準備は、サクラさんに頼んである。ずいぶんと、張り切っていたと思う。


 そして夕食の時間が来た。思ったよりも豪勢な料理を、堪能させてもらう。二人で片付けを終わらせた。このあとは訓練の疲れが残らないよう、マッサージをしてくれるみたいだ。疲労が回復するといいな。

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