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103話 初登録、竜人船

 歓迎会は無事に終わった。まあ、多分、無事に終わったと思う。今日の予定は、まずバイオレット様と会う。なにやら話があるみたいだ。闘技大会の件だろうか。ささっと準備を済ませたら、移動しよう。


「私も一緒に行きます」

「分かりました」


 サクラさんも同行する。ちなみにピヌティさんは、五行クナイを使った訓練だ。マリアさんは飛空船操縦の勉強中である。とりあえず炎雷丸から降りよう。


「この拠点も、ずいぶん変わったようですね」

「多くの家が並ぶと、雰囲気も変化すると思います」


 二人で話をしながら、バイオレット様の家を目指した。あ、表札が出ているな。バイオレット様の名前が書かれていた。これも新しく作ったのか。扉を軽く叩き、中へ入る許可をもらう。


「お待ちしていましたよ。サクラも来たのですね」

「お邪魔します、バイオレット様」


 驚くほど質素な部屋だ。淹れてもらった紅茶を、一口いただく。ほのかな甘味がちょうどいい。


「さてナミソゾロ帝国について、お話があります」

「闘技大会のことでしょうか」


 まあ、予想通りだな。


「大会に騎士団が関わっていると聞きましたね。実はカイス王国の貴族にも関わりがあります」

「あれ? 同盟国では無いのに、関係しているのですか」


 詳しく話を聞く。一部の貴族たちが、横領した物品を外国に流していたらしい。要するに密輸か。その関係者が、ナミソゾロ帝国にいる。


「おそらく貴方の名前は、知られているでしょう。逆恨みしている人間も、いるかもしれません」

「十分に気を付けますよ」


 話をしていると、気分が暗くなってきたな。少し話題を変えよう。


「ところで異世界転移の件ですが、さすがに進展はありませんよね?」

「はい。以前の状態で、足止めされています」


 そうだと思った。目指す座標は分かったけど、伝える手段が無かったのだよな。簡単に解決できることではない。


「今は移住と開拓のことを第一に考えましょう。異世界の話は、優先順位を下げてください」

「分かりました。そうしましょう」


 かなり多くの人に影響があるからな。移住を重視で問題ないだろう。


「ところで、ヤマト。魔獣の素材が溜まっています。使ってください」

「島の皆が、結界の外で入手したものですね。助かります」


 ありがたく頂こう。素材の一部は飛空船強化に使わせてもらう。残りは納品して金に換え、島に還元するつもりだ。


「結界内の迷宮で、手に入れた分も含まれているのですよ」

「そういえば、ありましたね」


 安全地帯の中だと、難度の低い迷宮もあったはずだ。移住者の訓練にも、使えるかもしれないな。通常の作業に慣れてから、考えてもらうか。


「また私たちも行きましょうか? 新しい刀にも、慣れたいです」

「いい考えだと思います」


 せっかく存在するのだ。活用しないと。生命に危険が無いよう、注意を払いつつ挑戦したい。それからは雑談を交えながら、お互いに情報を交換する。


 しばらく経ち、バイオレット様は作業に向かった。俺とサクラさんは、少し村を見て回る。


「あの、ヤマトさん。良かったのですか、異世界転移を後回しにして」

「構いませんよ」


 元の世界に戻ることは、最優先ではないと考える。一番の理由はサクラさんだ。彼女と共に生きる、今の俺にとって何よりも優先したいことだ。


 ゆっくりと散策を続けてから、炎雷丸に戻った。これからは訓練の時間である。竜人船の操縦技術を高めておきたい。日が沈むまで、訓練に励んだ。




 明くる日、カイス王国に向けて出発する。大型飛空船で行くのは、初めてだな。竜人船と合わせて、発着場に登録したい。


 数日後、王都カイスに到着する。魔獣と遭遇したけど、未開空域ほど危険な敵は見なかった。だけど油断は禁物だ。蟻の一穴天下の破れという言葉もあるからな。


「ヤマト殿、港に行かないのか?」

「すぐ入ります」


 考え事は後にしよう。港に入り、手続きを終わらせなければ。東方からの荷物もある。時間が掛かりそうだな。――思ったよりは、早く終わった。そして飛空船の発着場に向かう。仮停留所に炎雷丸を置き、受付に行った。


「大型飛空船用の格納庫を、お借りできますか?」

「ちょうど空きがあるようです。準備いたしますので、少々お待ちください」


 しばらく待つと、見覚えのある人がやってきた。


「整備長! お久しぶりです」

「久方ぶりですな、ヤマト様! ついに大型飛空船を入手されたとか。格納庫まで案内しましょう!」


 話を聞きながら、整備長の後に続く。特にマリアさんが、興味深そうに聞いていたな。


「おお! あれがヤマト様の船ですね! なんと素晴らしい!」

「ありがとうございます。よければ格納庫まで、乗ってください」

「それは楽しみですな!」


 マリアさんに操舵室へ行ってもらい、俺は整備長と一緒に甲板へ出た。格納庫に入れるのは、彼女に任せるつもりだ。

 整備長の誘導をピヌティさんが聞き、マリアさんへ伝える。思いの外、格納庫は近くにあったな。かなりの広さだ。


「着きました! どうぞ、入ってください!」

「立派な作りですね」


 その分、利用料も掛かる。チームの活動資金から、出すつもりだ。カナトビ島にあった財宝の一部を頂いたので、わりと余裕で払えるのは助かる。あと商売の利益もあるしな。ここで東方の品物を売却すれば、さらに余裕ができるはず。


「それでは登録しましょう」

「あ、すみません。他に人型飛空船があります」

「ぜひ、拝見させてください!」


 甲板の床を開いて、竜人船トライバスターを見せる。近くで見たいと言われた。一緒に格納庫へ降りる。船を停める場所も格納庫だから、ややこしいな。炎雷丸の中にあるのは、船内格納庫とでも呼ぼうか。


「金色に輝く装甲、赤く染まった角、青色の光を放つ鞘。実に見事ですな」

「専門家に行ってもらえると、自信が付きますよ」


 それからナミソゾロ帝国に行くことを伝えた。整備長ならば、闘技大会の情報を知っているはず。


「闘技大会のことを、教えてもらえませんか?」

「最新の情報は難しいですが、過去の話でよければ話しましょう」


 どうやら新しい情報は、届きにくいらしい。原因は横領に関わっていた王国貴族の件。いたずらに不安が広がらないように、情報が制限されているみたいだ。そのあおりを受けて、人の出入りも減少した。結果として、多くの情報が更新されないままとなっている。


 それでも過去の大会については、詳しく教えてもらった。いつもお世話になっております。整備長の情報は、本当にありがたい。一通りの話を聞いた後、飛空船の登録が済んでいないことに気付く。


「すみません。忘れないうちに、登録をお願いします」

「そうでしたな! うっかり話し込んでしまいました!」


 そして地道に登録の手続きを行った。竜人船トライバスターが、公の組織に登録されるのは初めてだな。船内格納庫に、書類をめくる音が響く。

 ――よし、無事に登録が完了した。


「ご対応、ありがとうございました」

「大変、お手数をお掛けしましたな。闘技大会でのご活躍をお祈り申し上げます」




 さてと、これからの予定を決めるか。すでに整備長は去っている。格納庫には、俺たち四人だけだ。


「まずは魔獣狩り協会と、魔獣退治組合に行きます」

「素材の納品だな」


 ピヌティさんの言葉に頷いた。納品は両方の組織で、半分に分けて行う。


「それから商売だね!」

「そちらはマリアさん主導で、お願いします」


 商売に関しては、だいぶ頼りにさせてもらっている。きっと今回も大きな利益が出るはずだ。東方の品物を、二週間ほどで運べたのは大きい。通常なら、二ヶ月は掛かる距離だからな。


「お世話になっている人たちへ、挨拶に伺いましょう」

「もちろん、それも行います」


 素材も商品も、かなりの量がある。待ち時間が、発生するはず。その間に、いろいろと回ろう。これで方針は決定したな。さあ、出発だ。

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