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78:融合者



(モラルスのヤツ舐めやがって……俺様は他のメンバーと違ってリアルでは武闘派だったのを忘れてんじゃねーのか? バトルセンスが足りないだのなんだのと……チッ)


 イラつき、激しく憤るドルカス。しかし、その内心とは裏腹にドルカスの行動は慎重だった。ケリスが死に、ナンジュースが望濫法典を抜けた結果、望濫法典はもう終わりと判断した者は多く、幹部以外の人材不足も深刻となっていた。


 モラルスも裏切りは許さないと口では言うものの、実際には望濫法典を抜けた者を制裁することはなかった。そうなればメンバーの流出は止まらない。モラルスは甘く、制裁を実行するためのリソースすらないのだと思われた。


 そういった事情に危機感を感じているドルカスは、慢心することなく、自分のやり方で守護連合のシャヒルを潰す策略を練る。その策略はシンプルであり大胆でもあった。


「あ、ロイスの姉御! さっきジェイスさんが呼んでましたよ!」


 ドルカスは死克メンバーの一人と成り代わっていた。ドルカスは望濫法典がゴーレムマンの秘術を使って生み出した人間をダグルム化させる薬物「ダグルシス」を死克メンバーの一人に使用し、ダグルム化させた死克メンバーの記憶を自身に移植、そして高位の変身魔法で姿を偽装した。


 こうして手に入れた記憶を頼りにドルカスは死克へと潜り込み、死克のアジトを我が物顔で、自然に歩き回る。


「ジェイスさん、サイシューのやつ……どうなっちまったんですか? 鉄と肉が混ざっちまって……悪霊の影響とか、その……大丈夫なんすか?」


「それはその……まだ確信が持てていないので、あまり言いたくなかったのですが……まぁ、フログさんは古参でサイシューさんとも仲が良かったですし……言わない訳にもいきませんね……」


 ドルカスのターゲットはシャヒルだったが、自身の策略を滅茶苦茶にした聖女のことを許していないし、対策もするべきだと考えていた。


 聖女に倒されたダグルム憑きがどうなるのか、それを知りたかった。


「どうやら……サイシューさんにはダグルムの力のみが残っているみたいなんですよ。ロイスの鉄化の力がダグルムの意思、魂の核から狙ったからなのか、ダグルムの邪悪な意思が先に消えて、ダグルムの神と相反する力は使用できるみたいなんです……」


「え……? そりゃ、なんていうか……よかった、のか? サイシューはトーシュの敵を討ちたいだろうし好都合ではあるよな」


「うーん、どうなんでしょう? 確かにダグルムの意思は消えている……けれど、こんなことは前例がないので、どうなるかわかったものではありません。多分サイシューを生かしたシャヒルさんもこんなことは予想外でしょうしね……ダグルム由来の力を使えば、サイシューさんの精神に悪影響を与える可能性だってあるかも……」


「そっかぁ、俺が思うほど世の中単純じゃねぇかぁ……でも、サイシューはとりあえず無事なんだな。よかったぜ……妹のトーシュが死んじまったあいつにはよかったなんて口が裂けても言えねーけどさ……ありがとうジェイスさん、教えてくれてよ」


「いえいえ、サイシューさんは死克を裏切りましたが、自分も本音で言えば、彼のために何かしたかったんです。自分がもっと、もっと早く、彼の置かれている状況を突き止められていれば……はは、こんな弱音を吐いている場合じゃないですね。仕事に戻ります」


 ジェイスがそう言ってアジトの彼の部屋に戻っていくのを確認したドルカスは、表情をガラリと変える、不安そうな顔から、邪悪なニヤケ面に。


(こりゃぁ良いこと聞けたぜ……聖女の鉄化の力は、おそらくヤツが狙う対象、場所を中心に広がる……サイシューではなく、取り憑いたダグルム自体を嫌い、狙った結果と考えれば納得がいく。だとすれば、その特性を利用することだってできそうだぜ)


 ドルカスは本来の脳筋的な見た目からは考えられない程に深く、冷静に思考していた。これはリアルでのドルカスではなく、プレイヤーキャラのドルカス由来の能力だった。融合事変によってプレイヤーがキャラの人格を乗っ取ったわけだが、それはキャラクターの能力を引き継いでいるということでもある。


 リアルのドルカスは頭を使うのが苦手、というより頭を使うことが好きではなかったため、融合事変が起きても頭を使うことはなかった。


 しかし、ケリスが死に、ナンジュースが望濫法典を抜け、モラルスもドルカスを放置した結果、ドルカスは頭を使わざるをえない状況となり、その明晰さを初めて活用することになった。


(変な感じだぜ……頭を使うのも悪くねぇと思えるなんてな……人格を乗っ取ったから、俺たちにはなんの変化もないなんて大嘘だぜ……選択肢が、乗っ取った人間一人分増えてやがる……俺様がフログから移植した記憶だってそうだ……俺様はフログの能力すらも手に入れ、その分の選択肢を増やしている)



 ──ドゴンッ!!



 突然大きな音が響き渡り、ドルカスは驚き跳ねる。後ろめたいことがあるが故に、少しばかり過剰な反応となってしまう。冷や汗をかき、周囲の状態を確認する。



「さ、サイシュー!? 突然どうしたってんだ! お前! 反省してねぇのか!? 独房をぶっ壊しやがって!!」


「悪ぃ……ロイス……今はそれどころじゃない。分かんだよ……クセェ臭いが、このアジトからすんのが! 忌々しいダグルムの臭い……ぶっ殺す!! 殺す、殺す殺す殺す!!」


「──っ!?」


 荒々しく、地を踏み抜くように、サイシューはドルカスのいる部屋までやってきた。サイシューは自身の肩に掴まるロイスを引きずるようにして、歩き続ける。


 鉄とゴムが混ざったような独特な黒い肌の、異形の人型が、迷うことなく、真っ直ぐにフログに化けたドルカスを見据える。


「テメェだなァ!! 死ねェ!! おれは騙せねぇぞ!! ブッ殺す!!」


「おい! サイシュー! 正気にもどれ! そいつはフログだ──」


 ──バシャアアアアア!!


 サイシューの黒い鉄の腕は、緑とオレンジの光を纏って、光の刃を現出する。光の刃はドルカスを切り裂き、魔法を破壊した──ドルカスの高位変身魔法を。


「──ッ!?」


「なっ……こいつは、まさか……ヒーローから貰った資料にあった、望濫法典の幹部じゃ……そうか、サイシューイカれ扱いして悪かった。お前が正しかったみたいだぜッ!!」


 ドルカスが高い知性を手に入れようとも、その知性すら予測できない事が起これば、彼の思い描いた計画は、あっさりと、理不尽に崩壊する。


 それは、邪悪への復讐を誓った、殺意に満たされし者。かつて兄であった者、彼が喜びを感じる時、それは敵を殺す時以外に存在しない。


 敵を見つけたサイシューは怒りながら、笑った。


「見つけた……ぶっ殺せるヤツをよォッ!! クク、アッハハハハ!!」


 狂気、サイシューのそれにドルカスは圧倒される。ドルカスは思わず後退りする。ドルカスを切り裂いた、サイシューの一撃に、大したダメージはなかったにも関わらず。ドルカスは本能的に、サイシューの危険さを感じ取った。


(っく!! 落ち着け! 殺らねぇと、殺られるぞ!!)


 ドルカスはたった一人、死克のアジトの中で、戦うことを余儀なくされる。




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