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66:破壊崩壊逃走



「──ケリス君が死んだ? どこで? 誰が?」


 ラシア帝国、法の都市、アザマイルアにある望濫法典の拠点で、モラルスはケリス死亡の報告を受ける。


「場所はベイカル、ケリスを殺したのは守護連合のリーダー、シャヒルって話です。正直、信じられない話っすけど……どうも事実らしいんで」


 ケリス死亡の報告をモラルスにしたのはナンジュースだったが、そのナンジュースもその事実が信じられないという様子で、この事実を知った望濫法典のメンバーは皆似たような反応だった。


「ベイカルで死んだか。なら問題ないね」


 しかし、モラルスだけは違った。彼は大幹部の一人であるケリスが死んでも動じていなかった。その様子に、ナンジュースは訝しむ。


「問題ないって、モラルスさん!? どういうことっすか!」


「やれやれ、君たちはまだ自分たちが人間だと思ってるんだね? もう違うってことを自覚しようよ。世界が違えば常識も違う、さらに言えば、この世界の中でも、僕たちは特別な存在で、常識の外にあるんだから。それにしても、変な話だね……よりによって、守護連合のリーダー、シャヒルがケリスを倒すなんてね。報告ではレベル90台の雑魚だって聞いてたけど……だとするなら、彼も普通ではないのかもね……結局の所、結果が全てさ」


「……その、あんまし言いたくはなかったんすけど……関係あるんじゃないですか?」


 ナンジュースが戦々恐々とした面持ちで、モラルスに指摘する。ナンジュースは、モラルスのタブーに触れることだと理解していたが、聞かざるを得なかった。


「関係? 何と?」


「あ、アルーインさんと関係が、あるかもって……シャヒルはどうも、アルーインさんに才能を見出されて守護連合のリーダーを任されたって話ですけど……あの人も特別な人だ……もしかしたら、アルーインさんが、シャヒルに何らかの力を与えたのかもって……」


「おい、ナンジュース。彼女を巻き込むことはタブー中のタブーだって言っただろう? 守れないのなら君から力を奪ってもいいんだよ?」


 モラルスはナンジュースの襟元を掴み、脅すように語りかける。


「僕は約束したんだ。彼女が18になるまでは一切関わらない、でも18になったらどうあっても、僕のモノになってもらうってさァ、ふふ、あ、はははは! だから、駄目だろ……? 僕の、僕達のハッピーエンドの邪魔をしちゃあさ!!」


 モラルスが拳を振り上げ、ナンジュースを殴ろうとする。モラルスの腕が黒い煙のようなものに変質し、ゴムのような人外の腕に置き換わる。金属のような爪は輝いて、その金属鏡面にナンジュースの顔を映し出した。爪の鋭い先端がナンジュースの瞳に向かって、降りるその時、ナンジュースは恐怖の中で、口を開く。


「──! 邪魔してるのはっ! シャヒルかもしれない!! いいんですか!?」


 ナンジュースは叫んだ。その瞬間にピタリとモラルスの腕は止まり、ナンジュースの冷や汗が屋敷の絨毯を濡らした。


「どういうことかな?」


「望濫法典はアルーインさんに関わらない。そういう約束だったから、アルーインさんに関わる報告は、少なくともプライベートに関わることではしない。それがルールでしたけど……だから、だからこそ、モラルスさんまで伝わらなかった情報が……ある」


「はぁ? で、その情報って何?」


「アルーインさんは……守護連合のリーダー、シャヒルを……単なる仕事仲間だとは思っていない。アルーインさんは……シャヒルに惚れている」


「え? はぁ……? 何言ってんの? 彼女が、アルカが、人を好きになるわけがないだろ? 彼女を普通の人間の、バカ女共と一緒にするな!!」


 怒りに震えながらも、動揺し、目を泳がせるモラルス。脳内を整理するのに手一杯で、自身を怒らせたナンジュースのことを忘れた。


「で、でも……状況を見たらそうとしか……毎日のように、夜にアルーインさんはシャヒルの宿に訪ねてきて……帰り際は楽しそうに笑っていたと……報告が……俺はずっと知ってたけど、モラルスさんに報告したら、殺されるかもって思って……は、ははは、でもどう考えたってシャヒルは無関係じゃないんだ。夜に宿で男女が二人きり、それが毎日、どう考えたって……あんた寝取られてるよ!」


「寝取られてない!! そもそも彼女は僕のモノになってない! それに、あの子は、人として欠落しているんだ……人嫌いが人を愛せるものか、仮に彼女がシャヒルを愛していたとしても、あの子を受け入れられるわけがない!! 機械天使は、人の手には余る。あの子は誰のモノにもなれないし、なれないんだ。だから、僕が捕まえて、閉じ込める必要があるんだ! 彼女の人生、未来、全部僕が決めるんだ!!」


 モラルスは怒り、異形のモノと化した黒い腕を振り回す。屋敷の壁は薄皮でも剥がされるかのように、なんの抵抗もなく崩れ去った。ナンジュースは運良く腕に当たらなかったため、その生命をとりとめた。


「でも、そうだね……うんうん。彼女がシャヒルを好きになるのはありえないけど、彼女がシャヒルに何らかの力を与えたというのはありえる話かもね。実際、彼女もカンスト者だし、何らかの重要な役割を世界から負わされている可能性もある。あーでも、クソムカつくなシャヒルとかいうヤツ……でも、クソ……彼女と関わってるんじゃ、中々対応が難しいな。僕が邪魔をしてしまったら、約束を破ってしまうし、それは嫌だ……」


「あ、あの、モラルスさん……その、あくまで望濫法典としての活動の結果、自然な形でシャヒルと敵対して、殺してしまったのなら、約束を破ったことにはならないんじゃ? それだったら問題ないって、ことにならないすか?」


「それだ! そうだねナンジュース君、そうしよう。実際問題、守護連合は望濫法典に邪魔だし、向こうから敵対してきているわけだから、仕方がないんだ。ははは、なら、ほんのちょっと、守護連合が苦しくなるように、僕らが頑張ればいいだけなんだ」


|(はぁ……なんなのこの人……めっちゃ疲れる……どうでもいいクソルール、なんでそんなもん守るんだか……どうせ自分の都合で強引に自分のモノにするって言うんなら、約束なんてあってないようなもんなのに……イカレ野郎を理解しようとするだけ無駄か)


 異常者の対応という役割を仲間たちからいつも押し付けられるナンジュースは、最近目に見えて疲労を溜め込んでいた。ストレスから抜け毛が増え、増大したストレスを発散するために、アンブレラとの発散方法も過激になっていった。


 ナンジュースは屋敷から退出し、自身の拠点への戻り際、アンブレラを強引に連れ去り、持ち帰った。そうして暴力的にアンブレラを使用し、そうしてしまった後に、アンブレラを労り、愛を囁いた。しかし、その歪な関係に両者とも納得していたし、歪ながらも、二人は求めあっていた。


「アンブレラ……俺が今までお前に囁いた愛の言葉は全部ウソだ」


「そんなの……ッ、知ってるわ……こんな化け物愛せるわけない……し……ッ」


「けど、ここからは、今日からは違う。全部本当の、俺の言葉だ。アンブレラ、俺はお前を愛してる。お前なしじゃ生きられない。だから、一緒に、逃げてくれないか? 望濫法典から。もう、あんな場所はどうでもいい、お前と一緒に、クソみたいに、何もない中で暮らす方がずっといい。つまらねぇ日常を、俺と生きてくれねぇか? この先、ずっとだ」


「……っ~~~!?」


 コンプレックスと復讐心だけに支配されていたアンブレラの心は、ナンジュースのその告白で、自由になった。言葉を聞いた瞬間に、復讐も何もかも、どうでもよくなってしまったのだ。


 こうしてナンジュースとアンブレラは望濫法典を抜けた。人の心を知らない仲間たちからすれば、全くの予想外の出来事で、望濫法典は二人の大幹部をほぼ同時に失うことになる。





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