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57:段々貧富



 ベイカルの関所を越え、俺達が目にした最初のベイカルらしさは、豪奢な四邸の、まるで宮殿のような屋敷だ。ベイカルの主要産業である鉱業で最も重要な特産品、ガフラマイトという宝石がタイルに散りばめられていて、太陽光を取り込んで別の色の光を出していた。


 ガフラマイトは観賞用としても価値が高い宝石だが、実際の所は高級魔道具の原材料になる。光を取り込んで別の色に変換して放出するという特性がどうも重要らしい。そしてガフラマイトは個体差があり、それによって変換する色も違う。色によって作成できる魔道具も違うらしく、ベイカルの四邸の屋敷もそれぞれ違った色、青、赤、緑、オレンジ色をしている。


 そして、ベイカルの四邸の屋敷の主人達は屋敷の色と同じ名をファミリーネームに持つという。そう、ベイカルを支配しているのは王ではなく、四家の豪商。ガフラマイトを中心とした鉱業で莫大な利益をあげるこの都市は、金こそが正義、信仰の対象だった。


 莫大な利益をあげ、裕福なはずのベイカル。けれど、俺達の目に写ったのは輝かしい栄光だけではなかった。ベイカルにはいくつもの線が引いてあった。中心地にある四邸の屋敷を囲むように、それをさらに囲むように、段々と何周も線が引いてある。そして外側へ向かう程に家屋は貧相に、人々の衣服も薄汚れていった。


「それ、線を引いてるんですか?」


 俺達が四邸の屋敷へ向かう中で、新たな線を引いている人たちに出会った。この線は俺が見た限り、一番中心地に近い線だ。


「あ、ああ……そうだよ。兄さん達は外の人かい?」


「はい、ベイカル四豪商との交渉を行うために来ていまして。その、この線はいったい何なんですか?」


 俺がそう聞くと作業員の人は、俯き、少し複雑な顔をした。


「仕事を貰ってる身で言うべきじゃないのかもしれんけど……わしはこの線が好きじゃない。この線は区別の、いや差別のための線だから……この線よりも外に住まう者はその内の領域で住まうことも、仕事をすることも禁じられている。最初は……一つしかなかったこの境界線はどんどん狭まっていってしまった。兄さん達も見たろ? 外側の線は汚れ、掠れていたはずだ。それが内へ進む内、色濃く、ハッキリとしていったはず」


「外側が古くて、内側に進むほど新しい……富める者と貧しい者の境界線だとするなら、この都市のバランスは大きく崩れてしまっているんですね」


 バランスが崩れている。俺がそう言った時、作業員の人たちは一瞬、俺に同調するかのように、表情を変えたけれど、なぜだが一瞬で元の暗い表情に戻ってしまった。


「はっはっは、バランスが崩れてる、ねぇ? お笑いだねこりゃ、能力不足、努力不足の貧民は自分たちが貧しい理由すら分からないから、なんとなく自分が不幸だと思ってしまう。だがなぁ? オレ達からすれば、その不幸は妥当だよ。力がなき者は、力ある者の奴隷となるのが世の理なのだ」


 俺達の背後から下品な声が響いた。振り向くと大太りした、まるで王族のような豪奢な服装の男がいた。


 この男の発言にマルティアさんとダルアートさんはムッとして、何か言い返そうとする。だけど、俺はそれを制止した。


「四豪商のオレンジマイト・ドン・アルロースさんですね? 我々は交渉に来た守護連合の者です。自分はクレイマン・シャヒル。守護連合の代表をしております。今日はよろしくお願いいたします」


 俺がそう言って握手を求めると、アルロースは手を俺に伸ばし、握手をするかどうかの所で俺の手を叩き飛ばし、ニヤリと笑った。


「──貴様!」


「流石に無礼が過ぎ──」


 マルティアさんとエリアちゃんがアルロースの態度にブチギレてる……俺はまたも皆を身振りで制止する。こんな程度の挑発に乗ってしまったら、ベイカルの詳細な調査なんてできなくなってしまう。


「チッ」


 皆を制止する俺を見て、アルロースは舌打ちをした。挑発に俺達が乗らなかったことが気に入らないらしい。そんなアルロースのイラつきを見て、俺の仲間たちはザマァ見ろと思ったのか、溜飲を下げてくれたようだ。やっぱ戦闘職エリート達ばかりだから、なんだかんだ血の気が多い……危ない危ない……


「こんな若造が代表だと? 守護連合とやらは深刻な人材不足のようだなぁ? 貴様ら何がしたい、オレ達はこの国そのもの、オレ達こそがルール。外のルールがここで通用すると思ったら大間違いだ。王さえも、オレ達には跪くべきなのだ、このベイカルではなァ!」


「望濫法典はあなた方を王とさえ思っていませんよ? あなた方を不誠実に騙し、利用し、最後には裏切るでしょう。彼らは傲慢ですから、内心、ベイカルを支配し、この地の王となってやろう、それぐらいは思ってるはずです」


「舐め腐りおって、クソガキが……潰すぞ? 利用されておるだと? 勘違いするな。そんなことは分かっておるわ。オレ達がやつらを使ってやっておるのだ! やつらがオレ達を利用していると思わせておるだけのこと、利用しあっておるに過ぎん。そんなものは、商売では当たり前のことだ! 馬鹿者めが!」


 やっぱそうだよなぁ。こんな、俺みたいな若造だと舐められるよなぁ……いくら守護連合内で納得がされていようと、外部から見れば、俺がガキに見えるせいで、守護連合そのものが舐められてしまう。まぁ……年齢的に言えば実際ガキではあるし……仕方ないのだけど……


 なんかこう、認められるための何かが必要なのかもね。称号とかお墨付きとかそういうの。


「いやぁすみません。自分は商売の世界のことはまるでわかりませんから、出過ぎた事を言ってしまったようですね。まぁ、自分はともかく、守護連合に協力してくれている、彼らは由緒正しい宗教、国家の正式な大使ですから。彼らの見る全てが、そのまま伝わることはお忘れなく」


 うおお……アルロースの額から血管がビキビキと浮き出てるよ……めっちゃ苛ついてるわ。この人本当に豪商なのか? 姿絵は見てたから間違いないはずだけど、なんだか短慮というか、素直過ぎないか? 分かりやす過ぎる……こんなので交渉なんてできるんだろうか?


 まぁ、四家でこのベイカルを支配してきたというなら、この四家の血筋が実質的に王というかアレだね。共同経営と家族経営の合せ技みたいな、揉めそうな感じのあれだ。だとするなら、血統が重視されて、能力面が微妙な人がトップになることもあるのかもしれない。仮にそんな微妙な人が一家のトップにいたとしても、他の三家にまともな人がいれば成立する……そんな感じか?


「まぁ、まだ交渉の時間までは余裕がありますし。自分たちはもう少し街を見て回りますよ。お騒がせしてすみませんでした。それではアルロースさん、また交渉で」


 俺はそう言うとベイカルで引かれる最も新しい境界線の内側へと足を踏み入れる。外部の情報屋では詳細な調査ができなかったその地へ。


 俺達は真正面から、堂々と歩き、見て回る。人々の反応から何から何まで、全てが俺達が知るべき情報に繋がるものとして考える。俺達から何かを隠そうとすれば、そこに何かがあると俺達に伝えることとなる。





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