表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/105

53:決断と勇気



「望濫法典とその下部組織は領主や王、教会の領域を侵しています。奴らは自分たちが領主や王、教会よりも上の存在であるかのように、我が物顔で、その土地の秩序を穢そうとしています。彼らに協力したり、物を売ったりしないでください! あなたの協力や受け取った物で奴らがやることは犯罪です。それは人攫いだったり、殺し、性犯罪、汚職、脅迫です」


 俺が帝都ラジャーンで人々に呼びかけた。望濫法典という危険な組織がいること、彼らに協力しても、善意は悪意で返されることになると。今ある秩序を破壊し、混乱を齎す存在であると周知されるように。


 俺が帝都で呼びかけたように、守護連合のメンバーは他の様々な地域で呼びかけた。当然、最初はこいつらは何を言っているんだ? という目で見られる。けれど、それはその地域で最初の望濫法典による被害者が見つかるまでの話。


 俺達が呼びかけたことで、被害者達は助けを求めた。今まで、実態が分からず、誰に相談していいのかも分からなかった彼らは、ずっと待っていた。


 望濫法典一派の人攫いで、他の地域で奴隷とされていた者達は俺達が思うよりも多かった。明らかに融合事変が起きてからでは計算が合わない程の数で、これは望濫法典のプレイヤーキャラ達が融合事変が起こる前から犯罪者として活動していたという証明だった。これもゲーム内でのロールプレイがこの世界に反映された結果なんだ。


 しかし、俺達がこうして注意喚起、望濫法典への妨害活動をしていると、その地の領主や王、教会から目を付けられる。当然、呼び出されることになる。


 そうなったら、守護連合のメンバーには俺から望濫法典に関する資料をあらかじめ渡されているので、それを用いて、地域の有力者達を説得していく。


 そして、大抵の有力者達は望濫法典の存在に怒り、望濫法典に対する圧力、排斥活動を始めた。俺が思った通り、望濫法典の行為は彼らのメンツを潰す行為だったからだ。


 と言っても、俺達も有力者が望濫法典に良いようにされていたという事実を明るみにする存在なわけで、俺達も彼らにとっては鬱陶しい存在ではある。


 しかし、望濫法典に関する情報の提供や、守護連合はあくまで地域の権力者の裁量を優先するという取り決めで何とか活動を許された。


 守護連合の立場からすればあまり協力したくないような、劣悪な領地経営をしていたとしても、俺達は基本的に政には干渉しない。これを徹底した。


「俺達に対して明確に敵対的で、俺達を追い出した都市は5、この5都市は完全に望濫法典の支配下にあると考えていいだろうね」


「ずぶずぶの関係ということか……私が思っていたよりも少ないな。人間はもっと、欲深く愚かだと思っていた」


 エリアちゃんもサイディオスに、エルフ文化のあるところで育ったから、基本的に人間が愚かみたいなスタンスなんだなぁ……人を馬鹿にしてるって感じというよりは、知識として聞いた単なる事実……みたいな?


「それは俺も不思議に思ってたんだ。けど、俺達を追い出した5都市を見てなんとなく理由が分かった気がする。この5都市は宗教の影響力が低いんだよ。その宗教が良いか悪いかは置いといて、思想的に強い影響力を持った存在があると、勢力が伸ばしづらいんだと思う。あとそういう宗教って、基本的に精神系の魔法が発達してたり、精神看破の魔法を使うから……宗教施設と公共施設が一体となっているような感じだと奴らはそこを活用できない。信者だけが活用できて利益を得られるよっていうのも、なんだか金儲け主義じゃないか? って思うけど、結果的にそのおかげで守られていたんだ」


「ああ、サイディオスの邪心を持つものを弾く結界のようなものか。信者を識別するための魔法が、望濫法典の本当に信じるモノを明らかにしてしまう……表向きその宗教を信じていても、真に信じているのが望濫法典であるなら……ふっ、となると、宗教組織のどれかを味方に付けられれば、望濫法典を追い詰めるスピードは劇的に早まる」


「うーん……それはそうだろうけど、俺はあまり特定の宗教組織と組むべきではないって思ってるんだ。宗教同士で対立してるのも珍しいことじゃないし、一つを味方につければ複数が敵になることもありえる。目先の力を求めて、将来的な火種を抱えたら元も子もない──待てよ? いけるかも……」


「む? シャヒル殿、何かいい案が思いついたのか?」


「うん! 守護連合は特定の宗教の組織に肩入れしない。だけど、対望濫法典という点ではどの宗教も、俺達も目的は同じだ。だから、各宗教組織から、望濫法典対策の人員を守護連合に派遣してもらうんだ。そうすれば普段は協力することが不可能な宗教同士も、守護連合を通して協力関係を築くことができるし、望濫法典と敵対する全ての宗教という括りだから特定の宗教に肩入れすることにはならない」


「なるほど、その案は宗教だけでなく、王や領主に仕える騎士団達にも同様のシステムが仕えるのでは? 問題は、違った考えを持つ者たちはどうやってまとめるのか? 衝突や新たな問題は必ず発生する」


「だとしても、やってみる価値はあるよ!」


 張り切った俺がそう言うと、エリアちゃんは浮かない顔で口を開く。


「シャヒル殿はわかっているのか? それは、シャヒル殿に大きな負担が掛かることで、おそらくその先、忙しさからまともに寝れない日々が続く。私がそう思うのは、現状の守護連合で、そういった異なる者たちをまとめるだけの能力を持ったものが、シャヒル殿、あなたしかいないから」


「え……? でも、コーマさんとかカレンさんとか……」


「彼らではおそらく難しいと思う。あなたは気づいていないけど、ダクマもディアンナ様も私も、そして噂に聞くアルーインも常識からは外れた場所にある存在。そうした異なる外れた者達が、あなたのいる場所では調和がとれてしまう。これはとても難しいこと。まるで、光と闇、地と風、水と火が、一箇所に集まっても楽しげに踊るようなこと。だから必然的に、コーマ氏やカレン氏が手に負えない厄介な外れた者は、シャヒル殿が面倒を見ることになる。だから、覚悟した方がいい」


「お、おおげさだなぁ……で、でもエリアちゃんはそんな風に俺を見てくれてたんだね。なんだか嬉しいよ」


「私はシャヒル殿を褒めたかったわけじゃない、ただ本当のことを言っただけ。ただの事実……私とシャヒル殿は付き合いもまだ浅いが、その周囲にいる者たちを見れば、私には簡単に分かった。私の霊性、直感が先に囁いて、後から言葉になったことだけど、私の見る景色からは一目瞭然」


 ……言葉遣いが硬くて、なんだか難しいことを言っているように見えたエリアちゃんだけど、その源泉は直感、感性的なものだった。


「はは、はははは!」


「な、なんで笑う……?」


「いや、なんか……エージーが難しい言葉遣いしてるの想像しちゃってさ。親子なんだね、やっぱ。理屈じゃなく、君の直感だって最初から言ってくれたら、俺はあっさり納得しちゃったかも。君の言ったこと、忠告、俺は信じるよ。頑張ってみる。だって、俺が疲れてヘトヘトになるとしても、俺はやりきれるってエリアちゃんは思ったんでしょ?」


「……うん」


 エリアちゃんは、一呼吸の沈黙の後、小さく頷いてくれた。


「──よし! なんだかさっきまではできるか不安だったけど、できるような気がしてきたぞ! ありがとうエリアちゃん!」


 エリアちゃんは俺自身分かっていなかった、俺の抱えた不安に気づかせてくれた。そして、その不安と戦う勇気をくれた。エリアちゃんのあの小さな頷きは、どんな言葉よりも俺を後押しした。


 根拠なんてあるわけじゃないのに、直感的に、俺は信じられたんだ。





少しでも「良かった」という所があれば


↓↓↓の方から評価、ブクマお願いします! 連載の励みになります!


感想もあれば滅茶苦茶喜びます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ