49:古代人ゾンビ説
「ふむ……どうやら傭兵が落としていった資料は人獣化と帝国のキメラ兵との関係を考察したモノと、古代遺跡での調査結果……やはりバルザックワームのことはまだ調査できていないようじゃな。しかしぃ……こりゃ、ワシ等とは全く別系統の技術だからよく分からんのう……」
俺達はサイディオスに戻り、ドラーテルが落としていった資料をカイティス王、マイティス王子、エージーと共有した。
話し合いがカイティス王の屋敷で行われる。しかし、サイディオスのエルフでも古代遺跡のことはよく分からないようで……
「まぁ、ダグルムは殆ど古代の人間と戦っておったからな。エルフは時偶森にやってくるモノと争う程度の関係しかなかったと聞くし、文明も別系統だ。よかったなお前ら、古代の知識を持っている我がいることに感謝するがいい」
ディアンナがドヤ顔でふんぞり返っている。彼女はそのまま宙から資料を読み込んでいく。
「……どうやらあのダグルムの古代遺跡は地脈を利用したエネルギー生成施設だったようじゃな。生成したエネルギーでバルザックワームを育て、バルザックワームの力で人を凶暴な人獣へと変え、その人獣は地脈にエネルギーをストックするために生贄を用意する。人獣は理性を失っているように見えるが……バルザックワームの目的のために動いておったというわけか」
「地脈にエネルギーをストック? そんなことができるのか?」
「エネルギーと言っても我らが普段使うのとは種類が違うな。地脈にネガティブなもの、ストレスを与えると、その性質が変化する。大地が防衛本能から敵を排除しようとするため、攻撃的なエネルギーを発する。ダグルムはその攻撃的なエネルギー【アポトゥス】を兵器を動かすためのエネルギーとして活用しておるんじゃ。兵器とは攻撃的な側面を持つわけで、この攻撃的なアポトゥスと相性がいい」
「つまりストックを増やすっていうのは……アポトゥスを生み出すために必要なストレスを用意すること……人の生贄を使って何らかの方法で地脈を攻撃してたってことか……」
なんだかゾンビがゾンビを生み出すために操られてるとかそんな感じだな……
「これダグルムはちゃんと制御できてたのか? なんか自分たちも人獣化されて滅んじゃいそうだけど……」
「ダグルムは派生した人類種で、アポトゥスに適応した存在だ。つまり生まれながらアポトゥスと親和性がある。だから仮に人獣化しても理性は保ったまま、肉体が強化されるだけであまりデメリットがない。理性があると言っても……元が凶暴で利己的な種族だったゆえ、理性も知性もないに等しいがな……」
なるほど、元から知性のあるゾンビみたいな感じだったからあんま関係なかったってことかな?
「ほーん、地脈ねぇ……逆に言えばその古代遺跡をぶっ壊して、あの大地を浄化すれば全部解決ってことなんだろ? だったら楽勝じゃん!」
「エージー? そ、そうなのか? 浄化って何を……」
「仙水を使えば良い。幸いオレがサイディオスに来てから、仙水は鬼のように余ってるからな。そいつを一瓶でも持ってけば終わるだろうよ。仙水は死んだ土地を復活させ癒やすことができるからな」
「仙水……我らも、古代でエルフ達と力を合わせることができていれば、滅ばずに済んだのかもしれないな」
仙水を使えば問題はあっさり解決できるだろう。エージーのそんな言葉にディアンナは複雑な表情を浮かべた。後悔……だけど、後悔しても、ディアンナの故郷は帰ってこない。すでに滅んだ後だから。きっと、どうしようもないやるせなさで……ディアンナの胸は一杯だろう。
「ダグルムの遺跡の図に仙水を注ぐポイントを書き込む。我ならば、どこが効率的に浄化できるか分かるからな」
ディアンナはそう言ってペンを両腕で抱えるように掴んで、遺跡の図に印を書き込んでいく。仙水を注ぐポイント、そこはパイプラインのようなものが密集する根本だった。
「ここに穴を開けて仙水を入れれば、勝手に遺跡内を循環して遺跡は崩壊するだろう」
「了解だ。けど、結構時間経ったから……もう遺跡には新しい敵の警備がいる可能性が高いよな。人員も増強されてるかも……なんとかバレないようにできないかな……? ……あ! ねぇ! エリアちゃん! フェンリルって遠隔操作ってできる? フェンリルは普通の人間からは見えない。遠隔操作できれば仙水をこっそり運ばせて、そのまま指定ポイントに注ぐことだってできるかも!」
「まぁ、視界を共有して操作のみに集中すれば可能ではあるはず。わかった、シャヒル殿の案を試してみよう。仙水の注入で遺跡が崩壊するなら、私達が内部へ行くのは危険でもあった。その点精霊であるフェンリルなら、物理的なダメージは全く問題ない。父様、仙水を取りに行く。倉庫を開けてほしい」
「あいよぉ! んじゃ行くぞエリア!」
エージーは元気よく部屋を飛び出していった。ダッシュする父親と、マイペースに歩くエリアちゃん……行動は違うのに、なんだかそれが、とても似ているように見えた。
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