47:不可視を見ろ
雷を纏ったドラーテルが動き始める。俺に見えたのは微かなヤツの影だけで、まるで目で追えない。だからと言って何もしないっていうのはありえないけどっ!
「──速すぎる……ッ!!」
俺は見えた影からドラーテルの動きを予測し、回避運動を行う。だけど、その動きよりも当然ドラーテルは速いわけで──また微かな影が見えた。きっと、ドラーテルが俺の回避運動に合わせて動きを変えたことで一時的に減速したんだろう。追いつかれ──
──ザシャーーン!!
「グッ!?」
俺は腹から胸を切り裂かれた。ドラーテル!! 手加減してやがる……間違いない……おそらく雷を纏う前から、あいつは軽く一撃で俺を倒す火力があったはず……それが、雷を纏ってさらに強化されたヤツのまともな攻撃を俺が耐えられるはずがない……
ドラーテルが俺を試すと言ったのは言葉通りの意味なんだろう。一体何のために俺を試すのかは分からないけど……こいつの目的は俺を殺すことじゃない、けど……俺を試した結果、俺が力を示せなかったなら……殺されるのかもな。
とにかく、考えるんだ。ヤツの動きに対応する方法を!
「ほほぉ、まさかこの状態のおいらの動きが少しだけ見えるようだね。素晴らしい……けど、見たところちゃんとした防御魔法も使えないみたいだし、それではこの先の戦いは厳しいんじゃないの?」
声と共にドラーテルの姿が現れた。話す時は止まってくれるのか……はは。確かに音よりも速く動いているのだとしたら、高速移動によって声の音がばらばらに分散して、滅茶苦茶な聞こえ方しそうだもんな。
分散……音……そうだ……ドラーテルは超速で動いているはずなのに、動いている音は殆どしない……もちろんこの世界が元いた世界とは物理法則が違うっていうのはあるんだろうけど……この世界でも動けば音は出るし、激しい動きをすれば音も大きくなっている。流石に不自然だ……
音が──消えてる? 音が消えるってどういうことだ? 音を伝えるものがないってことなのか? まさか……
「大気を消した? 焼いたのか押しのけたのか、それとも異空間でも移動してるのか……音のない世界で、音よりも速く動いている……」
「……はぁ? おいおい、もうそこまで考えつくのかよ……この技開発に何年も掛かったんだよぉ? それをちょっと見ただけでサァ……はは、でも、この理不尽、たまらないねぇ」
理不尽はお前だろと言いたい俺だった。ドラーテルの反応を見た感じ、俺の予測の3つの内のどれかは当たってるっぽい。どれが正しいのかは検証するしかないだろうな。
ドラーテルが再び消える。ご丁寧に俺から一度離れ、距離を取ってくれている。あいつは俺がどう対応するのかを見たいらしい……
それを見た俺は斬撃エネルギー塊を移動しながらばら撒き設置した。俺を守るように設置したエネルギー塊に対処しなければドラーテルは無傷で俺に到達することはできない。
音を消せるとしても、斬撃エネルギー塊は消せないはずだ。音じゃなくて、斬撃の物理エネルギーだからな。ダクマの攻撃魔法無効で無効化されなかったから、おそらく魔法無効化でも対処不可能だ。
──ガオオオン!!
防御態勢を取っていた俺の腕に衝撃が走る。そして俺は勢いよく弾き飛ばされた。斬撃エネルギー塊のトラップは発動しなかった。俺はトラップの位置も分かるし、発動しかたどうかも分かる……トラップは──俺を囲み守るように設置されていたはずだが、元の位置から移動していた。そしてトラップが移動したことで、守りに穴が空き、ドラーテルは俺に到達した。
「ありゃ? 自分は喰らわないタイプの罠なのかい? 君の後方にもあったから、それに当たってダメージを受けると思ったんだけどねぇ?」
「咄嗟に解除しただけだよ。それにしても、中々に不便そうだね。その技……お前、話せなくなるからわざわざ止まってるってわけじゃないんだろ? その”大気を押しのける”特性、力を弱めなければ、お前は呼吸すらできなくなるんだ。呼吸するための空気を追い出したら、当たり前だ」
「──ッ!! はは、試したのはおいらだけじゃないってことか。いいねぇ、はっきり言って合格点あげていいところなんだけど。楽しくなってきたし、もう止まれなくなってきた。イケるとこまで行こうかね! 油断したら死ぬ感じで、君を認めてあげるよ!」
ドラーテルが消える。その瞬間に俺はこの空間の大気を感じることに専念した。そうすると、目には見えないドラーテルの動きが、分かるようになった。ドラーテルの空気を押しのけるスピードは緩やかだ。結局ドラーテル一人分のスペースを押しのけるだけなら、大した空気の量じゃない……だけど、風の力を感じて見れば、そんなドラーテルの動き、その軌跡がハッキリと分かる。
軌跡が分かるなら──俺はこいつを止められる!!
「──~~~!?」
微かな声が聞こえた。声の主、ドラーテルは声をあげるつもりなんてなかったはずだ、でも声を発してしまった。驚いたから──俺の起こした現象に!
俺はドラーテルの軌道を読み、ドラーテルが直線的にこちらへ向かってくるその瞬間に、クイックターンを”ドラーテルに行わせた”
クイックターンはプレイヤーだけでなく、非プレイヤーも使うことができる。ゲーム内は特に説明もなく、誰もが使える瞬時に後ろを振り向く技能だ。
俺はこの世界にやってきて、クイックターンの本質に気がついた。ダクマがクイックターンを使わずに振り向くのを見て、俺は思った。クイックターンという機能が存在する方が、リアルとなってしまったこの世界おいては異常であると。
俺はクイックターンの仕組みを自分なりに考察し、研究した。俺がアルドロード魔法学校で校長室に閉じ込められた時、校長室を空間ごと移動させることで脱出した経験から、空間と移動というものに興味を持ったからだ。
そうして研究した結果分かったのは。クイックターンが、風属性の魔力によって行われていたこと。あれは移動なんだ、ターンというと振り向いて回転しているように思えるし、実際目で見ても振り向いているように錯覚するけど、実際に行われているのは”前進”だ。
自身の背後に存在する空間と繋がるゲートを前進して通過することで、超短距離テレポートを行なっている。つまり、クイックターンを魔法として使えれば──俺が他者にクイックターンを行わせることが可能なんだ!
「──【ターニング・ポイント】!!」
──【ターニング・ポイント】:補足した対象にクイックターンを使用する。風属性、魔法、使用回数制限なし。
「──そうやって回り続けていろ!おらああああああああ!!」
ターニング・ポイントによってその場でクイックターンを連続で繰り返し、回り続けるドラーテル。ドラーテルは高速でその場に留まり続け、誰であってもドラーテルの存在を認識できるようになる。
俺が攻撃するために接近すると同時に、ダクマとエリアちゃんもドラーテルに攻撃を仕掛ける。
──ゴオオオオオオオン!!
しかし──俺たちの攻撃は弾かれた。ダクマと俺は近距離でドラーテルのカウンターを喰らい、大ダメージを負う。
「ぐ、ああああ!?」
だけど、大ダメージを負ったのはドラーテルも同じだった。俺とダクマの攻撃は無効化されたが、エリアちゃんの攻撃、精霊フェンリルによる凍る噛みつきはドラーテルに直撃した。ドラーテルはおそらく精霊が見えない……だから防御ができなかったんだ!
「クソが……もう速く動くのやめよ……目が回る……ったく、痛いじゃないの……なんだよ見えない攻撃って……反則だろォ?」
「あんたの攻撃だって、見えないんだから反則だろ……全く、あの状態でカウンターって頭おかしいだろ……」
半身が凍ったドラーテルは未だ笑っていた。ニヤケ面から、ヤツが余裕を失っていないことが分かる。だからこそ俺は確信を持った。
ドラーテルはただのカンストレベルじゃない。レベル上限に達した後も鍛錬し、ゲーム的なステータスでは測れない強さをどこまでも磨いてきた。真の武人なんだと。
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