46:雷神
「さ、もう行っていいよ。人質はここで解放さ」
俺達がドラーテルの後についていくと、ドラーテルは遺跡の外、転移禁止の結果の外までやってきたところで、突然人質を解放した。
「ど、どういうつもりだ……なんで結界の外で解放した……お前たちは結界の中でも転移できるんじゃないのか? 人質解放の手順も決めないままそんな雑に……」
「まぁ、結界の外に出たらさ。人質さんも勝手に一人で帰れる。ほら、今帰った」
専門家の男性は、ドラーテルから解放されてすぐ、走って距離を取ると転移魔法を使用して、ここから立ち去った。
転移魔法の使用には詠唱時間があり、大きな隙が存在する。けれど、ドラーテルはそれを咎めるつもりはないようだった。
転移魔法に隙があるからこそ、ドラーテルは俺達の前で転移魔法で逃げようとしなかった……俺はそう思ってたんだけど……もしも俺がドラーテルなら、人質を利用して俺たち距離を取らせ、自分が転移魔法を使う隙を作るけど……ドラーテルはそれもしない。逃げるのに転移は使わないってことなのか?
「いやね? おいら、いつもは自分にリスクのある戦いはしない主義でさ。五分の戦いはしないんだけど……試したくなってサァ──君のことを」
「は……?」
試したくなった。ドラーテルはそう言って俺を見た。ドラーテルはニヤケ面なはずなのに、なぜだかそれは攻撃的な笑みに見えた。俺と戦おうとしてる……? それを俺が認識した瞬間、悪寒がした。
「エルフちゃんも、そこのちびっ子武闘家も、育てばきっと、おいらより強くなると思う。凄い才能だよ……じゃあ、君は? 二人をまとめてるリーダーみたいなポジションなんだろう? さっき、君のステータス見ようとしたけど、確認できなかった。見れたのはレベルだけでさ、とても一線級と言えるレベルじゃなかった。けど、看破防止のアイテムで隠されたその能力……気になるってもんサァ!」
看破防止……破魔石の指輪の効果だけど……やっぱり伝説の傭兵ってなると、そういうのもすぐに分かるんだな……
「好奇心てことか? 分からないな……だとしても、どうして俺たちを結界の外に出したのか……」
「君は敵であるおいらにアドバイスしてくれただろ? リバースピラミッドを調べろって……おいら、人の気持ちに敏感だから、わかっちゃうんだよね? 君は、おいらのことを心配してた……単に、障害を取り除きたかったわけじゃない。くくく、そんな風に優しくされるなんてサァ、お返ししないとだろ? おいらと戦った後、君らが生き残れるように、逃げられるようにしとかないとさ──じゃ、やろうよ?」
瞬間、とんでもないスピードでドラーテルは俺に距離を詰めてきた。それに合わせて俺も距離を取り、後退していく。
「ははは! 素早い! 頂きに到達したものよりも速いのか! 歪んでるナァ! 尖ってるナァ!」
クソッ! こいつ、まだ速くなるのか! アルーインさんとアダムよりも速い!! あれから俺が強くなっていなければ……きっと、こいつの動きを追えなかった。大丈夫なのか? エリアちゃんとダクマは、こいつの素早さに対応できるのか?
「おっと、よそ見はよくないぞ? ほらほら!」
ドラーテルが俺を追いながら剣を素早く、軽やかに振るう。その剣先から3つの斬撃波が発生し、それらは俺に向かって弧を描くように飛来する。それぞれの斬撃波が連携するかのように、俺の回避経路を塞いでいく。
俺は自身の特殊スキルを発動させる。
──【疾風の迅脚S】:移動速度超上昇、移動した場所に斬撃ダメージのエネルギー塊を設置可能。脚部を使った格闘攻撃を超強化、脚部を属性強化可能。風属性、土属性、火属性、特殊。
疾風の迅脚Sによる斬撃エネルギー塊を設置、発生させる。
──そして、そのエネルギー塊を風の魔力で属性強化した脚で蹴り出した。
風の属性は移動の力。設置した斬撃エネルギー塊そのものを風の力で移動させ、遠距離攻撃へと転換させる! 俺の風の力と、俺の脚の力が融合し、超スピードの移動の力が生まれる。
──ギイイイイイイイン! ガガン!!
斬撃エネルギー塊は、ドラーテルの放った斬撃波を迎撃するように衝突して、互いを相殺する。
「おお! 悪くないセンスだ! だけど、まだまだ足りない! 君は、おいらを止めないといけないんだよ? これじゃあ止まんないよォ!」
「しゃ、シャヒル!! なんという技だ……カッコイイではないか!!」
「あの脚だからこそできる芸当……ダクマ、目は慣れてきた? シャヒル殿を援護しないと!」
風に乗って、ダクマとエリアちゃんの声が俺に届いた。よかった……一応二人もドラーテルの動きを追えているようだった。目が慣れれば対応できるかもしれない!
けど、問題は……ドラーテルの使ったあの斬撃波は”戦技スキル”じゃないってことだ……隙が全くない、極めた通常攻撃で、あの現象を引き起こしただけ。おそらく、ヤツにとっては軽い挨拶程度の牽制……それが超技巧によってなされるものだけど……こいつはそれを、片手間に、気楽にできてしまう化け物なんだ!
「じゃあ、これはどうかな? 【砂塵雷霆】!!」
──【砂塵雷霆】:砂嵐を巻き起こし、風圧と塵の摩擦で超威力の雷を生み出す。風属性、土属性、戦技スキル。
ドラーテルが剣を振るい、大地を切り込み、土と風を混ぜ込むようにして廻す。巻き上げられた土は剣圧でさらに細分化され、砂となり、砂は塵となる。
砂塵はそれそのものが威力を持ち、小さな持続ダメージが俺に蓄積していく。そして、砂塵の嵐はその内部で、塵同士を擦り合わせて雷を生み出す。
バチバチと次第に威力を高めていく雷は、砂塵で暗くなった視界を明るく照らす。
クソッ! ドラーテルは戦技スキルの硬直をしっかりと食らってるってのに……砂嵐と雷の放電現象で守られている……カンスト者は、こういうズルい技を使うんだから! アダムさんも硬直の隙を持続する炎でカバーしたりしていた。
「おいおい、これはおいらのオリジナル技の第一段階だぜぇ? 本命はこっからさ! ──【ブレイド・オブ・ゼウス】!!」
は……? 嘘だろ? ドラーテルは砂塵雷霆で生み出した超威力の雷を一つの場所へと収束させた──ドラーテルが掲げるその剣に、雷は収束する。剣先から剣を通って、雷はドラーテルの身体へと浸透、剣とドラーテルのシルエットからバチバチと起きる雷の放電は、まるでオーラのようだった。
間違いない……ドラーテルは雷の力を己に宿したんだ。雷の力を自身に循環させている……雷はドラーテルを焼いていない……単にあの雷が自身にダメージを与えないってのとはまるで違うように見える……なぜなら、ドラーテルの中に入った雷は、入る前よりもその力を強く、加速させているからだ。
ドラーテルは、雷の力を完全に制御している。己が力として、制御しきっているんだ!
「光の速さってわけにはいかないけど。誰にも追いつかせない、そんなことができる。さぁシャヒル! 雷神とどこまで戦えるかな?」
雷神? まぁ、そうかもな。勝てる気は全くしない……だけど、こいつが雷の神だって言うのなら。きっと、俺は……いつかこいつに並び立てるぐらいにならなきゃいけないんだ。
俺がガルオン爺に立てた誓い、いつか、いつの日か! 俺が風神と呼ばれるぐらいの偉業を成し遂げ! 歴史に俺の名と共に、俺の師匠の名を刻むのなら!
俺は逃げられない! この雷と向き合い、己の限界を越えなければたどり着けるはずがないんだ!
少しでも「良かった」という所があれば
↓↓↓の方から評価、ブクマお願いします! 連載の励みになります!
感想もあれば滅茶苦茶喜びます!!




