44:古の呪い
窪地の中心地の大穴から中へ入ると、数m落ちたところで着地した。
「あ、あぶな……ちょっと進んだら階段じゃないか……それにちょっと明るい? あいつらが光を持ってきた……?」
階段通路は淡く、足元が少し見える程度に明るかった。薄暗いがこれなら明かりを付けなくとも大丈夫そうだ。
「ダクマ、ちゃんと見えるか? 見えるなら、明かりはつけないで進む。敵にバレるかもしれないから」
「大丈夫だ。しっかり見えるぞ!」
「あと、声も小さくね? 声が大きいとバレる」
「りょ、了解だ~……!」
押し殺したような小声がダクマから発せられた。
「よし、じゃあ先に進むぞ。相手が前衛職系統だったら、先に仕掛けてもいいけど、魔法使い系統に先制攻撃はなしだ」
階段通路を進んでいく。俺たちが進むごとに通路は明るくなっていった。壁面が光っている……これ……確か古代に絶滅した光虫の化石だったっかな? 化石化した後も魔力に反応して光るんだ。古代人はこの光虫を明かりとして活用していて、この光虫は古代人に家畜化された種だったから、古代人が滅ぶと一緒に絶滅してしまったらしい。
ロブレには一応古代遺跡系統のダンジョンもあって、そんなダンジョンにはこの光虫の化石がよく見られた。俺がこの光虫を知っていたのもそういったダンジョンを見たり、設定資料に記載されていたのを見たからだ。
「シャヒル殿、なぜ魔法使い系統に先制攻撃はなしなんだ?」
「ここは地下洞窟みたいなもんだろ? 魔法で俺たちを倒すぐらい高威力のやつを放ったら、この遺跡は崩落してそいつらも生き埋めになる。だから範囲を絞った火力で攻めてくると思う、それだったらダクマの攻撃魔法無効化だけで対処できるから比較的安全に対処できる。でも前衛職の攻撃は無効化できないからね……もちろん前衛職の攻撃も崩落を起こしかねないけど……」
「あっ、そっか! 余が思いっきり戦ったら、崩れてくるのか。危ない危ない、出会ったら思いっきりぶん殴ろうと思っていたからな」
あ、っぶね~~……事が起こる前に気づいてくれたけど、もっと早く説明すべきだったな。俺のミスだな……俺が当然だと思っても、ダクマもそう思うかは別だもんな。
「まぁさっき俺が言ったのは、あくまで安全面からの話。先制攻撃しない理由はもう一つあるんだ。それはここにいる存在が、敵だけとは限らないってこと。敵はおそらく融合事変によってやってきた冒険者集団だと思うけど、こういった冒険者は基本的に魔法を戦闘面でしかうまく活用できていない。だから調査研究となったら、そういったノウハウを持っている、非冒険者の専門家の力を借りる可能性が高いと思うんだ。敵が不道徳、邪悪な集団だって言うのなら、敵はそういった専門家を無理やり従わせている可能性がある」
「なるほど……そこまで考えていたのか。確かに被害者を殺してしまっては、例え蘇生したとしても正義の行いとは言えない。情報面と安全面というより、人道的な側面の……っと、そろそろ敵が近いぞ。こいつらは邪気が強いゆえ、分かりやすい」
エリアちゃんが俺たちに警戒を促す。先程、エリアちゃんが地上で敵の攻撃を察知したのを見た俺たちは素直に従う。喋るのをやめ、足音もできるだけ小さく抑える。
そして、ついに階段通路の終わりが来た。強い光が漏れ出す、フロアがあった。俺達は壁面に張り付き部屋の様子を確認、この部屋の中にいるのは三人……全員魔法使い系統……
「おい、早くしろ……お前の大事な家族が待ってるぞ? アーティファクト・キーの解析を終わらせてくれなきゃ俺たちも困るんだよ~。先へ進めないだろ?」
「人質だし、命は取らねぇといったけどよぉ? ちょっと遊ぶぐらいはぁ……してもいいんだぞ? うちのメンバーはそういうの好きな変態も多いからよぉ、急がないと、お前の元に返ってくる頃には別人みたいになってるかもなぁ! ははははは!」
「や、やめてください! これでも急いでいるんです! 家の家族に手を出すというのなら! ワタシは自害しますよ!?」
脅されるひ弱そうなメガネとヒゲの男、そしてカス二人。俺はカス二人を指差し、ダクマとエリアちゃんにGOサインを出した。
全員で一斉に部屋に入り、それと同時にカス二人に仕掛ける。ダクマの暗黒剣が左のデブに、エリアちゃんの氷の魔法が右のノッポを一撃で殺した。
ダクマはともかくエリアをちゃんの魔法……これ、なんだ? みたことないものだし、詠唱もしなかった? 突然、ノッポ男の身体が凍っていったけど……まるで獣に齧られたみたいに……食われた部分が凍った? さ、寒い……なんだ? 寒気がしてきた……
俺が寒気のする方を見ると、そこには氷の狼がいた。
「氷の狼……?」
「何いってんだシャヒル? 狼?」
首を傾げるダクマとディアンナ。二人共見えないのか?
「ふっ、どうやらシャヒル殿には見えたようですね。私の友達のフェンリルが……やはり、あなたには精霊を見る才能がある。精霊の力が行使され、存在が濃くなれば見ることができた」
「あ、ああああ! あなた方は……一体?」
「ああ、すみません。俺たちはあなたの敵じゃありません……ここを荒らしている奴らと敵対関係にある組織の者です。一応確認しますけど、あなた自身は望濫法典のメンバーではないんですよね?」
脅されていたメガネとヒゲの男性に一応確認をとる。まだ敵が望濫法典関係の組織と確定しているわけではないけれど、この人が協力させられていたなら、この組織に関する情報を何か持っているかもしれない。
「望濫法典……? そう言えば、あいつらがそんなことを言ってたような……もちろんワタシは彼らの仲間ではありません。ワタシはヨルド国で考古学と古代魔法を研究している者でオードと言います……家族を人質に取られて無理やり……」
「やっぱり専門家さんだったんですね。ならここがダグルム、ダールムの遺跡、危険な古代兵器が眠っているってことも知ってるってことですよね?」
「はい! えっ!? ダグルム!? 古代読みで呼ぶ人を初めて見ました! く、詳しいんですね! 彼らは古代読みどころか、ダールムの存在すら知りませんでした。単に強い特殊な魔力に引き寄せられただけ……ここに眠る兵器が危険であることも知らずに……」
「危険……えっと、あなたは、オードさんは……ここに何が眠っているのかを知っているんですか?」
「はい、遺跡内部を調査しましたから……元々予測していたものではあったのです。人獣化の禁薬を生み出す……バルザックワームが、ここには眠っています。アレが……地上に出て復活してしまったら……人は正気を失い、人を襲う。秩序は崩壊し、混沌の時代が訪れる」
人獣……エージーがサリアさんを助けた時に戦った謎の存在……そうか……あれも、ここと関係があったんだ……繋がってきたぞ。今回の問題は……俺たちが思っていたよりも、ずっと深刻らしい。
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