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1:コンプレックス

 連載一話目! 対戦よろしくお願いします!


「あ、そっか。今日講義ないんだった……じゃあ、長めにできるな」


 寝ぼけたまま大学へ行く準備をして、玄関で靴を履く、そんな頃になって気づいてしまった。損した気分になったけど、暇なのはいいことだ。暇ってことは、ロード・ブレンド・オンラインを長く遊べるってことだから。


 ロード・ブレンド・オンライン、通称はRBOとかルボとかロブレとかロブオンとか、派閥がある。俺はロブレ派だ。VRMMOがブームになってちょっと落ち着いた頃に出たこのオンラインゲームは、一時期ファンタジー系の覇権になるとか言われたけど、そんなことはなかった感じのゲームだ。安全性を重視したハーフダイブ方式で、ゲーム内の感覚を擬似感覚で体感できるけど、それがしっかりゲームのものであると認識できるようになっている。


 どういう理屈かはよく分からないけど、ゲーム内での体感データとこの感覚は偽物ですよみたいな電気信号が一緒に送られてくるらしい。なので現実の意識がある中でゲームができるけど、没入感が結構ある。もっとハードなのを求めてフルダイブ式をやりたがる人は多かったけど、通称脳みそ乗っ取り事件によってフルダイブ式が規制されたから、今はこのハーフダイブ方式が多い。


 操作方式は人間の思考で動かすタイプで、マウスとかキーボードは必要ない。ガチ勢はキーボードを併用するらしいけど、俺はライト勢だからキーボードを持ってない。VRMMO用のヘッドギアだけだ。ベッドで寝ながらやる人も多いけど、そういう人は大抵寝落ちする。俺は寝落ち対策に部屋で一人、立ちながらやってる。眠くなったらスクワットをしながらプレイする。そのせいか俺は無駄に脚の筋肉が発達している。


 傍から見たらすげー変な感じに見えるだろうな……部屋で一人立ち尽くして、唐突にスクワットする人……まぁ、リアルアイモードを使えば、普通に現実世界をヘッドギアのゴーグル越しに見えるから、飲み物取り入ったり、トイレいったりぐらいは余裕、こっちのモードでながらプレイする人も多い。ただし没入感は大幅に減る。


 とりあえず、ロブレを起動する。思考クリックを連打し、最速でログインする。思考クリックをするとチカッと光るから連打するとちょっと眩しいが慣れた。


 ロブレ世界に到着、見慣れた初期町【ロンプラ】の景色が広がる。やたらでかい稲のような草が生えまくってて、ちょっとジメジメした、魔法使い系のキャラを使う人がよくゲームのスタート地点として選ぶ町だ。俺の自キャラは別に魔法使い系のジョブじゃないけど、ロンプラの変わった雰囲気の景色が好きでここを初期町に設定した。他の初期町もいくつかあって、どれもいい景色だけど、無難なファンタジー系だから。ロンプラほどは惹かれなかった。


 ロンプラは巨大稲と湿地、そして巨大キノコが特徴で、巨大キノコを加工してできた建築物で町が作られている。カビ畑もあり、カビを塗料やポーションの原材料として生計を立てている町だ。知能の高いネズミ型の亜人、小人のような種族【チュピトル】が共生していて、彼らが巨大キノコの胞子に掴まって空中を移動している幻想的な景色が俺は大好きだ。


 そう、俺はこのVRMMOの風景が大好きでこのゲームをプレイしているんだ。ゲーム的な部分も面白いけど、やっぱり俺はこういう幻想の世界に没入できる感じが好きなんだ。このロブレもサービスを開始してから4年経って、人も減って新規もあまりいない、熟成された……ぶっちゃけオンゲの末期感が漂いつつあるけど、俺は風景目的だからあまり関係ない。


 俺のロブレにおけるルーティーンはこうだ。ロブレに到着したらロンプラの景色を見渡す、そしてガルオン爺に話しかける。ガルオン爺は話しかけると長ったらしい説教をしてくるんだけど、説教を聞き終わると一日一回、傷薬をタダでくれるという、初心者救済NPCだ。俺は貧乏性なのでロブレを始めてから毎日、この説教ログボの傷薬を受け取り続けている。連打し過ぎて、無駄に何度も説教を受けてしまう時もあるが、最早そうなってもイラつくことはない、そんな境地に達していた。


 そして傷薬を受け取ったら、冒険者ギルドでロンプラ周辺の警備という、初心者しかやらないような超低難易度依頼を受ける。この依頼はモンスターを討伐どころか発見するだけでよく、マップを探索して、色んな背景を見るのに最適な依頼だ。俺の気分次第で、好きなルートで探索できるし、この依頼を受けている間は強敵とも遭遇しないのでマジでいい。ただし依頼報酬は初心者からしても激渋な額しかもらえないので、おそらく俺ぐらいしかこの依頼は回していないだろうな。


 そして警備が終わったらその日の気分次第で別の町やダンジョン入り口に転移して、景色を楽しむためにマップを移動しまくる。ロブレにも移動を効率的に行うための、馬みたいなペットキャラ【ヒートル】がいるけど、俺はそれを基本使わない。なぜなら自分の足で歩いて景色を楽しみたいからだ。歩いて移動しては、風魔法を使って滞空、角度を変えて様々な景色を楽しむのだ。


 風魔法は移動に関する魔法が多く、ロブレ最初期は火力とスピードを兼ね備えた強属性だったが、猛威を振るった結果バランス調整を受け、ゴミ属性とプレイヤー達に言われてしまうほど弱体化してしまった悲しい過去がある。それで大抵の風属性使いは、火属性とか水属性に切り替えた。火力がなく、スピードだけ速いので、風属性使いはおもちゃの扇風機とか、おもちゃ使いとか、ブンブンマンとか言われる始末だ。


 まぁ俺には風属性が弱属性だろうと関係ない、風景を見るために色々と便利なのでメイン属性として使っている。魔法のステータスが強化される時は常に風属性を選んできた。俺は戦闘もロクにしないので、力のステータスがまるで成長せず、マジモンのおもちゃの扇風機だけど、おそらく風属性魔法はかなり使える方だと思う。


 まぁ職業は魔法使いじゃなくて、スカウトっていう忍者とかシーフとかそういう系統の職業だけどね。スカウトは素早さと器用さにステータス補正がもらえて、罠を発見しやすいという職業特性があり、罠があっても避けて移動できる。これまた景色を楽しむためには最高の職業なんだ。戦闘になっても最強の逃走成功率を誇るので危険地帯に出向いてもほぼ死なないしな。


 こうして景色を楽しんだら、またロンプラに戻り、最後に夜のロンプラの景色を楽しんでログアウト、これが俺のロブレを楽しむ最強のルーティーン!


 ……まぁ、そんな偉そうに言えることじゃないけど……本当に最大限に景色を楽しむなら……最前線プレイヤー達が挑むようなエンドコンテンツのダンジョンに挑まないといけないんだけど……俺は正直自信がなくて、チャレンジできないでいる。だから最高難易度の景色を俺は知らない。ま、そもそもキャラビルドが地雷と言われるようなそれなんで、一緒に組んでくれるパーティーやクランもないだろうけどね。


 でも、俺は結局……ロブレに限らず、何もかもが中途半端なんだ。適当に勉強して、適当にバイトして、適当に生きてる。俺は昔から自分に自信がない……もし本気で何かに向き合って、結果が出なくて、お前には才能がない、なんの価値もないんだと自分で思いこんでしまったら……俺は立ち直れない自信がある。だから何事にも予防線を張って、頑張らないように生きてきた。


 マジで頑張ってる奴らを見て、本当に凄いと思ったし、自分にはできないと思って生きてきた。頑張ってるやつを努力せずに馬鹿にするやつもいるけど……俺からすると、努力が実る実らないに関わらず、そもそもチャレンジ、本気で何かに向き合えるだけで、滅茶苦茶凄いと思ってしまう。


「はぁ、こんなこと考えたくなかったのにな……もう寝よう」


 俺はロブレを終わって、夜飯を食わないまま寝た。




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― 新着の感想 ―
[一言] なろう様は文章の合間に絵文字が使えないんですよねぇ と、通りすがりが申しております 多分また来るかも。  
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