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大根転生  作者: 大岫千河貢
この話はゲームの構成を意識して書いています
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第6話 大根はやられてしまった。

 EDMに合わせてステップを踏むことに快感を覚えてしまった俺は、戦いたいという意欲がどんどんと湧いていった。

 暇を持て余している時は畑を探索するだけでなく、人間からは死角になっている草むらへと行き、頭の中で作曲をしている。どうやら俺には作曲の才能があったようで、次々と曲が思い浮かんでくるのだ。人間時代にこの才能を見出したかったとは思いつつ、作曲をしては実践をしたくなるので、探索へと出る。

 俺は、アオムシ、ケラを難なく倒し、調子に乗っていたのかもしれない。

 とある日の夜、草むらの方から“ガサガサ”と大きな音が聞こえてきた。俺はその音が聞こえた方へと向かうと、そこには今までとは匹敵しない大きさの生き物が目の前に立っていた。


「イノシシ……!?」


 確かに、旧王はイノシシと言っていた。だけど、イノシシってこんなに大きかったっけ……。

 思えば、俺はテレビでしかイノシシを見た記憶がなかった。そして、今の俺は人間ではなく、大根だ。自分の体よりも大きな生き物が目の前に立っているのは、こんなにも恐ろしいものなのか。だが、俺には戦うしかなす術はない。


「勝負だ……!!」


 辺りがオレンジと紫が混ざったような色となり、フィールドが現れる。

 頭の中で、EDMを流す。


「落ち着け……」


 俺は、そう自分に言い聞かせた。

 そう言い聞かせたはずなのに、恐怖からか、思ったように足が動かない。俺は、何度もステップを失敗し、イノシシからの攻撃を何度も受けてしまう。


「うっ……」



 俺は、とうとうその場から立てなくなってしまった。


 すると、辺りは元の空間に戻っていった。

 イノシシが襲いかかってくると思ったが、意外にも、その場から走って逃げ去っていった。

 俺は、出せる力を精一杯使い、他の大根の埋まっていない畑のスペースへといき、土の中に入っていった。

 恐怖というものは、恐ろしい。今まで持っていたはずの自信が、こんなにもあっさりと崩れ落ちてしまうなんて。

 俺は、心の中で泣きながら、傷を癒した。

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