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男が1%の世界で  作者: ガッキーシステム
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受験勉強

自室に戻った俺は古文の問題集を開いていた。

内容は土佐日記の序文だ。

前世では中学生で土佐日記なんてやった記憶はないが流石難関校、入試問題が前世のセンター試験と同じくらいの難易度だ。


女もすなる日記といふものを、男もしてみむとてするなり。


(女がするという日記というものを、男の私もしてみようと書くのだ。)


前世でも有名な序文であり、作者の紀貫之がネカマをかました冗談交じりの文章である。

しかし、よく見ると前世と男と女が逆なのである。


(ん?この世界の紀貫之は女で冗談で男女を入れ替えて書いて、自分の性別を偽ろうとしたんだよな?あー!!なんだかこんがらがってきた!!)


この世界で生まれて15年今でもたまに前世の感覚に引っ張られて混乱することがある。

幸い、歴史上の人物のほとんどの性別は女性となっているが体格に勝る男の名前を名乗ることで自分を大きく見せようという猫の威嚇みたいな考え方で前世と名前が同じことが多い。

逆に男は防犯の観点から女に寄せた名前となることが多い。

実際に俺の名前は優でかなり女性的だ。


そうして、様々な教科の問題を解いていると不意におなかが鳴った。

気が付くともう昼前である。

ちょうどいい時間だ。


例年通りなら今日の昼食はおせちだ。

おせちはいったん箸をつけると見た目の豪華さが損なわれるので家族の誰かがいないときに先に食べ始めることはないだろう。

そして、母さんも凛姉さんも柚子もおなかがすいても受験勉強をしている俺に気を使って声をかけてくることもないだろう。


だから、昼前くらいに降りるのがちょうどいいのだ。


リビングに降りると母さんと凛姉さんと柚子が全国の駅をめぐり、物件を買いあさるゲームをしていた。

3年決戦で今は2年目の10月のようだ。


つまり佳境である。

手持ちの資産とプレイヤーの雰囲気からして母さんが1位、凛姉さんと柚子が同じくらいって感じか。

しかし母さんには貧乏神がついている。

この貧乏神の振る舞いが勝負を分ける感じかな。


などと考えていると11月母さんについた貧乏神がカウントダウンとともに変身を始めた。

ここで赤ちゃん貧乏神だと母さんの優勝、貧乏神の王になると混戦だろう。


「あー!!王だけは王だけは勘弁してー!!」


みんな食い入るようにテレビに注目している。


無情にも貧乏神の王が降臨した。

その時の母さんの顔がハニワみたいで、普段とのギャップがあって面白かったのでくすりと笑ってしまった。

転落が確定し気が立ってる母さんに鋭い視線を向けられた。


変身直後は普通、貧乏神の王が行動することはないがたまに行動する。

そのたまにを引き当ててカードと呼ばれるブーストアイテムをすべて捨てられているのを見て、これは勝負ありだなとスマホに届いた大量のあけましておめでとうに返信しているとゲームが終わった気配がした。


テレビを見ると柚子が1位、凛姉さんが僅差で2位、母さんが圧倒的最下位だった。

喜んでいる柚子としょぼくれている母さん、勝者と敗者がわかりやすい雰囲気だった。


「お昼ご飯にしましょうか。」


「は~い!」


気を取り直すように言った母さんに柚子がご機嫌な様子で返事をした。


中央に伊勢海老が鎮座していて、彩もとてもきれいなおせちだった。

三段重ねでそれぞれに和、洋、中のごちそうが入っている。

おせちにキャビアは何となくミスマッチだけどおいしそうだから細かいことは気にしないでおこう。



「いただきます。」


全員で声を合わせて食事を始めた。

母さんは日本酒を、俺たち3人はご飯を片手におせちを食べ始めた。


これだけいろいろあると何から食べようか迷う。

とりあえず俺から一番近い焼き豚から食べることにした。

焼き豚を口に入れると濃厚でそれでいてしつこくない油の甘みが口いっぱいに広がった。

すごくジューシーで全くパサついていない。

口に肉が残っているうちに米をほおばる。

至福である。


次は数の子である。

俺は一般的なおせちの中では数の子が一番好きだ。

食べるとプチプチした食感が楽しい。

どうやら醤油漬けのようで数の子と醤油の味が見事に調和している。


「伊勢海老た食べていい?」


鴨のマリネ、ホタテの燻製、河豚の竜田揚げなどを次々と食べていると、柚子が聞いてきた。

エビの類は柚子の大好物なのでこの伊勢海老の柚子担当だろう考えていた俺たちはすぐに承諾した。


「この伊勢海老かなり大きいからみんなで分けれそうだよ。」


「いろいろあるんだしいいわよ。一人で食べちゃいなさい。」


「そうね私もいらないわ。」


メインディッシュを独り占めすることに気が引けた様子だったが、母さんと凛姉さんに言われのどに小骨が引っ掛かったような表情で殻をむき始めた。


「あ!いいこと思いついた。はい,あ~ん。」


そう言って、殻の剥けた海老を俺にあーんしてきた。


「ん?なんで?」


「独り占めじゃなくて二人占めならいいかなって。」


「なるほどね。じゃあ、あーん。」


普段だったら照れくさくて断っていただろうけど殻の剥かれた伊勢海老があまりにおいしそうだったのと柚子の無邪気な笑顔に負けてつい食べてしまった。

濃厚な海老のうまみを感じた。

その瞬間母さんと凛姉さんの空気が変わった気がした。


「「はい、あーん。」」


母さんが鮑の旨煮、姉さんがふかひれの姿煮を差し出してきた。

この二つは切り分けられているので自分で食べれる。


「いやいいよ。」


「あら、柚子のは食べれて私のは食べれないと。母さん悲しいわ。」


「あんなに素直だった優も反抗期の時期なのね。」


「一回だけだからね。」


照れくさくて断ったが、演技だとわかっていても母さんと凛姉さんの悲しそうな表情に耐え切れずあーんに応じてしまった。

そんな昼食はいろんな意味でおなか一杯になった。

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