第九話
金銀宝石と煌びやかな剣や銃、鎧で埋められた壁の間を後継者にぶつからないよう進んでいけば、他とは一線超えた飾り方の剣と出会う。堂々と真ん中に置かれたそれは剣置きにおざなりに置かれていて、本当に宝剣なのかと思ってしまうようなものだ。思わず周りをぐるぐる回って確認してしまう。
「失礼します」
入り口で声がして剣から目を離してそちらを見れば、カラクよりも薄い髪の色をした青年が経っていた。少し息が切れているのは、父親からヘイルスのことを聞いて急いだからだろう。長年会ってないからかずいぶん顔の傷が増えたような気がした。
「ザーティマール(こんにちは)、ナハトさん」
「ザーティマール、お久しぶりです」
それだけ言ってナハトは扉を閉めてこちらに向かってくる。カラクよりも戦士然とした無口さ、あまり会うことないとは言え昔から変わらないようだった。近づいてくるナハトから土の匂いがしてくる。多分軍隊での訓練中にカラクから引っ張り出されてきたんだろう。
着込んだせいで暑いやらこれからやる事への罪悪感や持って逃げるのはこの人相手でも絶対無理だとかっていう色んなものが混じりすぎた汗が背中をつたう中、ヘイルスは目の前の剣を指さした。
「こ、これが、宝剣でしょうか?」
ナハトは指さした剣を凝視したあと、ゆっくりと首を横に振った。
「分からないなら、まず私が触りましょう。そのあとヘイルス嬢が持つことができたのであれば、宝剣で間違いないかと」
宝剣は壁に飾られている武器とは違い、王とヘイルスとヘイルスの父しか触れることができない。
宝剣、夢幻の剣。その名の通り幻と現実の境を無くすことができる……らしい。建国から続く剣の伝説は、悪魔すら幻によって封じるという話もある。一体、あの王子はこれを何に使う気なのか。
「ヘイルス嬢?」
「っ、ごめんなさい……ちょっと考え事をしてしまって。その方法いいと思います。やってください」
「では」