第六話
聖堂の鐘が鳴り響く午後一時。お昼寝をしたいような天気のなかヘイルスがいるのは城の前。店を閉めてここでなにをするのかというと昨日の話になる。
ー回想ー
「君、跡継ぎだから国宝の剣触れるよね。その剣とってきてよ」
「できないって言ったらどうなりますか?」
「そこに西洋の拷問器具を模した道具があるんだけど試したことなかったんだよね」
「ぷぇ」
ー回想終了ー
中がトゲまみれの棺桶に首を絞めるためのネジがついた椅子。思い出すだけで血の気が引いてしまう。
昨日は監視つけられたまま硬い床で寝させられたからか体力も回復しておらず、その上ここに来るまでも彼女は監視に目隠しをされて移動してきた。逃げるなんてできるわけがなかった。ちなみに監視は今も物陰から彼女を見張っている。どうやら彼女が城に入るまでいるようだった。
監視にに渡された全身の黒いあざを隠せるような服を身に纏い、束の間の自由を使い考えをまとめていく。またの名を「あんまり城に入りたくない」であった。
まあ、一度よく考えてみよう。向こうから手を出したとはいえヘイルスは王子の首を絞めたり押し倒したりしているのだ。その時点で首がフライして胴とバイバイ案件でしかないのである。このまま入ったらコンマ1秒もかからずお縄になってこの世からおさらばな可能性が高いのだ。しかも剣を持ち出したことが知られれば首がいくつあっても足りない事態だ。レジスタンスがらみならばなおさらわんこそばならぬわんこ首だ。まあそのほかにも彼女が城に入りたくない理由はあるがそれはおいおいとすることにしよう。
一応ヘイルスには国王直属鍛冶師である父の技を知るために剣を見にきたという口実がある。これはアポなしで城に入れる便利なものだ。ほとんど使ってないし、こんなことで使うとは露にも思わなかっただろう。
その上今回のことに関して、誰にも話してはいけないと命令されている。話したら相談相手共々拷問器具でプチッどころかブヂィであるとのこと。ヘイルスに逃げ場などなかったのであった。