第2話 異世界転生~チートを添えて~
風がそよぎ、木々がざわめき、小鳥がさえずるなか、俺は倒れていた。
「ん、んん…ここは」
木漏れ日を感じて目を覚ます。
…たしか俺はあのじいさん―もとい、神様に異世界転生させられたんだっけか。
「ってことは、ここはもう地球じゃないのか…。まあ、確かにそうっぽいな」
だって…
バサッ バサッ
ドラゴンっぽいのが飛んでいるんだもの。
「まじかー。ドラゴンとかいるのかー」
いや、呑気に言っている場合か?あれ、襲ってこないよな?
「ま、まあ、距離があるし大丈夫でしょ………ね?」
俺は誰に聞いているんだ。一旦落ち着こう。
「スゥー…ハァー…、スゥー…ハァー」
よし、オーケー。
まず、自分の状態の確認だ。
「えーと、服は…なんだこれ?見たことのないデザインだな。この世界にあわせてくれたってことか」
次に…、
「顔……は分からないな。見える範囲だと前と変わってないっぽいけど…。まあ、あとでいいか」
他には…、
「持ち物は、なんもない?…いや、服になんか入っているな。手紙か、これ?」
誰からだ?って、あのじいさんからだよな。読んでみるか。
えーと、
ユミト君へ
異世界転生は無事にできたかの?
万一失敗したら、性別が変わったり、手足がもげたりするって聞くんじゃが…。
まあ、大丈夫じゃよな!
「って、おいっ。これ、失敗するとかあんのかよ!しかも、リスク高っ。…俺、大丈夫だよな?……よし、ついてる。俺は男だ」
そんなことより、これからおぬしの第二の人生が始まるぞ。
さしあたって、直接伝えた通り儂から力を付与しておいた。
といっても、儂も自然の摂理に逆らうことは禁止されている。
だから、不死身だとか、人間の域を超えたものは付いてないから気を付けるんじゃぞ?
「…そういや俺、チート能力をもらったんだっけか。いや、このじいさんの言いぶり…。もしや、そんな強いやつじゃないんじゃ?なら、全然許容範囲内だろ!」
儂のできる限りのことはした。
一覧にまとめたからちゃんと見とくんじゃぞ?
「一覧?…ああ、これか。どれどれ…」
手紙の下の方に一覧がまとめてあった。
「えーと…、ステータスを上昇させる?」
…ステタースて。んな、ゲームじゃあるまいし…。
「…ほう、調整は可能なのか」
「ん?まだあるのか。えーと、これまで編み出されてきた体術が使える」
…俺、武術を極めてるってこと?
武道、舐めんな?
人生かけて技を編み出してきた偉人たちに謝りなさい。
「…ほう、武器も含まれんのか。剣術とか」
俺、包丁すら握ったことないんだけど…、大丈夫?
「え?まだあんの?えーと、これまで編み出されてきた魔術が使える」
…俺、魔術も極めてるってこと?
もう一度言うよ?
人生かけて技を編み出してきた偉人たちに謝りなさい。
「…ほう、基本は火水土風雷か。他にも特殊魔法がある、と」
欲張りセットだなぁ。俺、もうお腹いっぱい。
「…っと、こんなもんか。ほーん」
スゥー…。
「いや、これ……強すぎじゃねーかっ!?」
これくらいが限界じゃ。すまんのぅ。
「いやいやいや、十分すぎるよ?じいさん、自重って知ってる?」
伝えるべきことはこれくらいかの。
この先、儂はもうおぬしに干渉することはできん。
一人でもがんばるんじゃぞ。
最初は、西に進んだ先にある村に行くとよい。
その村がここから一番近いはずじゃ。
それでは、おぬしの行く末に幸あらんことを!
神より
「…はぁ。神様ってすげーなぁ」
あまりに過剰すぎる力を前にして、俺は…
「よし!きれいに封をし直して、しまっておこう!」
見なかったことにしました。
―だがユミトは見落としていた。
手紙には二枚目があったことに。
改訂しました
追記
この作品がなろうで初投稿なので、何度が修正入るかもです。