第9話 プチ有名になったゴン
ベテラン達と20階層の階層主を倒して帰った俺はプチ有名になった。変なゴーレムを連れた変な奴から頼りに成るゴーレム使いにランクアップしたのだ。まあ、信用が出来たって感じかな。そして俺の評判を聞いた中級冒険者達が俺を荷物運び兼前衛として雇ってくれる様になった、日給も前の1万ゴールドから1日12000ゴールドまでアップしたのだ。これで毎日働けば金持ちになれそうだが・・・・・・勿論俺は毎日等働かない、週に2日も働けば十分だ。そもそも野宿なので月に食費が1万ゴールドあれば生きて行けるのが俺の強みなのだ、それに異世界って消費税や各種税金が無いので食べて行くだけなら元の世界より簡単なのだ。大体週に2日も働けば生活出来るのが異世界って奴なのだな、だからこの世界の人間達は表情に非常に余裕が有る、そして異世界から転移してきた連中も元の世界に帰りたがる連中は1割位しか居なかった、元の世界に帰りたがってる連中は向こうで金持ちだった連中だ、つまり遊んで暮らしたい連中だな。
「お~い、ゴン。出来たか?」
「出来てるけどな~、どうだろうな?」
この前のダンジョン攻略で仲良くなった魔法使いの爺さんから乗れるゴーレムを造る依頼を受けたのだ。確かにこのゴーレムが造れれば買う人間は多いだろう、量産出来たら俺は金持ちになるだろうな。
「お~! 乗り心地がよくなっとる。凄いぞゴン!」
「まあ、色々改良したからな・・・・・・でもな~・・・・・・」
乗車型ゴーレムの依頼を受けた俺は、8本足ゴーレムの改良をちょこちょこと行い、この乗車型ゴーレムを造った、乗り心地を良くするために足にサスペンションを付けたり、跨る部分に布を巻いて乗り心地を良くしたり、足を置くための板を取り付けたりしたのだが。問題が一つあるのだな、ゴーレムだけに。
「うお! なんじゃコレ! 動け、動け! 動け!」
「あちゃ~! やっぱりな」
爺さまの乗ったゴーレムは動かなかった、まあ当たり前だな。俺が命令しない限りゴーレムは動かないし、他の人間の命令は絶対に聞かない。つまり俺以外の人間には扱えないのだな。これで俺のゴーレムを量産して大儲けするっていう未来は無く成ったわけだな。
「すまんな爺さん、やっぱり俺の命令しか聞かないみたいだ」
「良く考えたらそうじゃな、ゴーレムがほいほい他人の命令を聞いたら困った事になるわな~」
爺さんに売れなかったので俺のお付のゴーレムが2体に成った、順番から言えば4号機だな、また俺の戦力が増えてしまった。4号機にも毒矢のランチャーを積めば又戦力になるな、疲れたら乗れるし。
ゴーレム2体を連れた俺は戦力不足の中級冒険者の助っ人として周2日働く生活を続けた、そして半年程経った時には3号機は大型化して肩の槍のランチャーは12連装になり、更に突撃時には大型の杭が前方に出る様になっていた、そして4号機も同じく大型化して左手に盾、右手に槍。そして勿論肩には4連装毒槍ランチャーが付いていた。どの位強いのかと言えば、俺と2体のゴーレムで20階層の階層主のオーク5体と良い勝負が出来る位の強さだった。
週に2日働いて、後の5日はゴーレムの改造をしたり、ボ~っとしている生活は何故か妙に楽しかった。あっという間に時間が過ぎて、朝起きたくないとか、仕事したくないな~、等と思う事がない程充実した毎日だった。ボッチとは言っても週に2日は他人と働いているので孤独とかは思った事は無かった、まあ2~3年位なら他人と話さなくても平気だし孤独とかはまだ食べた事は無いので、それが何かは解らなかった。
そしてたまたま街にゴーレムの素材を買い出しに行って、ついでに昼ご飯を食べに行った食堂で彼女達と出会ってしまった。
「へえ~、鰻をちゃんと焼けるとは珍しいな。この店の料理人は本物だな」
最近は結構稼いでいるので、異世界人がやっている食堂で鰻の蒲焼を食べていた。タレを付けて焼くだけと思っているうなぎ屋が多くて異世界ではウンザリしていたのだが、この店の職人はチャント皮はパリっと焼き、中はジューシーと言うちゃんとした焼きが出来る一人前の職人だったので美味かった。異世界では不味い癖に高い店が増えてウンザリしてた事を思い出したのだ、味覚の無い評論家の多かった事を思い出して苦笑いだな。
「あの・・・・・・あの、すいません。ゴンさんですか?」
「違います」
チラリと見ると、目つきのキツい美人さんと、優しそうな顔の巨乳のお姉さんが話かけて来た。知り合いでも無いし、大体俺に興味を持つ女は変わり者が多いのだ、異世界で嫌という程思い知った俺は女性にはなるべく関わり合いにならないようにしているのだ。今、折角ノンビリ生きているのに、厄介事は御免なのだ。
「お願いします、私異世界から来たんです。助けて下さい」
「・・・・・・」
何か罪悪感を感じる、助ける義理は全然無いのだけど。2人とも結構良い女なので、売られたり酷い目に有ったりする確率は結構高いかも知れない。2人に戦闘系のスキルでも有れば何とかなるかも知れないが、2人を襲うくらいは簡単なのだ、少なくともプロの連中に掛かればこの2人では対抗出来ないだろうしな。
「話を聞くだけなら・・・・・・俺に出来そうなら助けるけど、大した事は出来ないぞ」
「「有難うございます!」」
2人の話は無茶な事は無かった、要は生活が苦しいのだそうだ。特別なスキルが無いので、今は住み込みでウエイトレスをしているがお金が全然貯まらないって話だった。
「日当5000ゴールドねえ、それって普通なの?」
「普通らしいです、宿代が3500ゴールドで、食費が1500ゴールド。つまり生きてるだけです」
「あちゃ~、そりゃあ辛いな。少しは残らないと将来詰むぞ」
「もう詰みそうです、服もボロボロに成って来たし、もう体を売るしか無いかなって。でも異世界の人に売るのは怖くって・・・・・・」
何か結構ヘビーな話に成って来た、何処ででも生きれる俺は平気だが、戦闘力の無い女性に異世界はいささかハードルが高い様だった。つまり、彼女達は切羽詰まって俺に体を売りに来たって話だった。最近俺は異世界人としてプチ有名に成って来ていたので、彼女達の耳に俺の噂が入ったのだそうだ。
「う~ん、それで少し痩せてるのか。そう言えば服も何だか・・・・・・」
「「・・・・・・」」
みすぼらしいと言おうとしたが2人が下を向いて目に涙を一杯溜めているので、気を使って誤魔化す事にした。
「まあ何だ、2人とも好きな物食えよ。奢るぞ」
「「ええ! 本当ですか!」」
「いやまあ、飯を奢る位の金ならあるから心配するな」
お腹が減っていたのか2人は良く食った、うな重を3人前平らげたのにはたまげたが、まあ女って男より余分に食う奴が多いしな。まあ食欲が有るのは良い事だ、快食快眠こそ人生で一番大切な事だからな。
「ごちそうさまでした! スイマセン沢山食べちゃって」
「気にするな、その位の甲斐性は有るから。それに生活の方も何とか出来るかもしれん」
「「本当ですか! 是非お願いします!」」