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異世界をゴーレムと伴に歩む  作者: ぴっぴ
第1章 ゴーレム使い放浪編
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第7話 ダンジョン突入 (バイト1日目)

 次の日は快晴だった、雨に濡れながら歩くより余程気持ち良い、天気が良ければ雨の日よりはツイている感じがする。


「ワハハハ! 今日も晴天だ、俺はツイテル男だぜ!」


 勤務初日なのでテンションは非常に高い、勤務初日は知らない他人たちと顔を合わせるので期待と不安で精神状態が不安定なのだ、まあ転職しまくったから慣れてるんだけどね。


「おお、来たか! 時間通りだな」


「5分前行動は異世界の常識ッス、そして何時もニコニコ現金払いが俺のポリシーです」


「・・・・・・え、ああ、そうなんだ」


 集合時間5分前にダンジョン前に着いたら、昨日のおっさんと仲間らしき人が2名居たので早速挨拶する。何事も最初の印象が大切なのだ、何度も転職を繰り返して暗記している台詞を仲間達の前でぶちかます。


「自分はゴンって言うものです、ゴーレム使いをやってます。成れないダンジョン探索ですけど頑張りますので宜しくお願いします」


「おお、なかなか礼儀正しい若者じゃな。儂は魔法使いのオンジじゃ、宜しくな」

「俺はシーフやってるサードだ、宜しくな」

「そして俺がリーダーのクランだ! 宜しく頼むぜゴン」


 リーダーのクランさんは身長170cm位で筋肉隆々の斧使い、魔法使いのオンジさんはかなり高齢の痩せて背の高い人、そしてシーフのサードさんはリーダーと同じ位の身長だが痩せて素早そうな人だった。俺は魔法使いのお爺さんが居る事で安心した、ブラック企業には高齢者の従業員は居ない、それはつまり皆辞めちゃうからだ、高齢者が居るって事は大してキツい仕事が無いって言う事を意味するのだな、うっすらと残る異世界の知識がそう俺に語りかけていた。


「それじゃあ皆さん、荷物を渡して下さい。俺のゴーレムに積みますから」


「ほほう、なんか変わってるな」

「これがゴーレム?」

「ゴーレム? 何か変じゃね!」


「ふふふふ、これこそダンジョン探索に特化したゴーレムなのです! 足が8本も有るので安定性と走破性能は抜群、更にミノタウロス型にしたお陰で人と同じように腕まで2本付いていますから、軽い荷物も持てるし、腕でバランスも取れると言う優れ物なのです!」


「「「ふ~ん」」」


 初めて見る俺の8本足ゴーレムを見て仲間の冒険者達はイマイチの反応だった、そりゃあまあ見た目が悪いのは俺も自覚している。ゴーレムの定番って泥とか石で出来た人型が一般的なのだから仕方ない、世の先駆者って奴は大概こう言う扱いを受けるのだ。だが見た目を捨てて実用性に全振りしたこのゴーレムは役に立つハズだ! いや何が何でも役に立たせて見せる! じゃないと俺が非常に惨めな気分に成ってしまうのだ。

 リーダーから50キロ程の荷物を受け取って俺はゴーレムの背中に紐で縛り付けた、ゴーレムの背中は荷物を載せやすい様に平に造っているのだ、ついでに紐を掛けられる様にフックも標準装備の優れ物なのだよ。


「さて行きましょう!」


「「「おう!」」」


 今回の冒険者達は中々やるようだ、年齢的にいってもベテランなのだろう、何せ俺に全ての荷物を持たせる様な事はしなかった。これが駆け出しの冒険者だったら武器以外の荷物を荷物持ちに全て持たせようとするのだな、何故全ての荷物を持たせるのが阿呆な事かと言えば、探索中にはぐれたり置き去りにされた時などに非常に困った事態に陥るのだ、だからベテランの兵士や冒険者は最低限の荷物は必ず身に付けて冒険するのだよ、まあこれも異世界で兵隊をしていた時の知識なんだがな。


「暇っすね」


「まあな、5階層位までは初心者の狩場だからな」


 ダンジョンに入ってきたが、魔物よりも冒険者の方が多いので、戦闘にならない。たまにゴブリンが出るが、初心者冒険者達が囲んでボコるので、ベテランは手を出さない決まりなのだ、だから俺はオッサン達と話しながら歩くだけのお仕事だった。暇なので世間話等をしながらノンビリ歩いていく。本番は10階層突破からなのだそうだ、予想していたのと全然違うがまあ毎日戦闘だと疲れるからこれはこれで素晴らしいな、日当は同じだしな。


 流石はベテラン冒険者達、9階層までは散歩気分でやって来た。次はいよいよ節目の10階層。ここにはゴブリンが5匹出てくる、まあゴブリン5匹位なら俺一人でも瞬殺なのだから4人も冒険者が居れば何という事もなく突破する、散歩の途中でラジオ体操をするのと同じ位しか疲れない。


「よ~し、ここからは11階層、オークが出てくるから注意してくれ」


「「「ウ~ス!」」」


 ゴブリンは小型の魔物なので棍棒で殴られても痛いだけだが、オーククラスからは人間と同じか少し力が強いので棍棒で殴られると痛い位では済まなくなってくる。当たり所が悪いと死ぬ事も有るし、囲まれてタコ殴りにされると死んじゃうのだ。だから11階層からは初心者冒険者には無理な階層だった、ここからは本物の冒険者や兵士達の狩場になるのだ。一瞬の油断が死に繋がる場所だな。


 カチ・カチ


「オークが2匹来ます」


「えっ? 何で分かるんだ?」


「俺のゴーレムが合図してますから」


「あのカチカチ音が魔物発見の合図なのか?」


「フフフフ、どうです! 凄いでしょ! 俺の自慢のゴーレムです」


 俺のゴーレム3号機・改は指を使って音を出せる様にした、指を鳴らす回数で相手の数まで教えてくれる優れ物なのだ。


 不意打ちさえ受けなければこの冒険者チームは強かった、リーダーは独りで3体位のオークと戦えるし、シーフのサードさんも独りで2体のオーク位なら勝てる様だ。そして魔法使いの爺さまの火力は物凄かった、中級魔法一発でオーク3体を丸焼けにする程の火力を誇って居るのだ。


「オンジさんの魔法凄いッス! 半端ね~ッスね!」


「そうじゃろ、そうじゃろ。儂の若い頃は・・・・・・」


 爺様の魔法を褒めたのが間違いの元だった、恒例の儂の若い頃から始まった昔話は、年齢が年齢だけに物凄く長い自慢話になったのだ。


 そしてその日の夜位には19階層まで来てしまった、リーダーも予想外の速度だった様で、このまま20階層を攻略するには疲れて居たので、このまま野営して明日20階層を攻略する事になった。ここまでの距離はダンジョン入口から大体20キロ位かな、まあ戦闘が何度か有ったが、全て瞬殺なので何という事もなくやって来てしまった感じだった。


「ゴーレムのお陰で早いな、それに全然疲れない」


「荷物なしでダンジョン探索は楽で良いな、次も頼むぜゴン!」

「本当に楽じゃな、年を取ると荷物を持って歩くのが戦うより疲れるんじゃよ」


「そうでしょう、そうでしょう。私のゴーレムさえあればダンジョン攻略は散歩に早変わりです、すべてゴーレム使いの私に任せて下さい」


 こうして冒険者達の役に立つ事を証明した俺は彼等に受け入れられたのだ。



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