第43話 人材を捜すのだ
貴族の位はどうでも良いが、領地を貰ったので困ってしまう。何をどうしたら良いか全然分からないのだ、勿論ココアも知ってる訳は無い、知っていたらビックリだな。
「ココア、領主って何するんだ?」
「美味い物食って、寝る人? あとは威張っとけば良いんじゃ無いかにゃ? 知らんけどにゃ」
「それは落ち着いた後の話だな、多分最初は忙しいんじゃなかろうか? 知らんけど」
そもそも貴族が何かも知らないし、領主なんてもっと分からない。平民生まれの俺は両方共に偉い人としか認識していないのだった。自由騎士や男爵と言う爵位も持っているのだが、此れは洒落で貰ったナンチャッテ爵位としか思って居なかったのが俺の本音だった、だって給料貰って無いからな。困った時の異世界知識なのだが、異世界の知識では貴族なんてものは無かったので、これまた何の役にも立たない、ハッキリ言えばお手上げ状態なのだな。
「仕方無い、分かる人に聞きに行こう」
「どこ行くのにゃ?」
「自由都市フリーデン、あそこの領主様に聞けば何か分かるハズだろ。最低でも真似すればそんなに悪いことには成らないと思う。それに焼きそばのソースとか異世界の名物を買って帰ろうぜ、領民達へのお土産だな」
「それは良い考えだにゃ、美味しいものを買って帰れば皆が喜ぶにゃ。ウチ達の評判も上がって一石二鳥って訳だにゃ」
俺は自分を善人だとは思ってないが、悪人でも無いと思っているので領主になったら、他の領主に負けないように普通のチョット上の領主を目指そうと思う。何故か人生って真ん中辺りが一番楽な様な気が強くするのだ、俺の異世界知識がそう言ってるのだから間違い無いハズ。
で、やって来ました自由都市フリーデン。門番さん達は俺達の事を覚えていてくれたのであっさりと都市の中に入っていけた。そう言えば俺この都市の騎士だったんだわ、直ぐに忘れる俺と違って他の人は記憶力が良い様だ。そして領主様の館に行って面会の予約を取って宿屋に泊まる。面会の日にちが決まったら宿に連絡して貰う様に頼んだので俺達はゆっくり街を見物出来るハズだ。この都市には知り合いが多いので挨拶回りが地味に大変だったりするので時間が貴重なのだ。
領主様の面会が次の日の夕方に取れたので、今日は俺の最大の懸念である異世界の調味料の確保に頑張る事にした。そしてココアには冒険者ギルドに行って貰い、ギルドの支店を俺の領地に造って貰える様に交渉して貰う事にした。ココアは馬鹿だが交渉事には意外と俺よりも上手かったりするから不思議なもんだ。
「なあ、なあ良いだろ。ほんのチョットだけだからさ」
「え~、遠すぎますって! ドワーフ王国の外れってここからだと1ヶ月掛かりますよ! 輸送費だけでも赤字です」
俺は今異世界人と交渉中、俺の領地に何としてでも異世界の調味料や食材を置く店を確保したいのだ。
「大体人口1000人程度では商売は成り立ちません! 商売舐めてるんですか!」
「支店で良いから、焼きそばのソースとか調味料とか、醤油とかが欲しいんだ。同郷の人間を助けると思って頼むよ、無税にするからさ」
「嫌です! 諦めて下さい」
「はふ~、駄目か~。仕方無いよな、田舎だし」
「何してるにゃ! まだ交渉してるのかにゃ?」
「駄目だったよココア、交渉失敗しちゃった」
「ウチに任せるにゃ」
異世界人と店先で交渉していたのだがやはり駄目らしい、儲からない所では商売したく無いのだそうだ。まあ当たり前だよな、損してまで商売は出来ないしね。でも、ココアはやる気満々って顔をして交渉する様だ、でも無理だと思うんだよね。
「ウチの領内に店を出さない気なのかにゃ?」
「申し訳ないですが儲からないので出せませんよ」
「ほ~、いい度胸だにゃ。貴族様がわざわざ誘いに来てやったのを断るとは凄い度胸だにゃ! 命が惜しく無いようだにゃ」
「何ですか脅す気ですか!!」
「脅しじゃ無いにゃ、事実だにゃ。ドワーフ国の子爵様の誘いを蹴って、この国の男爵様を馬鹿にして、そして冒険者ギルドのAクラス冒険者を馬鹿にしたんだから、この店は終わりだにゃ。これから毎日冒険者が店先で暴れて、ドワーフ達から無視されて貴族達から嫌がらせをされる運命だにゃ」
「おいおい、ココアそれは幾ら何でも・・・・・・」
「煩いにゃ! ゴンは黙っとくにゃ!」
「・・・・・・へい」
俺は交渉して説得しようと思って居たのだが、ココアは説得する気が無いようだ。この世界の流儀に沿って力ずくで意見を押し通すつもりみたいだな。まあ、俺が舐められたのだろう、普通の平民は貴族に逆らったりはしない、命が惜しいからな。
「・・・・・・分かりました、店を出しますから」
「ふふん、最初から素直にそう言えば良いんだにゃ。貴族を舐めると痛い目に合うにゃ、長生きしたかったら良く覚えておくと良いにゃ」
「・・・・・・はい」
そう言えば俺達異世界人って奴は人間が平等だとか言う変な洗脳を受けて居るので、この世界で結構な数の人間が処刑されているらしい。郷に入っては郷に従うって言う基本的な事も理解出来ない人間は簡単に早死するのがこの世界って奴だった、俺は異世界の事を薄らとしか覚えて居ないから助かったが、俺も運が悪ければ既に死んでいたかも知れないな。
「ココア、冒険者ギルドの方は上手くいったのか?」
「勿論だにゃ、貴族でAクラス冒険者のウチらに逆らえる奴は居ないにゃ。ゴンは自分の立場が分かって居ないにゃ、もっと強気で行くのにゃ」
「そんなモンなのかな~?」
俺は敵には容赦しないが敵じゃ無ければ大甘なのだ、やはりこれって異世界人の甘さが残っているって事なのだろうか? やっぱり俺って甘いのかも知れないな~等と考えたりさせられる事案だった。
そして次はドワーフの親方の工房へとお邪魔する、俺の領地にドワーフの工房が有れば領民や俺が非常に助かるのだ。
「ウッス! 親方お久しぶり!」
「おう! 誰かと思ったらブラザーじゃね~か。どうした? 何か注文か?」
「注文もあるけど、今回は親方達の勧誘だな。ドワーフ国の外れに領地を貰ったから店を出し手欲しいんだよ」
「良いぜ、最近忙しすぎて逃げ出そうって思ってたんだ。田舎ならノンビリやれるだろう」
ドワーフの親方は疲れきっていた、リボルバーカノンだけではなく拳銃タイプの注文が貴族や商人達から入って来ているので最近は休みがないのだそうだ。余りにもきついので夜逃げをしようかと皆と相談していた所ろだったらしい。
「金はいっぱいあるんだけどな、使う暇がね~んだよ。おかしいだろ! 何かが間違ってるよな」
「そりゃ変だな、あそこの連中は暇が有れば温泉に浸かったり、綱引きしたり相撲して遊んでたぞ。まあ、金は持って無かったけどな」
「このままじゃ過労死しそうだから、適当に働いたらゴンの領地に引っ越すぜ。いい場所を開けておいてくれ」
「場所は幾らでも有るから好きな所に工房建てて良いぞ、ついでに1年は税金免除にするぜ」
「よっしゃ契約成立だ! 兄弟」
俺とドワーフの親方はガッチリ握手して契約は成立した。ドワーフは例え口約束でも必ず守る、これが技術者としての矜持って奴なのだ。
そして次の日に領主様との会談が行われた、領主様は人族の貴族としては俺よりも上位で有るのだが俺はドワーフ国の子爵位も持っていて更に領地持ちなので扱いに困っていた。
「いやはや、ゴン君。いや、ゴン殿。良く参られた」
「あっ、領主様。何時も通りゴンで良いです、話難いですから」
そして領主様に領地の経営や統治の方法を聞いてみたのだが、流石領主様って頭が良いのだと思っただけだった。
「実際の話、現地を見てみないと統治の方法は決められ無いよ。場所も住んでる人間も人族の人達とは違うからね、無理な政策は反発を招くだけだよ」
「それもそうですね、現状維持から徐々に良くして行くのが現実的なんですかね?」
「徐々に良くして行った方がゴン君の評判も上がって統治しやすいと思う。それに住民が全部で1000人程度ならここの統治の方法とは違った方法が有効だと思うよ」
「有難うございます、参考になりました。ついでに統治の事に詳しい人を貸して下さい、恩に着ますから」
「良いだろう、ゴン君と仲良くしとくと色々と有利だからね。多分兄上も協力したがると思うよ、ゴン君は色々と興味深い人間だからね」
領主様は凄く協力的だった、元々俺と領主様は非常に仲が良いのだが、俺がドワーフ王国の貴族と成った事で更に俺に価値が出てきたのだそうだ。その後の会食には俺の出世を喜んでくれる異世界人の仲間が集まってくれた。領民が少ないので、やる気がある人間は歓迎すると言った所、何人かの異世界転生者が俺の領地に来てくれそうな感じだった。実際には今ある仕事や成れない環境の変化等が有るので余程思い切りの良い人間しか来ないとは思うが、話が通じやすいので俺としても歓迎したい所だ。




