第39話 クラーケンを退治せよ! その1
俺とココアは海の魔物については全く知識が無いので村人にクラーケンの事を聞いてみた。クラーケンはイカの化物で大きな個体だと全長が40mもあるのだそうだ、もっとも足の部分の方が長いので頭の部分は15m程だという。そして大木の様な太さの10本の足で船を海中に引きずり込むのだそうだ、因みに討伐レベルAランク、非常に討伐が難しい魔物なのだそうだ。
「陸に引き上げるにゃ! 引き上げれば後はゴンが何とかするにゃ!」
「うむ、その通り。何せオレは自由騎士! 正義の味方だからな!」
「「「「えええ~! ゴンが自由騎士さまだと~!!」」」」
素朴な村人達が驚いていた、中には俺を拝んでいる年寄りもいる。それを見て俺の遊び心がムクムクと首をもたげてくる、娯楽が少ない村人たちに話題を提供せねばなるまいて。
「ふはははは、それだけでは無いぞ! 吾は男爵でも有るのだ!」
「「「「ウヒャー!!! お貴族様だと~! ナンマンダブ! ナンマンダブ!」」」」
自由騎士が受けたのでオレは男爵の地位を保証するナイフと奥にしまって有ってクシャクシャに成ったマントをはおり更に村人達を威嚇した。すでに村の年寄り連中は土下座して念仏を唱えている。
「ふふん!更にこれを見よ! 吾はドワーフのブラザーでも有るのだ!」
「「「「ぎゃあああああ~! この世の終わりだ~! 俺達は全員殲滅されるんだ~! 神様お助けを~!!!」」」」
なんか凄い反応だった、オレは嬉しくなって更に調子に乗る、こうなったオレは誰にも止められないモデラー魂が叫んでいるのだ! 更に調子に乗れとな!
「まだまだ~! これを見よ! 更に吾はAクラス冒険者でも・・・・・・イテっ!」
「いい加減にするにゃ! 話が全然進まないにゃ! 村人を脅してどうするつもりにゃ!」
娯楽の少ない村人たちに話題を提供してやろうと頑張ったのだがココアがご機嫌斜めになってしまった、あいつは食物に関係する事では気が短いのだ。そして食物の事になるとマジギレするので怒らせてはいけないのだな、長い付き合いだからオレはよく知っているのだ。しかし残念だ、Aクラス冒険者のタグと他にも冒険者組合の5%割引メダル等も持っていたのだがな。
「うむ、少し調子に乗ってしまった様だ、我が間違っていた。ゴメンナサイ」
「「「ひえ~! とんでもございません! 悪いのはオラたちです! 頭を上げてください男爵様!」」」
普通の貴族は頭を下げたりはしない、威厳に関わるのだ。しかし俺は頭を下げるぐらいで済むなら幾らでも下げてやるのだ、タダで物事が収まるなら安いものだからな。いやいや、今はそう言う話ではなかったな、クラーケン退治について話さなくては。
そして色々と漁師達と話をした結果、浅い所までクラーケンをおびき出して。ロープ付きのモリを打ち込み引き上げる事に話がまとまった。中々良いアイデアだと思う、魔物って奴は何故か肉食なので、魚のぶつ切り等を浜辺から海に投げ込めばクラーケンが来る可能性が高いそうだ。
「良し! 皆の衆、クラーケン討伐作戦開始だ! 各員の奮闘努力に期待する」
「「「「オオオオォォォォォォ!」」」」
次の日からは対クラーケン用の大型モリの製造、そして引き上げる為に村人たち全員で綱引きの訓練が始まった。俺は実はクラーケンを船からの爆雷攻撃で仕留めようかと思って居たのだが、良く考えてみたら、爆雷が海に落とした瞬間に爆発したりしたら間違いなく俺が死んでしまうので、やらなくて良かったと思う、多分こっちの作戦の方が安全なのだ。
「よ~し皆並べ~! 綱引きの訓練をするぞ~! 全力を出すように!」
村人たちの中の手先の器用な連中が対クラーケン用のモリを制作している最中に俺達はクラーケンを引き上げる特訓を開始する、村人全員が一丸と成って、愛と勇気と友情の力で魔物を討伐するのだ。
「はいはい、全員並んで下さい。綱引きのコツは大丈夫ですね! 合図をしたら開始ですよ~」
「「「了解です! 男爵様!」」」
綱引き、それはタダ綱を引っ張る競技だ。見かけはシンプルだが実はかなり奥が深い競技なのだ、勝つためのテクニックは色々有るのだが、掛け声を掛けてまとめる人間が絶対に必要、そして大まかに引くのでは無く小刻みに力を合わせて引く為の色々な技術が有ったりするのだ。そして今回の綱引きは村人の特訓の為なので、村人全員対ゴーレムなのだ。村人40人の平均体重は子供や年寄りまで含めての数なので平均体重は40キロ位、つまり40人掛ける40キロで1600キロ。ゴーレム1体の重量は約1500キロなので重量的には互角なのだ、重量的にはな。
「よ~し! 引け~!」
「「「「オオオオォォォォォォ~!!!」」」」
村人40人が一斉に綱を引っ張っている、中々の力だ。俺のゴーレムが少し引きずられている、1トン半のゴーレムを砂の上で引けるのだから大したものだな、だが甘い! 甘すぎるのだ!
「ゴーレム!」
「「「うわあああ~!!!」」」
俺がゴーレムに魔力を注ぎ込むと村人たち40人を軽々と引っ張るゴーレム、1トン半の巨体と8本足は伊達では無いのだ、人間ごときが俺様のゴーレムに対抗出来る等と思わないことだな。
「ワハハハ~! 無駄! 無駄! 無駄~! ムウ!」
「負けるにゃ! 根性出すにゃ~!」
「「「「「オオ!!!」」」」
村人達をゴーレムで引きずっていると、何故か観戦していたココアや山の町の連中が乱入してきた。ドンドン人が集まってきて俺様のゴーレムが負けそうだ。
「うぬ~! 汚いぞ! 人間め!」
「にゃに魔王みたいな事言ってるにゃ!」
いかんいかん、観客が皆村人の方へ行って手伝っている、今では100人くらい居る様だ。俺の自慢のゴーレムがズルズルと引きずられている、このままでは負けるではないか。
「負けてたまるか~! ゴーレム追加!」
「ニャに~! 大人気無いにゃ!」
ゴーレムを追加して2体にした俺は更に魔力を全力で注ぎ込む、魔力の急激な減少で頭がクラクラするが、意地でも負ける事は許されない、ゴーレムに敗北と言う文字はないのだ。しかし何処から湧いて出たんだこの連中、暇つぶしに俺達の訓練を見に来た連中だろうが、多すぎるだろ! 負けちゃうじゃないか。
ブチン!
「「「「「うわああ~!!!」」」」」
あまりの白熱した試合の為に、綱が切れてしまった。太さ10cm程も有る綱が切れるとは思わなかった、こいつらどんだけ力を込めたんだろう、本気過ぎるだろう。
俺は田舎を舐めていた様だ、暇を持て余してる連中が大勢いて、面白そうな事を見逃すハズは無いのだ。そう言えば田舎ってやたら祭りが多くて、オマケに何故か全員参加だったりするのだ。
「よ~し、今日はこれぐらいで勘弁しておいてやる」
「明日は負けね~ぞ、町の連中呼んでくるからな!」
「明日が本番だぜ! 今日は練習」
物凄いやる気を見せる村人達、すでにクラーケンの事は頭になく綱引きの事だけを考えている様だ。だが俺も負けるわけには行かない、明日は屋台ゴーレムも動員して3体のゴーレムで村人達をギャフンと言わせてやるのだ。3体合わせれば5トン位になるので100人位の大人達と良い勝負に成るハズだ。
しかし良い訓練だった、1本のツナではクラーケンを引き上げる事は出来ないかも知れない。クラーケンが重すぎると綱が切れてしまう可能性がある事が分かったのだ。だから実戦では複数のケーブル付きのモリをクラーケンに打ち込んでケーブルを引く必要が有るだろう。問題点をあぶり出しそして実際の訓練にも成ると言う実り多い訓練だったな、流石は俺が考えた訓練だけの事は有った様だ。




