第32話 新型兵器の実演と威力
「よくぞ聞いてくれました! 実は今、新兵器の開発をやってます」
「「「新兵器?」」」
「ジェネラルオーガを瞬殺出来る武器を現在開発中なのだよ私は、現在ドワーフの兄弟達が50人体勢で24時間開発しているのだ」
「ほう、私にも見せてもらえるかね? 領主として街の防衛に役立つならば興味が有る」
「よろしいでしょう、本来は秘密なのですが領主様には特別に、ト・ク・ベ・ツ・にお見せいたしましょう」
大事な事なので2度言って特別って所を強調する、俺は何としてでも金が欲しいのだ。本当は教えたくないのだからねって言うプレミア感が他人を巻き込む時に大変重要なのだ。何故か人間は特別扱いをしてもらうと喜ぶ奴が多いのだ、多分心の何処かに自分は特別だって思って居る者が多いのかも知れないな。
そしてその日は宴会が終わり、俺とココアはゴーレムハウス。モモ子と母親は領主様の屋敷に泊まらせてもらった。そして次の日に俺の新型兵器のお披露目を行う事となった。
「何処まで行くのかね? ゴン君」
「何分秘密兵器ですので人の居ない所で実演させてもらいます」
領主様の馬車を先導しながら俺とココアはゴーレム2体に乗ってトコトコと森の中に入っていく。簡単に真似出来る様な兵器では無いのだが、一応出来上がるまでは秘密にしておきたいのだ。それにこの兵器が量産される様になれば歴史が変わる可能性だって有るのだな。
「じゃあ、この辺でやりますか」
「じゃあ準備するにゃ」
ゴーレムに積んでいた荷物を下ろして準備をする。下ろしたのは兵器の的になる革の軽鎧をきたカカシと金属のフルアーマーを着たカカシの2体。これを的にする事で新型兵器の実力を領主様に見てもらうのだ。
「領主様、性能を話しても実感が沸かないでしょうから、実際にこの兵器の力を見て下さい」
「うむ、説明を聞いても私には良く分からないね。作用や反作用とか衝撃力とかサッパリだよ」
銃器を知っている異世界人なら兎も角、この世界の人に銃の性能を説明するのは難しい。俺が魔法の原理を聞いてもサッパリ分からないのと同様だ。実際に目で見てもらうのが一番てっとり早いのだ。
「行きます! 大きな音がしますのでご注意下さい!」
右の腰に装着していたリボルバーを引き抜いて構える、異世界のピースメーカーよりも一回り大きくて重い。6インチのマグナムを少し超える位の重さで1キロ半程は有る。そして革の軽鎧を着たカカシに10m程の距離から発泡する。
ドオオオ~ン!
「うお!!」
森の中に鳴り響く轟音、領主様は初めて聞く銃器の音に驚いていた。
「凄い音だね、その新兵器」
「ふっ、音だけじゃ有りませんよ領主様。カカシをご覧下さい」
的にしたカカシの胸の所に人差し指が入るほどの穴が開いていた、金属の弾丸が革の鎧を軽々と貫通した後だ。人間なら死ぬか倒れるかしている所ろだろう。
「何と! これ程とは・・・・・・」
「これは携帯用の兵器です、人間やハイオークまでなら通用するでしょう」
今見せたのは拳銃タイプの試作品、リボルバータイプなのでシリンダー部分から盛大に発射ガスが漏れるのでかなり大型化して造っている。口径で言えば50口径位になるのかな、これも技術力が足りないので大型化する事で威力を上げているのだ。
「次行きますね、今度はオーガに通用する奴です。前の奴より大きな音がしますよ」
「分かった、耳を塞いでおこう」
背中に背負っていた長ものをカカシに向ける、今度は金属のフルアーマーを着せたカカシの方だ。今度の長ものはショットガンに形は似ているが拳銃用のリボルバーのシリンダーよりも長くて大きなものが着いて居る。弾薬の長さは10cm、口径は拳銃と同じく50口径程。拳銃と同じ口径なのだが、弾丸が大きくて威力が段違いに上がっているので片手で撃てない為に小銃型にしているのだ。
ズドオオ~ン!
拳銃を上回る轟音と銃口から伸びる30cm程の炎、腹に響く轟音と銃口からの火炎に驚いた領主様は身を固くしていた。そして領主様の馬車を引いていた馬たちが驚いて騒いでいた。馬って奴は臆病な生き物なので大きな音を聞くと、恐怖心を抱いて逃げようとするのだ。
「どうです? 領主様」
「フルアーマーを貫通するとは、何と言う恐ろしい兵器だ。人間相手なら無敵ではないか」
「だから秘密なんですよ、戦争のやり方が変わってしまいますからね」
「うむ、納得したよゴン君。これだけの新兵器、秘密にする訳だ」
これが大量生産されて兵士に持たせたならば、騎兵等は簡単に蹴散らされるだろう。そしてこの世界の戦争で大きな役割を果たしてきた魔法使いや一般兵は唯のカカシに成ってしまうだろう。これはそれ程の可能性を秘めている兵器なのだ。ただしそれはこの兵器を相手が持っていない場合の事、相手が同じものを持っていれば後は運用と戦術で勝敗が決まる事になる。つまり、兵器を独占出来れば異世界を征服出来るのだ。まあ、俺は世界征服などに興味は無いのでどうでも良いのだが、領主様はこの武器の可能性に気がついた様だった。
「そして最後にお見せするのがこれですね」
「なんとまあ、大きいな!」
最後に見せるのがゴーレムの両脇に装着しているリボルバーカノン、重量100キロを超えるちょっとした大砲だ。口径が30ミリ、弾のサイズは30ミリ×200ミリの大型の弾薬を使うゴーレム専用兵器、これはジェネラルオーガを一撃で倒す為に開発したのだ。
そして再び森に鳴り響く轟音、近くに居ると地面が揺れた様な感じがする。発射炎は銃口から1m程伸び、あたりが見えない程の煙も吐き出すのだ。そしてその威力は凄まじく、フルアーマーを着せたカカシは消し飛んでバラバラに成ってしまった。
「な・な・なんだこれは! 中級爆裂魔法並の威力だと・・・・・・」
「な~んだ、中級魔法程度ですか」
「何を言う、中級爆裂魔法を使える魔法使い等。国中探しても片手で数える程しかおらんのだ」
領主様を驚かせようと思っていたのに、俺のリボルバーカノンの威力は中級爆裂魔法並の威力しか無いらしい。正直言ってガッカリだよ。でもまあ口径を上げたり弾頭を爆発させたりすれば幾らでも威力を上げられるので、将来的には上級爆裂魔法並には出来るだろう。目指せ上級って奴だな。
こうして俺の新兵器のデモンストレーションは終わった。そして領主様は凄く難しい顔をして黙って馬車に乗って屋敷へと帰って行ったのだった。
「上手く行ったのかにゃ?」
「まあ多分、インパクトは与えられた様な気はする」
そして俺とココアは森で色々な動物や魔物を狩って、食料や魔石を集めて領主様の屋敷に帰るのだった。




