第3話 ゴン大いに荒れる
相棒が死んだ俺はフラフラと街に戻る。何もする気が起こらない、ゴブリン3匹は魔石3個になったので一応冒険者組合でお金に変えてもらった。ゴブリンの魔石は1個1000ゴールドなので3個で3000ゴールドになった、これから相棒を又造らなくてはならないのでお金は貴重なのだ。
「飯でも食うか~」
全くやる気も食欲も無いが、飯を食わないと死んでしまうので冒険者組合の隣の食堂に入る。酒を呑んで紛らす人間も居るだろうが、酒を飲んでも現状が改善されるわけでも、問題が無くなる訳でも無いので俺は酒を飲んだりしなかった。逃げちゃ駄目なのだ常に前進有るのみ、未来に向かって突き進むのがゴーレムに対する供養に成るのだ。
「味がしない・・・・・・」
食堂で自分の好物の定食を食べたのだが、全く何の味もしない。感情が死ぬと味覚も死ぬのだな、久しぶりに感情的になっているようだ。それだけ俺はとってゴーレムは大事だった様だ、ボッチになっても平気だったのはゴーレムのお陰だったらしい。
「ううう、ゴーレム・・・・・・」
悲しみが口から出てくる、俺とした事が情けない。大事な者を無くすと一時的に心が弱くなるのだな、俺もまだまだ苦労が足らない様だ。
「お! ゴンじゃね~か」
「うん?」
どこかで見かけた様な奴が俺に馴れ馴れしく話しかけて来ている、一体誰だ此奴? どっかで見たことが有る様な無いような・・・・・・酒でも呑んでハイな気分なのかとても上機嫌な男だった。もしかして以前一緒に冒険した連中なのかな? まあ10回もクビになったので全然覚えていないのだが。
「珍しく一人か、雑魚ゴーレムはどうしたんだ? ブッ壊れたのか」
「「「ワハハハ!」」」
何だか男の傍に居る3人程の男たちも上機嫌で、一緒に成って大笑いしていた。ゴーレムがいる頃の俺なら、彼等雑魚共が何を言っても気にならないのだが、彼等は運が悪かった。今の俺は猛烈に気分が悪いのだ。
「失せろ! 雑魚共!」
「「「何だと! 半端なゴーレム使いの癖に!」」」
そこからは俺と駆け出し冒険者4人との乱闘である。確かに俺はゴーレム使いとしては半端なのだが、ゴーレムが居ない状態の俺は強いのだ。此れは前世で喧嘩に負けないように格闘技をやりまくっていた成果かも知れない、勝手に体が動いて相手を攻撃するのだ。まあ、自然に体が動くように訓練するのが武道の目的だから当然の事なのだな。
「な・・・・・・なんで!? 何で此奴こんなに強いんだ!」
「覚悟は良いか? 小僧!」
取り巻き3人の膝を破壊し動けない様にして、更に反撃されないように両肘の関節をぶち壊した俺はリーダーらしき俺に絡んできた男に向かってニヤリと笑いかけた。酒など呑んでいい気に成っているから反射速度が落ちて簡単に負けるのだ、そもそも安全が確保されていない場所で酒を飲む様な阿呆は2流の冒険者なのだ。
「お前は死ね!」
「・・・・・・グッ・・・・・・」
相手の喉を掴んで掴み上げる、恐怖に負けた男は弱々しく足をばたつかせるが俺は微動だにしない。右手に力を込めれば首が折れて死ぬだろう。
「おい! そのくらいで良いだろ」
酒場に居た年配の冒険者が流石に止めに入って来た。酒場で冒険者同士が喧嘩するのは良くある事だが、流石に殺し合いになると具合が悪い、殺すならダンジョンの中か人気の無い所って言うのが相場なのだ。
「そうだな」
気絶した男を放り投げ、床に這いつくばって泣いている連中を見下しながら俺は戦闘態勢をといた。たまに暴れるのも気分が良いものだが、弱い者イジメは好きでは無いから微妙な気分だった。
「変わった体術を使うな。武闘家なのか?」
「唐手、柔道、徒手格闘をミックスした戦闘技術だから珍しいかもな」
「ふ~ん、お前さん異世界人か?」
「ああ、異世界人の冒険者さ。まあ、ゴーレム使いなんだけどな」
「「「「ゴーレム使って無いじゃん!!!」」」」
俺達の話を聞いていた他の冒険者達から一斉に突っ込みが入る、俺を中心とした和気あいあいとした雰囲気が生まれて俺はほんわかとした気分に成って来た。気分が良いうちに帰って、気分よくゴーレムでも造るのが賢いだろうと思ったので、食堂を壊した代金は俺に負けた4人に押し付けて食堂を後にした。
「良い事をした後は気分が良いぜ!」
愚かな冒険者達に現実の辛さを教えてやり、更に生かしておいてやったのだ。俺は何という寛容で慈悲深い男なのだろうか! 自分で自分を褒めてやりたい! こうして気分よく俺は何時ものネグラ、街の外に行くのだった。
次の日目覚めた俺は直ぐにゴーレムを造ることにした。やはりボッチって奴は危険なのだ、寝ている間に襲われると流石に簡単に殺られちゃうのだ。まあ裏を返せば敵が寝ている時に攻撃すれば比較的安全に敵をヤレちゃうって事でも有るな、更に遠距離攻撃なら自分は安全だな。いやいや、話がそれた。それはそれとして、先ずは自分の安全の為にゴーレムを造る必要が有る。金は地道に貯めてきていたので今こそ貯蓄の底力を見せるのだ。
と言う所でやって来た街の中に有る色々な素材を売ってるお店、今回は急いで居るので加工しやすい材料の木を使ってゴーレムを造る予定だ。金属と比べるとかなり強度は落ちるが造り安いのが特徴のゴーレムだ。
「おっちゃん、丈夫な木を下さい」
「丈夫な木ならコレだな、武器にもなるし武器の持ち手にもなる樫の木だ。どうだい?」
「ソレ下さい、長さを揃えた奴を20本」
「そんなに買ってどうすんだ? まあ、良いけど」
「へへへへ、こいつでゴーレムを造るんだ。軽くて丈夫なゴーレムをね」
「ほ~、お前さんゴーレム使いなのか珍しいな。早くレベルアップしてもっと高い素材を買ってくれよな!」
「ああ、頑張るよ」
素材屋さんには色々な素材を置いてあった、オリハルコンなんかでゴーレムを作れば凄く高性能なゴーレムが造れそうだが、余りにも材料費が高い。素材代だけで豪邸が建つ値段なのだ。そしてそんなに金が有るなら無理してゴーレムなんか造って危険な冒険者等をする必要は無いのだ、これが世の中の現実って奴だ。果たして俺がオリハルコン等を使ってゴーレムを造る日が来るのだろうか?