23話 冒険者は気楽な家業だった模様
結局ココアが手に入れた1千万ゴールドは半分俺のものになった。別にココアが見つけたのだからココアが独り占めにしても文句を言うつもりも無かったのだが、ココアには余り欲と言う物が無いようだ。多分金に興味が無いのだろう、これが金ではなく食物だったら多分俺に半分も寄越したりはしない、間違いなく9割をココアが食って、残りの1割を渋々俺にくれるぐらいだと思う。
「半分やるにゃ、山分けだにゃ」
「良いのか? お前が見つけたお宝だぞ?」
「仲間だから良いのにゃ、ウチが持ってても上手く使え無いのにゃ」
ココアに貰った金で非常用の食料やゴーレム用の材料を大人買い、1ヶ月位は2人で生きられる様に最低限の準備だけはしておく。世の中何が有るか分からないから、兎に角常に備えておくのだ。そして金が有るうちに装備を整える、ココアとゴーレムがうちの主力なので幾ら金を掛けても惜しく無いのだ。
「ココア、ナイフを見せてみろ。全然手入れをしてないだろう?」
「手入れはして無いにゃ、面倒くさいのにゃ」
冒険の街に来たが全く冒険しない俺達、あまりの暇さ加減にココアの装備を点検する事にした。彼奴は装備の手入れ等全くしない冒険者だったのだ。普通の冒険者は神経質な位装備品の手入れをする、装備品の良悪しで生死が決まることも有るから当然だな。だがココアは異常なくらい強いので装備に無頓着なのだ、なにせ装備無しでも強いからな。だが俺は違う、素手だと普通のオーク相手に苦戦する、少なくとも2体相手なら苦しい戦いになるだろう。俺がオークを瞬殺出来るのは武器のお陰なのだ、だから俺は装備品を大事にしているのだ。
「ひで~な、ボロボロのナイフじゃん! 良くこれで戦えるな」
「オーガ位ならそれで何とかなるにゃ! 成らない時は逃げれば良いにゃ」
スピードとパワーが有るココアのナイフは酷い状態だった、刃が掛けてボロボロなのだ、まあこれでも力任せに振り切れば首とかの柔らかい部分を切ることは出来るだろうが、正確にそこだけを狙う腕とスピードが必要だな、まあ、ココアなら出来るだろうが、俺ならもっと切れ味の良いナイフを使うと思う、切れない刃物は扱いづらく危険なのだ。
「ほいよ! これ使えよ」
「貰って良いのかにゃ?」
「良いよ、ココアが強くなると俺も助かるからな」
盗賊から奪った短剣やナイフが大量に有るので、その中からバランスの良い奴を2本渡しておく、2本を両手に持っても良いし、投げても役に立つだろう。ココアの身体能力なら両手でナイフを振ること位楽勝だと思う。そして自分のブーツにも左右にナイフを挿しておく、ナイフは短いので最終的な防衛手段だな、普通の冒険者はなるたけ長い武器を使う、相手と距離が離れている方が有利に戦えるからだ、俺は手入れのしやすさや破壊力重視なので棍棒を使っている、ハンマーとかメイスだと振る速度が出ないので躱され易く、受けやすいので使わないのだな。武器って奴は先ず当たらないと意味が無いからな。
装備品の手入れや街の屋台めぐり、そしてゴーレムの整備等をしてダラダラ過ごしていると、だんだん飽きてきたココアが再びダンジョンに潜りたがった。
「また、ダンジョンに潜るにゃ! 暇つぶしだにゃ」
「オッケー」
俺もいい加減遊ぶのに飽きてきたので、仕事をする事にする。生まれついての貧乏性で、1週間位遊んで居ると何だか罪悪感を感じるのだ。これは多分に異世界の知識のせいだと思う、本来人間ってそこまで働く必要は無いと思うのだが、何故だかそう思う様に教育されているのだ。
そして今度はココアの選んだオープンダンジョンって奴に連れてこられた。このオープンダンジョンって奴は誰が入っても良いダンジョンで、この冒険者の街の目玉ダンジョンなのだそうだ。ここだけは冒険者じゃなくても誰でも入れて、中の魔物を倒して魔石やお宝を持ち帰る事が出来る。当然の様に色々な所から金目当ての人間や、魔物と戦いたい連中、血の気の多い奴や兵士、そして騎士等の修行の場となっている有名なダンジョンって話だった。
「うお~お、スゲ~な」
「出店が多いにゃ、何でもこの中は地下100層まで有るらしいにゃ。本格的に潜ると凄い補給物資が要るって言う話にゃ」
ダンジョンの入口にはズラリと屋台が並び、保存食、水、薬品等ダンジョン攻略に必要な物が売られていた。ここは多分街で一番活気がある場所と言えるだろう。
「おっちゃん、これ頂戴」
「ほいよ、1個5千ゴールドだ。何個要る?」
「2個頂戴、魔石は幾ら?」
「魔石は1個1500ゴールド、大体魔石1個で2時間位使えるぞ」
「便利だにゃ、ピカピカ光って綺麗だにゃ」
屋台で魔道具が売っていたので買っておいた。魔石を入れると光る、便利魔道具って奴だ。中に入れる魔石はゴブリンサイズで約2時間、オークサイズの魔石で6時間位光る魔道具なのだ。多分ダンジョンの中の暗い所で使う魔道具なんだと思う。元いた街では見た事が無い物だった、この街でしか売っていないのかも知れない。この世界では魔法が有るので、光魔法が使える人間がチームに居ると不要になる様な物なので需要が無いのかな? もしかしたらランニングコストが高いせいかも知れない。一日明かりをつけると1万ゴールドも掛かるなら金持ち以外は使えないな。
「ココア、ちょっと本気でダンジョン攻略しようぜ」
「なんでにゃ?」
「魔道具がもっと欲しい、これが有ると俺のゴーレムが便利になるぞ」
「ゴーレムハウスが便利になるのかにゃ?」
「うむ! 夜になると明かりがついたり、料理が簡単になったり、シュワーが水からお湯にパワーアップしたりする予定だ」
魔道具を見た俺は早速、これを使ってゴーレムをパワーアップする方法を思いついた。俺達は2人とも普通の魔法は使えない、だから魔道具をゴーレムに仕込んで魔法を使えるゴーレムを造るのだ、そうすれば俺達は光の魔法や火の魔法を使える相棒を手に入れたのと同じ効果が得られるって訳だ。そして人間の魔法使いは給料を払わなくてはいけないが、ゴーレムはタダで使えるのだ、つまり丸儲けなのだ。確か異世界ではこれを機械化って言ってた様な気がする、そしてこの機械化によって企業は莫大な利益を得ていた様な気がする。
「ふふふふふふ。また一歩、俺様が金持ちに近づいた様だな! ウエ~ヘッヘッヘ~!!!」
「いい考えだにゃ! ニャ~ハッハッハッハ~!!!」
「行くぞココア! 目標はオークとゴブリンの魔石だ。出来るだけ沢山採るのだ!」
「任せるのにゃ! ゴブリンもオークも瞬殺なのにゃ」
ゴブリンの魔石をギルドに売ると1000ゴールド、そして屋台で買うと1500ゴールド。つまり魔道具に使う為には自分で魔石を集めれば安上がり、と言うか、自分でゴブリンを狩れる人間はタダで魔道具が使えるって事。だから俺達は今回は魔石集めに全力を上げることにした。俺はゴーレムのパワーアップの為、そしてココアは快適生活の為にだ。つまり2人の目標が一致したのだ。
2人してオープンダンジョンに突撃する。元々俺はダンジョンのポーターとしてゴーレムと活躍していたので、ダンジョン攻略は得意だったりするのだ。
「ニャハハハ、楽勝だにゃ」
「ほれ、これも食えよ」
ここはダンジョンの11階層、昼飯の時間になったので昼食中なのだ。そして俺達の食事は非常に豪華、理由は2体のゴーレムの積載量が非常に多いからだ。今回は大量の食料や台所用品を積んで来ているので豪華な食事を食べながらダンジョン攻略をする事が出来る。因みにゴーレムの内部にもバラスト代わりに水100キロ、つまり100リットルの水を積んでいるので水も使い放題なのだ。
「何日分位の食料が有るのかにゃ?」
「毎日腹いっぱい食べても1週間、節約すれば2週間は楽勝だな」
「ゴーレムって凄いのにゃ、ダンジョンが普通の散歩になるにゃ」
「そうだろう、そうだろう。俺とゴーレムが居れば補給は完璧なのだよ」
良く考えたら俺のゴーレムは元は輸送用に造っていたのだった、何時の間にか武装が増えて戦闘用に使っていたのだが俺は勘違いをしていた様だな、この教訓を活かして炊事も出来て大量の物資を運べる新型を造るのも良いかも知れない。10本足にして輸送特化型ゴーレム! ダンジョン攻略に使っても良し、ダンジョンの深いところで他の冒険者に物資を売っても儲かるかもしれないな。どちらにしろココアが居ればオーガまでの階層なら安全に到達出来るのが素晴らしい、ココア様さまなのだ。
その後5日程ダンジョン25階層辺りをウロウロして大量のオークやゴブリンの魔石、そして不思議パワーを発揮したココアが宝箱を2個見つけた。いい加減に魔物狩りにも飽きてきたので、身軽に成ったゴーレムに乗って帰る。普通の冒険者は帰り道が疲れて大変なのだが、俺達は帰りはゴーレムに乗って帰るので非常に楽で早いのだな、ここら辺も他の冒険者とは違う俺達の利点だった。




