第18話 道連れ
「こんにちは、お兄さん」
「こんにちは (」・ω・)」
少しくたびれて居るが若い女性だった、何故かこの世界の男は俺にはあまり話しかけて来ないのだが、若い女性やジジババは俺に平気で話しかけてくるのだ。これは異世界でも経験があるな、何故か男からは怖がられるのだな、俺は何もしてないし外見だって極めて普通にしているのだがな。
「次の村まで少しの間お側にいさせて下さい」
「???」
若い女性はペコリと頭を下げると、俺の後ろを付いて行きたいと言った。俺が訳が分からないって顔をしていたら理由を話しだした。
「ここら辺はたまに魔物や盗賊が出るので、強そうなお兄さん傍にいたいのです。護衛料とかは払えませんけど」
「な~んだ、そんな事か。良いよ、次の村まで送ってやろう。俺一人じゃ道に迷うからな」
彼女達は村から街へ出稼ぎに出ていた人達だ、街で働いてお金が貯まると村に帰るんだそうだ。女性ばかりなのは男は村で狩りや農業をしているからなんだそうだ。
「へ~、皆働き者なんだな」
「村は貧しいですからね」
成程村の皆で頑張って生きているんだな、素晴らしい。感動した! 俺みたいな人間からすれば雲の上に居る人々だよね、俺はどちらかと言うと自分さえ良ければ他人はどうでも良いって言う身勝手な人間だし。本来は困ってる人同士で助け合えばより良い未来が築けると思うのだな、もっとも俺は独りでいても全然困らないから必要無いんだが、でもまあ俺も将来困らない保証は無いので保険がわりに困った人が居たら助けてあげようと思っているのだ、善意は人の為ならずって言う露骨な諺も有るしね。
よく見ると村人は若い女性ばかりの5人グループだった、一番若い子なんか10歳位じゃ無いだろうか? こんなに小さな子まで出稼ぎに出すのかよ、鬼畜な村なのか? それとも相当に貧乏なんかな?小さな子が遅れがちに成ると周りの子が小さな子の荷物を持って上げたりしていた、成程助けあって頑張って居るのだな。
「お~い、ちびっ子。馬車に乗るか?」
「乗せてくれるの? おじちゃん」
「おじちゃんでは無い! 鬼~さんだ!」
「ごめんなさい、お兄ちゃん」
「すいません、ゴンさん、助かります」
「メンドくさいから全員乗れよ、5人ぐらい乗っても平気だから」
彼女達に合わせてゴーレムを動かすのは結構難しい、常に相手の速度を見ながらゴーレムに指示を出さなくては成らないからだ。そもそも俺は他人に合わせるのが苦手なのでボッチをしている、俺は常にマイペースじゃないと疲れて死んでしまうのだ。
「中に入るときは靴を脱ぐのだぞ」
いきなり中に入ろうとした子の靴を脱がせ、足をタオルで拭いて綺麗にする。俺の家は土足厳禁なのだ、その代わり中は何処でも寝ころがれる快適仕様だな。
「うわ~! ふかふかのジュータンが有る!」
「凄いよ、揺れないよ~。お姉ちゃん」
俺のゴーレムハウスは快適な内装をしている、なにせ此れは馬車では無く俺の家なのだから。そう、例えるならば、トラックの荷台とキャンピングカーの内部位の差があるので当然内部は馬車基準で言えば豪華だった。それに足回りはサスペンションやダンパーを装備しているので、この世界の馬車より乗り心地が良かった。
「ふふふふ、驚くのは早いぞチビ助共! ゴーレムハウス・フルオープン!」
ガシャン! ガシャン! ガシャン!
俺の命令と伴にゴーレムハウスの窓やサンルーフが開放される、暗かった内部に光が差込み、そして心地よい風が吹き込み更にゴーレムハウスの内部が快適になるのだ。
「うわ~! 凄い魔法!」
「おっちゃん! 魔法使いだったの、カッコ良い~!」
「フハハハハ~! どうだ! 凄いだろう!」
子供たちを驚かせるのは楽しい、何か褒められると余計に嬉しくなるな。大人達の褒め言葉って何か嘘臭い場合が有るのだが純真な子供達に褒められるとニヤケてしまう。そして、俺はゴーレムを褒められると気前が良くなるのだ。
「ほれ! これでも食っとけ! おやつだ」
「「「わ~! 果物!凄い!」」」
ゴーレムハウスの中に備蓄してあった保存食、その中に俺の嫌いな乾燥させた果物が沢山有ったので子供達に分けてあげた、俺は嫌いだが女性は何故か果物が好きな人が多いのを思い出したのだ。
「ワハハハハ~! 晩飯も期待しておけ! 今夜はカレーだぞ!」
一人の時は料理をする気が起こらないので、何時も手抜きの食事だ。だからタマには良い物が食いたいのだが、俺を入れて6人分の料理を造るのは大変なので、楽で皆が食べられるカレーだ、カレーのルーは異世界人がやっている店で買った、頭の良い異世界人がこっちに来ていて助かったぜ。
「ほれほれ、自分の皿を出すのだ」
「「「は~い!」」」
道から少し外れた所に丁度良い空き地が有ったので、ゴーレムハウスを止めて晩御飯にする。全員を乗せたので今日は距離を稼げたので早めの夕飯だ。歩きの旅だと夕方には疲れて料理する気等起きないから携行食なのだが、俺は家毎移動しているので元気一杯、家に乗せた子供達も元気一杯だった。
「好きなだけ食うと良かろう、おかわりも沢山有るぞ」
「「「美味しい~! カレーって初めて食べた」」」
「パンでも御飯でも好きな方を食べるのだ、熱いから気をつけるのだぞ」
皆育ち盛りなのでよく食べた、この位食べてくれると造った甲斐が有るってものだな。明日は焼肉でも造ってやろうかな。
その後はゴーレムハウスに備え付けのシャワーをサービスして、皆大騒ぎだった。石鹸やシャンプーに感動していた様だな。ふふふふ、ゴーレムハウスの偉大さに皆感動して口々に褒めていたので気分が良かったぜ。ただ、家の備蓄の水を全部使ってしまったので、夜中にゴーレムと近くの川まで水汲みに行った。運動不足が解消されていい気分で寝られた。
「あっ!」
「どうした?」
「お兄ちゃん、今のところ右だよ」
「うむ、そうか」
そして次の日、何時もの様に旅をしているわけだが、分かれ道で何時もの様に左折すると一緒に載っていたナビ子ちゃんが騒ぎ出す。どうやら左折ではなく右折だったらしい。前に進むのは簡単なのだが後ろに後退するのは難しい、なにせ俺は後ろは振り返らない主義だからな。でも、今回は彼女たちを村まで送り届けなくては成らないので渋々後退して正しい道へと進んでゆく。そしてそろそろ昼飯にでもしようかと思って居たところ、やっぱり出てきた盗賊達。道にバリケードを置いて通れない様にして5人程が立っていた、俺達が構わず近づくと、後ろからも3人出てきて。俺のゴーレムハウスは前に5人、後ろに3人の盗賊達に挟まれてしまった。
「へへへへ、命が惜しかったら、金目の物を置いてゆきな!」
「「「お兄ちゃん! 怖いよ~!」」」
「「「何だ子連れか! 見逃してやるから、馬車を置いていきな! 俺達の気が変わらない内にな~! ギャ~ハッハッハ~!!!!」」」
金さえ置いてゆけば命は助けるって言うのは盗賊達の常套句って奴だ、これを信じたりすると後ろから襲われて殺されるのだ。まあ、盗賊の言う事を信じるようなバカは異世界には居ないけどね。
「フハハハハ~! 俺の前にノコノコと現れおって馬鹿共めが! お前ら全員返り討ちにして俺の養分にしてやる! ゴーレム!」
ガチャン! ガチャン! ガチャン!
ゴーレムハウスの全ての扉が締まりロック状態になる。これで中の子供達は安全だ。
「ダブルゴーレム、リリース!」
ゴーレムハウスを引いていた2体の8本足ゴーレムが切り離されて戦闘体制に入る、旅の途中は世間体が悪いのでしまっていた剣や槍を両腕に装備して、戦闘体制に入ったゴーレム達、勿論ゴーレムハウスの自動迎撃システムも絶賛稼働中だ、近くに来た盗賊は1分間に100発の毒矢が迎撃する。
「ひゃ~はっは~!! 狩りの時間だ~!」
肩のランチャーから毒槍を発射しながら盗賊達に突撃するミノタウロス型ゴーレム2体、そして後ろの3人の盗賊にはゴーレムハウスから毒矢が雨の様に降り注ぐ。俺は両腕を組んで、高笑いを上げるだけの簡単なお仕事だ。
「「「「ギャ~!! うわ~!! 助けて~!」」」
「ハハハハハ~! 聞こえんな~!」
最初の30秒で5人の盗賊の体に毒槍が突き刺さり、走って逃げて出した盗賊はゴーレムにあっけなく追いつかれて真っ二つに成ってそこら辺に転がっていた。
「お兄ちゃん! 大丈夫?」
「もう少し中にいなさい、これは子供が見るものじゃない」
盗賊の死体は子供には見せられないからな、全く、死んでからも俺様に迷惑を掛けるとは生意気な連中だぜ。俺はゴーレムと一緒に盗賊から金目の物を盗んで、道から離れた所に捨てにいった。道端で腐られると皆の迷惑になるからだ。
「ちっ! しけてやがる」
盗賊の財布を全部回収したのだが、大して金を持って居なかった。そりゃまあそうだな、金持ちなら盗賊なぞする訳無いな。
「ゴーレム! 移動形態、戦闘状態解除」
ガチャガチャと音がして、移動形態へと変わるゴーレムハウス。馬達も既に定位置について何事も無かった様に佇んでいた。
「お兄ちゃん! 盗賊達は?」
「ああ、盗賊達は全員逃げていったよ。もう大丈夫だぞ!」
「「「・・・・・・そうなんだ」」」
彼女達は分かっていたのかも知れないが、賢かったので見て見ぬふりをする事を知っていた。世の中には知らない方が良い事が有るのだ。
「よ~し、今夜は焼肉だぞ~!」
「「「わ~い!」」」
この世界は厳しい、俺が弱ければ彼女達は盗賊に捕まって奴隷か娼婦、俺は多分殺されていただろう。だから盗賊達がどうなろうと誰も気にしない、と言うか盗賊は全員死ねと思って居るのだな、まともに生活をしている人々は。まあ、害にしか成らない連中だからな。




