第16話 領主護衛戦
フリードさんに開発費を出して貰ったので、普段は使えない高級な素材を使って防衛用ゴーレムを造る事にする。一番大事なのは敵の攻撃を事前に察知する事、敵の襲撃が事前に分かれば迎撃がしやすい。相手も後暗い事をやるので襲撃は間違いなく夜になるな、夜なら普通の人は寝てるから、素早く襲撃すれば顔を見られずに逃げ出せるしな。
「ふんふんふ~ん、夜専用偵察ゴーレム出来上がり」
夜間偵察用のフクロウ型ゴーレムを4体造った、流石に本物の様に飛ぶことは出来ないが、夜でも敵を感知できるゴーレムだ。これを屋敷の4方の木に取り付けて、準備完了。まあ、フクロウそっくりなので、敵がこれを見つけてもフクロウと間違う事も期待しているのだな。
「あら! まだやってんのゴン! 少しは休んだ方が良いわよ」
「頑張りすぎじゃ有りませんか? ゴン様」
「ふふふ、自分の限界に挑戦しているのだよ。既に50時間ほど寝てない、10時間程前からとても気分がハイになっておるのだ~!」
「いい加減寝なさいよ! 倒れるわよ!」
「でもな~、何か敵が近い内に来そうなんだよね。準備しとかないとご主人が殺されちゃうし、お前ら奴隷、俺は拷問されて奴隷堕ちだもんな」
「ひっ~! ゴン頑張りなさい! 栄養ドリンク造ってあげる!」
「私は肩を揉みますね!」
ご主人様が領主になるまで後3日、どうみても就任後に襲われるより就任前に襲われそうなのだ。家の周りに怪しい人間が増えてきたし。準備不足で負けると洒落に成らないので死ぬ気で頑張って居る状態なのだな、こういう時に仲間が居れば助かるのだが、戦闘力が有るのは俺だけだし、ゴーレムを造れるのも俺だけ全部独りでやるのは非常にキツいもんだ。
「ふひ~、やっぱり寝る。3時間したら起こしてくれ、その時にフリードさんも連れてきてくれないか。お前たちにも渡すものが有るしな」
「了解! 3時間後ね、任せておいて」
「お休みなさい、ゴン様」
やりたい事は幾らでも有るが、時間が無いので全部は無理。それよりも少し休んで体調を戻した方が良さそうだ。だから寝る、3時間も寝れば又1日位は動けるだろう、異世界ではそんな生活を何年かやってた様な気がする。
「ゴン! ゴン! 起きてよ!」
「ゴンさん! ゴンさん!」
「う~ん、あと5時間・・・・・・」
「何言ってんのよ! 敵が来てるのよ!」
「ゴンさん! 早く逃げないと殺されますよ~!」
「!?」
普通なら直ぐに起きられるのだが、中途半端に寝たせいで寝起きが悪い。頭がボ~っとしている。でもまあ、何やら庭が騒がしい事は理解した。
「ゴン殿、敵襲だ!」
「・・・・・・分かった、迎撃する」
あくびを噛み殺し装備を整える、大体1分も有ればフル装備になれる。兵隊は何事も早くなくては、飯を食うのも寝るのも遊ぶのも早いほど良いのが兵隊って奴なのだ。
「それじゃ、これを身に付けていてくれ。絶対に外すなよ、外すとゴーレムに攻撃されるぞ」
「ブレスレット・・・・・・」
「俺の魔力を通してあるブレスレットだ、これを身につけているとゴーレムから味方として認識される、付けてない奴は全て敵として攻撃される」
「分かったわ、ゴーレムの毒矢を受けるのは嫌だもの」
「後は、3人共ゴーレムハウスに入ってくれ。この中が一番安全だ」
3人をゴーレムハウスに入れて守る、建物に近づいて来る人間は全て敵として認定して攻撃するモードに設定する。これで普通に近寄って来る賊相手には安全だと思う。近寄れば300本の毒矢と50本の毒槍が迎撃するのだから。
「ご主人、迎撃は計画通りですか?」
「うむ、守備隊には建物を守る様に言ってある。庭には絶対に出ない様に言いつけたぞ、ゴン殿」
「何か意味が有るの?」
「有るぞ」
誰かにバレると嫌なので事前に説明をしなかったので、説明する。そもそも敵の狙いは領主の殺害か誘拐だ、だから領主が居そうな場所を攻撃する。そして味方は領主を守るために防衛するのだな。だから味方の戦力を全て屋敷に集めると、敵は領主が屋敷の中に居ると思う訳だ。そして実際には領主は敵が攻めていないここに居るから安全って訳だ。
「へえ~! 意外と考えてるじゃない」
「なるほど」
「そう言われて見れば納得だな」
「まだ理由は有るんだがな、もう直ぐ分かる」
領主の屋敷では賊30人位と護衛20人が屋敷のドアや窓を巡って戦っている。魔法使いは居ないようだ、彼等は稼ぎが良いのでヤバイ仕事はしないみたいだな。もし失敗したら死刑にされちゃうからな。プロの犯罪者か食い詰めた冒険者位しか集まらないわな。
「ちょっとゴン、何時まで見てるのよ。チョット負けそうになってるじゃない!」
「うむ、ゴン殿。護衛の方が部が悪い様に見えるのだが・・・・・・」
「まだ慌てる時では無い、少し待つのだ。もう少しでチャンスがやって来る」
俺は自信満々で3人に頷いて見せる、少し味方が押されているが想定内だ。相手は早く片付けたくて無茶苦茶な攻撃をしているので相手をする方は大変なのだ。それに護衛の仕事ばかりして実戦をしてない連中は、本番に弱い。死が目の前に有ると思うと実力を出しきれないのだな、相手は後がない連中だから気迫が違うって奴だ。
「「ああ~!!」」
「ゴン殿! バリケードが破られましたぞ!」
「うむ! 時は来た。ゴーレム!」
屋敷のバリケードが破られ、賊たちが大喜びして居る。盗賊の目は全員バリケードに向けられ、これから全員で突撃して屋敷に入ろうと奇声を上げていた。俺はこれを待っていた、俺のゴーレムを全く警戒していないからな。
「狩れ! ゴーレム達!」
ドドドドドドドッドドドドド!!!
この時の為に特別に造った犬型ゴーレム10体、木製で足も4本しか無い手抜きゴーレムだがその走るスピードは時速50キロまでに達する速度重視型のゴーレムだ。犬型なので姿勢が低く中型犬サイズだが、体の左右に長さ1mの剣を取り付けている。殺傷範囲はつまり左右2mだな、高さは丁度大人の膝の高さ。これが真横から時速50キロで走って来たらどうなるか?
「「ギャ~! いて~!! 何だこれ!」」
「「「魔物だ! 魔物が襲って来たぞ~!!!」」
10体の犬型ゴーレムが賊の間を縦横無人に駆け抜ける、最初の一撃で10人近い人間が足を切り飛ばされて、地面に倒れている。ゴーレムは更にまだ立っている賊たちに向かって走って行く。
「うわ~! エグい。足が無くなってる人がいるわよ」
「後ろからイキナリですか! 流石はゴン様容赦無いです」
「成程、これを使うから味方は外に出ない様に指示していたのか」
「失礼な奴等だな、魔物ではなくゴーレムなんだがな」
俺の犬型ゴーレムは頑張った、敵の中に走り込んで敵を次々に行動不能にしていったが、元々木製なのと、数を優先して造ったので防御に問題が有る、相手の攻撃を受けると簡単に破壊されてしまうのが弱点なのだ。
「ゴン! ゴーレム達やられてるわよ!」
「どんどん、やられてます! 一撃受けると吹き飛んでます」
「大丈夫なのか? ゴン殿!」
「うむ、問題無い」
自分のゴーレムが壊されるのは見ていて辛い、とっても嫌だが問題無い、問題が有っても問題無いのだ。お前らの敵は俺が討ってやるからな。
「「「あああ~最後の1体が~!」」」
「ゴーレム!! 突撃せよ!!」
犬型ゴーレムの最後の1体が破壊されて相手が気を抜いた瞬間、俺は本命の8本足のミノタウロスゴーレムと伴に賊に向かって行った。
「どちくしょう~!!! 俺のゴーレム壊しやがったな~!!」
ドドドドドッドドドド
今度のゴーレムは金属の装甲を纏った重量500キロの重量級ゴーレムだ、犬型ゴーレムとはパワーが全然違う。体当たりだけで人を殺せる力が有るのが全速力で突進してくる。
「「うわ~! 逃げろ! あれはヤバイ!」」
「ワハハハ~!! もう遅いのだ~!!」
まだ立って居た10人程の賊を相手に俺のゴーレムは無双する、相手の攻撃は効かない。元々痛みも感じないし感情もないゴーレムなのだ。そして俺は犬型ゴーレムが倒した、地面に倒れている賊の頭を棍棒で叩き割るだけの簡単なお仕事をしている。
「頼む! たすけ・・・・・・」
ボコン!
「やめろ~!!!!」
ドカ!
「頼む! 見逃して・・・・・・」
ドガ!
命乞いをする賊達を神の元へと送る、こいつらは助けたりすると平気で後ろから襲ってくるから、確実に処理する必要が有るのだ。どうせ死刑なのだから苦しまずに神の元へと送ってやるのが慈悲って奴なのだ。
こうして領主襲撃事件は俺とゴーレムのお陰で丸く収まった。被害は俺の犬型ゴーレム10体と屋敷の護衛が2人程再起不能になっただけ、相手が30人もいたのだがらパーフェクトな成果だった。因みに賊も3人ほど情報収集の為に生かして捉えておいた。領主襲撃を命令した相手を聞かなくてはいけないからね。
「状況終了です! 領主様」
「・・・・・・ああ、ご苦労」
俺の完璧さに領主は青い顔をしていた、ゴーレムの有能さに驚いたのかも知れないな、ゴーレムって有能だからな。女性2人も襲撃が怖かったのだろう、今頃震えているな、だがもう大丈夫! 悪は滅びたのだ。しかし、色々なゴーレムを造ったのだが、結局使わずに終わったのも有ったな、世の中って奴は計画通りにはいかないものだ。




