7.感想戦
本日2話目。短め。
しばらくして華公爵が迎えに来たことで、初対面は終了した。
華公爵は、帰りの馬車で不安げに問い掛ける。
「……どうだった?」
「す、素敵な方でしたわ」
「ええ、とても、お優しかったですわ」
吃り気味に姉妹は答える。
優しくて素敵な方という印象に嘘はない。
だが、自分がやらかしたという記憶が歯切れを悪くさせた。
自分たちの印象は良い。だが相手からしたらどうだったのか。
「……大丈夫だったな?」
勘の鋭い父に、二人は揃って目線を逸らす。
父はそれで全てを悟った。何かやらかしたな。
「はぁ……」
「お、お父様、申し訳ございません」
「……私は良い」
仕事への影響に対してついているため息と思い麗香は謝るが、父は首を振る。
彼としても、隠し通すことは難しい気はしていたのだ。
それでも縁談を進めたのは、ひとえに娘達のため。
「私はどうとでもなるから問題ない。華公爵家当主だからな。それよりお前達だ!」
麗香も清華もビクッと震える。
分かっているのだ。ここまでお膳立てしてもらったのに壊したことを。
ただ、と清華は思う。
後半の陛下からは優しさだけでなく親しみも感じた。お飾りの妻なら、もしかしたら。
とは言え希望的観測だ。
清華は考えを胸の内にしまった。
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「銀雪、僕は決めたよ」
華公爵家の面々が帰った後、純は銀雪に宣言した。
「清華嬢と婚約する」
「……そうか」
銀雪はそれだけ言ってソファーに沈み込む。
純と清華が視線を合わせて会話をしていた時に思ったのだ。きちんと意見を言い合える理想の夫婦になれそうだと。
だがこんなに早く決断するとは、思っていた以上に、純は彼女を気に入っていたのか。
「銀雪は?」
「……まぁ、悪くはないな」
彼が欲しているのは、純とは違い、正真正銘のお飾りの嫁だ。
麗香は見た目も礼儀も問題なし。何より、自分が愛さなくても向こうは勝手に楽しんでくれそうなのだ。悪くない。むしろ理想的と言えるだろう。
「……そうだな。純と一緒に婚約を結ぶか」
「一緒だと、なんか言われそうだね」
純がクスクス笑うと、銀雪もニヤリと笑う。
「婚約祝いだ、お互いの」
「あはは、物じゃないんだね」
「何より喜ぶんだから問題ないだろ」
「そうだね、ふふふ」
純の笑いは止まらない。
こんなに笑う純は珍しい。ついこの間まで無表情がデフォルトだったというのに。
「さて、さっさと手紙でも書くか」
「うん。あ、お揃いにする?」
「やめてくれ、そこまですると本気にしそうだ、あいつら」
本当に純とくっ付けられたら堪らない。
そうして、純は清華と、銀雪は麗香と、婚約を結んだ。