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5.本質

本日2話目。


「ち、父が申し訳ありません」


麗香は長女としての務めを果たそうと頭を下げた。

それに銀雪と純は苦笑する。


「いや、あのままだと貴女方とは話せなかっただろうから、良かったんじゃないか」

「うん。さすがに父君の前だとね」

「それな」


銀雪と純は苦笑し合う。


二人のリラックスした、親しい者同士特有の雰囲気に、麗香と清華の萌えが爆発した。

ずっと妄想していた、顔を近付け、微笑み合う二人。

それが、目の前で実際に!!


うるさく言う父もいない。

もう、抑えられない!


「お二人は……」

「ん?」


麗香の声に意識を向けた銀雪は、禍禍しい空気に動きを止めた。


そして、彼女達は弾けた。


「お二人は、本当に仲良しでいらっしゃるのですね!」

「とても気安い雰囲気が素敵ですわ!」


これまでずっと大人しかった二人の大声に、銀雪と純は動けない。

……目の前の二人は、一体?


姉妹は止まれない。

極上の笑顔で矢継ぎ早に言葉が続く。


「銀雪様がいらっしゃった時の陛下、ホッとしていらっしゃって可愛らしかったですわ!」

「銀雪様への信頼が垣間見えたわよね」

「その陛下を後ろから優しく見つめる姿!」

「ええ!もう涎が出てしまいそうだったわ!」

「明日への活力が湧きますわ!」


人付き合いの得意でない純はおろか、百戦錬磨の銀雪も、呆気に取られるしかなかった。

あまり喋らないと噂の、゛壁の花姉妹゛、だよな?


言っている意味は、もはや分からなかった。

誉められているような、狙われているような。

パーティーで言い寄って来る令嬢と、違うようで似ている、瞳。


純は完全に引いていた。

怖い。よく分からないけれど、怖い。


銀雪はガシガシと頭を掻いた。

あちらが取り繕っていないのだ、自分も気を抜いて良いだろう。


「あー、と?何にテンション上がったんだ?」


麗香と清華は、ハッとした。

そうだ、ここは王城で、陛下と摂政ご本人の目の前。見合いの、場。


小さく小さく縮こまる。やってしまった。


「も、申し訳ございません……」

「お二人が素敵でしたので我を忘れ……」

「や、それが分かんねぇんだが」


純もコクコクと頷く。

青い顔の純に、姉妹の方が青くなった。

父親の顔に泥は塗らないつもりだったのに……!


「しょ、正直に申し上げましたら、父とは今まで通りに接していただけますでしょうか」


なんだかんだ言いながらも、麗香と清華は父が好きだ。

迷惑は掛けたくない。


純は瞬いた。

彼女達も自分勝手な令嬢かと思ったが、真っ先に父親のことを言うあたり、違う臭いがする。

こういう時の純の勘はバカにならない。


「……内容にも寄ると思うが」

「良いんじゃない、銀雪。華公爵は大事な人なんだし」


純は銀雪をじっと見た。

そもそも条件を飲んでも自分達に損はないのだ。問題はない。


銀雪は渋い顔をしたが、結局頷いた。

こういう純の決定に、銀雪は否やを言えないのだ。


「ありがとう存じます」

「ありがとうございます」


麗香と清華は少しホッとし、だがこれからどう伝えるか、苦悩する。


目線会議を続けていたが、意を決し、麗香は口を開いた。


「……私達は、好きなのです」


一瞬顔を上げ、首を傾げた銀雪と純を見て目を反らす。

い、言えるか?!本人に向かって!


しかし、姉より妹の方が豪胆だった。


「私達は、お二人がイチャイチャしていらっしゃるのを見るのが好きなのですわ!」


清華だけが、清清しい空気をまとっていた。


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