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ねずみ

視界を、赤いなにかが横切った。拳くらいの赤が電車の向かいの座席、その下へ駆け込んでいった。不思議に思うまもなく悲鳴が上がる。ぐらりと人が棒立ちのまま倒れた。車窓の景色と同じように、車内の床を血が広がっていって、誰もがあっけにとられる。そのあとに恐怖が人々を染めた。電車がホームに入っていく。緊急停止ボタンが押され、アナウンスが車内に響く。足止めを恐れてホームへ飛び出す人の、鞄に赤いものが滑り込んだ。

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