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私がキメラで王子のペット  作者: 三食パスタ
第一章
4/4

4 白髪化の理由

説明回です

「ーーえっと、そのハガルカって人が私を無茶なやり方で()んだんですね」

「左様。禁術に手を出したとして、彼奴ら一族はいずれ処刑だろう」

 意外にも、異世界もの小説でテンプレなやり取りは短く済んだ。私が平民で、十七歳ということに驚いてはいたんだけど、それより優先するべきことがあるので、先に説明したいという。そんなわけで、私は今までの経緯を聞いている。

「不完全な魔方陣の結果、巻き込まれた君は両腕が欠けていた。そのまま放置すれば、出血多量で死んでいただろう」

 カップをお皿に戻す。そんなこと、知らなかった。だって、()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 千切れていた腕をくっつけたのか? でも肩をぐるぐる回しても痛みも何も感じない。曲げて伸ばして、ついでに手をグーパーさせる。もしヴィクトール様が言ってることが本当なら……この腕は何? 義手とかではなさそうだ。

「いっそ介錯しようかと声をかけたのだが、君は意識があった。そして後で起こすように私に言った後、目を閉じた……覚えていないだろうが」

 ヴィクトール様はふふ、と笑みをこぼしたが、私の背筋が伸びて固まった。

 王子様相手に何やってんだ私。うっかりしたら「なんだこいつ不敬」って殺されてるじゃんか。しかしそれを考えると、この人びっくりするくらい寛大だな。

「頼まれたからには生かさねばならない。私は手持ちのポーションを君に使い、この部屋で看病させた。それから二日ほど経ち、今に至る」

 完全に命の恩人である。

 これはあれか、何か代償が必要だろうけど、私に何ができる? 荷物は手元にない。異世界の技術が役に立つとは限らない。てか専門的なことなんて分からない。いっそこの体を差し出して、肉の盾になって死ぬとか……。

 ここって食人文化とかあるのかな、まで考えたところでヴィクトール様が口を開いた。

「顔色が悪いな。まだ暫く休養が必要だろう、私の寝台を使いなさい」

「いえいえいえ、その、そんな、平民の私が、陛下のベッドとか使えませんて! 床で十分ですって! あ、いや、でも従わないとダメですよねごめんなさい食べないでください」

「落ち着きなさい、あと食べることはしないが、君の国では人を食べるのか?」

「ーーあぁもう! 二人とも、ストップ!」

 声をあげたのは、確か、ハロルドさん。

「まずハルミ。ビビるな。本当に具合悪いならベッド使え。今は遠慮するな。あと多分色々誤解があるから、落ち着いたら質問しろ。全部答えるから。

 で、陛下。あんた怖がらせすぎです! 自分の身分を平民目線で自覚してください!ただでさえ体躯(タッパ)と身分で威圧してんのに『命の恩人(パワーワード)』を振りかざすんじゃねぇ!」

「そんなつもりはなかったのだが」

「だ・か・ら我々さんざ言ってるんですよ自覚しろって! 今回もガンガン前線出やがってーー」

「説教は後にしてくれ。ハルミの誤解を解かねばならんのだろう」

「かーーーっ! やってられねぇ!」

 ……多分、ハロルドさんも相当な身分かコネがあるんだろうな。さっきからちょくちょく、ヴィクトール様に対してタメ口だし。

「ハルミ、今に至るまでの経緯聞いて、なんて考えた?」

「へっ!? あ、いや、そこまでしていただいたのに、私、何も返せるものがなくて、どうすればいいのかって」

 慌てながら、しかし声が小さくならないよう気をつけながら発言すると、ヴィクトール様は頷いた。

「なるほど。ならば安心しなさい。既に返礼は受け取ったに等しい」

「え?」

「だからそういうのが誤解招くんだよっ」

 右隣のハロルドさんが目線を合わせる。

「確かに陛下はハルミを助けた。でも、それは不完全っていうかーー俺たちも、非があることをした。起きたら髪の色が変わってて、不思議に思わなかったか? 失くしたはずの腕が復活するだけならともかく、だ」

 忘れてた。冷めた紅茶に目をやると、白髪の私が不安そうな目をしている。

「それは、ポーションの副作用だと考えられている」

 ……何で、「副作用だ」って、言い切らないんだろう?

「ハルミに使ったポーションは、まだ未完成で研究中のものだ。小動物への実験は成功していて、次は誰か、人を雇って実験する予定のものだった」

 そこまで言われて、混乱した頭が何とか二人が言いたいことにたどりついた。

「私は、そのポーションの実験台になったんですね。それで、今も実験は続いているんですね」

「そう。可能性は低かったが、死ぬとか植物状態とか、最低な結果も考えられた。だが、『異世界人』が対象となると、全く展開が読めない。そこを陛下がゴリ押しだ」

「人聞きの悪い。()()()()()()()()()()()に対して魔力(ポーション)を注ぎ込めば、元々の治癒能力と結びつくのは再生魔法の原理からもーー」

「とにかく、俺たちは清廉潔白な『命の恩人』なんかじゃない。お前は被害者みたいなもんなんだ。俺たちが面倒見るのは当然なんだよ」

 とりあえず、一気にヴィクトール様への印象が変わった。良くも悪くも人間味がしないって感じに。それを、ハロルドさんが支えてるのかもしれない。

「えっと、ちなみにそのポーションって、既存のものと何か違うとことか、あるんですか?」

「あぁ。普段は希少な植物などを用いるのだが、今回は低級魔物から取れるもののみを原料として使った。ハルミに使ったものは、蜘蛛型魔物を主な原料としているな」

 ハロルドさんが「やべっ」て顔してるけどもう遅い。

 とりあえず私は、転移早々、王子様の実験動物(モルモット)となったようだ。


 ……というか女子に対して「蜘蛛」とかサラッと言ってしまうヴィクトール様ェ。

楽しすぎて傍点、ルビを使いすぎてしまいました。ちょい反省。

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