プロローグ
ここも無くなっている・・・
俺は、大阪日本橋の電気街を歩きながら、絶望に浸る。
今日は、2年ぶりの日本橋電気街、俺流街歩きの日だ。目的は、イカしたジャンク品と、骨董真空管の蒐集。
田舎者なので、日本橋電気街まで行く事も滅多に無い。
久しぶりの電気街巡りのはずなのに、この仕打ちはあんまりだ・・・
俺は、目の前のメイドカフェを見ながら、そう思う。
2年前に来た時には、ここには、古い電動工具を扱う店があった。確かにあったはずだ。
だが、目の前にあるのはメイドカフェ。
目があった客引きのメイドさんが、小さな紙きれを持って俺の方に近づいてくる。
メイドカフェに用は無い。変に冷やかしになってもいけないので、俺はそそくさとその場を去る。
確かに、以前来た時にも、初めて来た人には、物を売っている店とは思えないような店構えで、良く営業できているな、とは思ったもんだ。
だが、これで6軒目だ。
無くなるにしても、度が過ぎている。
日本橋は、電気街ではなくなってしまったのか?
今日の収穫は、地下鉄の駅前すぐにある、日本橋にある店の中では大手のパーツショップで手に入れた、手持ちのビニール袋に入ったブツだけだ。
大手のショップも良いが、ジャンク感が足りない。
俺にもっと、もっと!!ジャンクを!!
そう思いながら、新たな店を求めて、メインの通りから外れた道へ足を進める。
この辺りは事務所のようなビルが多く、もともとあまり探索をしていないエリアだ。
もしかすると、俺にとって未開拓の店があって、無くならずに生き残っているかもしれない。
あの角の奥とか、良い感じに古い店が残っていそうで、良さそうだ。
そう思い、俺は角を曲がる。
不意に、軽い眩暈。
足がもつれて転びそうになるが、何とか耐える。
足元が霞んで見える。
こんな所で倒れたら、誰にも見付けてもらえない・・・
そう思いながら、俺は、頭を振って意識を保とうとする。
なんとか、視界がクリアになる。まだちょっと気持ち悪いが、意識ははっきりしてきた。
倒れそうになって、体が俯き加減になっていたようで、足元しか見え無い。
頭を上げて、周囲を見渡す。
ん?
なんで、この路地は、こんなにお洒落なんだ?喫茶店でもあるのか?
狭い路地の左右に並ぶ、洋風の建物を見て俺はそう思う。
足元も、見慣れたアスファルト舗装ではなく、石畳だ。
この路地をそのまま進めば、お洒落な隠れ家的喫茶店にでもブチ当たるのだろうか?
眩暈もしたし、喫茶店があればそこで休もう。
そう思って、そのまま路地を直進する。
しばらく進むと、狭い路地は終わりになっていて、大きな通りが見えてきた。
人が横切っていくのが見える、沢山の人の声も聞こえてくる。
皆、少し変わった服を着ている。通りでイベントでもやっているのだろうか?
そちらに向かって足を進める。
視界が広がる。大通りが見渡せる。
そこには、画面の中でしか見た事の無い、中世の街並みが広がっていた。