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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

侍放浪日誌

 侍は、一人だった。


 侍はかつては幾つもの戦に赴き、加勢した陣は全て圧勝するほどの


正に「剣豪」の名が向こうからやって来るほどの男だった。


しかし、そのあまりの強さに、恐ろしさに、敵も味方も震え上がり、侍からは皆離れてしまった。


 侍を敬う弟子も昔は何人か居たのだが、皆侍の武術・技術には適わず、


結局皆、侍から離れてしまった。


 気付けば、侍は一人だった。何故、弟子達が自分から離れたのか侍には分からなかった。


 侍は旅に出た。自分を探しに旅に出た。


弟子達が自分から離れた理由がどこかに転がっていないか、探しに出かけたのだ。


 それから、三日三晩の時が立った。


時には馬に乗り、時には歩き、侍は自分を探し続けた。


しかし、結局弟子達が離れた理由は見つからなかった。


 ――――――.....もう、帰ろうか。

 

 そんなことを侍が思った矢先だった。


目の前に村が見えてきたのだ。

 

そういえば、水を切らしていたな。水を貰ったら帰ろうか。


 侍は、村へと歩き出した。



 侍が村に着いたとき、まず目に付いたのは、道に転がる村人の亡骸だった。


 辺りを見回せば、ある家の屋根は燃えさかり、またある家は壁が巨大な金槌で叩かれたように破壊されていた。


誰かおらぬか! 侍は声を張り上げた。


声に気付いた村人が、壁の裏から恐る恐る出てきた。


どうかしたのか?と、侍は聞いた。


「鬼の群れがやって来て、村人を殺し、食べ物を奪い、娘を攫ってしまいました。お侍様、どうか娘をお助けください」


村人は頭を地面に擦りつけながらそう言った。


侍は、村人の頭を上げさせ、詳しく話を聞くことにした。


「鬼とは、何だ?」


「はい、赤い肌をした3間ほどの人を殺す魔物でございます」


「どうして鬼は娘を攫った」


「盗んだ食べ物と一緒に食べる気でございます」


そこまで言った所で、村人は泣き出してしまった。


 侍は、村を見回した。


 辺りは酷く荒れ、かつては貧しくも平和だったであろう村の日常は見事に破壊されていた。


 考える暇など、なかった。


「わかりました。鬼はどちらに逃げましたか?」


「西の方角でございます」


「この竹水筒に、水を入れてください。夕方までには娘を助け出してみましょう」


 村人から水を貰った侍は、西の森へと駆け出した



 森の中で鬼の残した大きな足跡を頼りに歩いていたところ、侍はある洞窟をにたどりついた。

洞窟の入り口は非常に大きな物で、まるで巨大なトラの口を連想させた。


 侍は、迷わず洞窟に足を運んだ



 洞窟を進んですぐ、侍は焚き火の音と鬼の話し声を聞き取った。


 急な下り坂のようになってる洞穴を覗き込めば、


そこには大釜を囲む赤鬼が3人、さらに奥には盗んだ食べ物と村人の娘が見えた。


どうやら、どうやって娘を食べるかを話し合っている様子であった。


 侍は刀を抜き、鬼達へと切りかかった



 どれくらいの時間、侍は戦っただろうか。


数分程度だったかもしれないし、一晩中戦っていたような気もする。


 侍の足元には無数の鬼の亡骸が転がっていた。


 侍は囚われた娘へと近付いた。


娘は怯えながら言った。


「お、鬼・・・」


 侍は、一瞬意味がわからなかった。


自分の頬を撫でると、手に鬼の返り血がべっとりと付いた。


 よく見れば、着物も刀も、全て返り血で染まっていた。


その時、侍は気付いた。自分が何故一人なのか、と。


「そうか、自分は、鬼だったのか・・・」


 侍は、そっと洞窟に差し込む夕日を見つめた。

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