三話 貴族が通う学園
あの後、日時計やら何やらを駆使して何とか8:00までに間に合った。どうやら屋敷にいる間の身の回りの世話はしなくていいそうだ。まあ、男子の俺に頼むわけないわな。
話が変わるが学校へは徒歩で行くらしい。まあ、ただ歩くのも暇なので、いろいろ聞いてみることにした。
「なあ、なんで俺を選んだんだ?俺より良さそうな奴なんてあの場にたくさんいただろ」
「あなただけ、こっちにアピールとかしなかったから」
と、真顔で言い放った。なんつう理由だよ。一歩間違えればヤバい奴引くかもしれないというのに・・・・・・。まあいいか。
「今度はこっちが質問する番。なんで眼帯しているの?」
うへえ、【神眼】スキルは今のところエルにはばれてないんだよなあ。さて、どうしたものか。本当のことを言うか、それとも適当に誤魔化すか・・・・・・
「いやあ、俺が奴隷に堕ちるときにちょっとね・・・」
俺は適当に誤魔化す方を選択した。まあいずれはばれるけど今はまだ話さなくていいか。めんどくさいしなあ。
話をしていたら学校についた。学校名は「フィーゼル学園」らしい。どっかで聞いたことがあるなと思ったが、スルーした。
校門付近では女子生徒が群がって談笑している。エルの友達かなと思ったがエルは普通にスルーし、スタスタ進んでいく。俺はそれに続いていく。またもや、迷路のような廊下を進んでいき、教室に入る。教室の中は数名の男女が居て、皆が皆自分の友達と談笑している。
だが、エルが入ってきた瞬間周りの奴らは、まるで欠陥品を見るような目で彼女を見た。俺はとりあえず周りの奴らのステータスを覗く。
アイシャ LV7
HP79
ATK38
DEF34
AGI15
INT38
MP17
SKILL:【水属性魔術】
クイス LV7
HP68
ATK15
DEF24
AGI45
INT29
MP19
SKILL:【風属性魔術】
ハイド LV7
HP98
ATK39
DEF35
AGI12
INT23
MP20
SKILL:【闇属性魔術】
ざっとこんな感じだった。こいつらとエルを比べると決定的に違うところが一つだけある。それはMPの量だ。エルはMPが零なのに対して、周りの奴らはMPが少量だが保有しているのだ。まあ保有量は俺とほぼ同じだから俺がどうこう言えたことではないな。
エルはそいつらの存在を認識していないかのようにスルーして、席に座る。そして・・・・・・・・
机に突っ伏して寝息を立て始めた。
「・・・・・・・・・は?」
事態が飲み込めずに思わずそんな声がこぼれる。そりゃあ、いきなり学校で自分の主が寝始めたらびっくりするだろう。というかこの視線やプレッシャーの中よく堂々と眠れるな。周囲を窺うと、殺気立っている奴らが何人もいた。皆が皆エルに向かって敵意を向けている。まあどうせ、欠陥品の癖に自分たちの前で何勝手に寝ていやがるんだとでも考えてるのだろう。
そんな事を考えていると、エルが片目だけ開けて
「ホームルーム始まったら起こして」
とだけ言ってまた夢の世界に旅立った。起こしてと言われてもなあ、こんな気持ちよさそうに寝ている人を起こすって罪悪感が・・・・・・湧かないな。時間になったらちゃんと起こそう。
「ちょっと、あなた」
声を掛けられたので顔を向ける。どうやら、エルに敵意を向けていた組の内の一人が声をかけてきたようだ。確か名前は・・・・・・・・・アイシャだっけか。
「ホームルームになってもそいつ起こさないでいいわよ。寝過ごさせて一緒に恥かかせてやりましょう。あなたもこの欠陥品にこき使われててうんざりするでしょう?勿論協力してくれるわよね?」
あ~こいつ、俺が別のクラスの誰かだと思ってるな。で、パシリにされてると勝手に解釈しているな。当然答えはNOだが、その前に少しだけ質問しとくか。断ったら機嫌悪くして質問どころじゃなくなるだろうし、最悪襲ってくるかもしれん。
「あ~その前に一つだけ教えてくれ。こいつってなんで欠陥品って呼ばれてるんだ?」
さて、答えてくれるかね。
「そんなの、こいつがMP0だからに決まってるじゃない。神々からの祝福であるMPがないなんて、前世が卑しいか神様の祝福を受けられなかった欠陥品のどちらかよ。そんなことより協力してくれるの?」
なんだ、そんなくだらない理由か。しかしこの世界ではMPは神様からの祝福って事になっているのか。この世界はかなり神様に重きが置かれているな。俺のスキル【神眼】といい、女神といい神というワードが入った単語をよく聞く。さて、そんなことは置いといて、返答するか。
「断る」
その言葉を言い放った瞬間敵意がこちらに放たれる。クラスには数名しかいないがそれでも自分より高レベルの奴等数名から一斉に敵意を向けられると十分恐いな。数秒間した後、アイシャが口を開いた。
「理由を聞いていいかしら?」
数秒間間を開けたから、今なら許すわよとか言い始めると思ったが少しまともな返答だった。まあ、理由なんて一つしかないがな。
「こいつが、俺の主人だからだ。後、先に言っとくがこいつに手を出そうとするなら立場上、全力で止めるからな」
そう言い放つ。
「あなたもとんだはずれを引きましたね。そうだ、そいつとの契約を打ち切って私と契約しましょ。そうすれば立場に縛られることは無くなりますわよ」
こいつもしかして俺が執事だと思っているのか?だとしたら全くの見当外れだな。
「違うぞ。俺はこいつの奴隷だ」
瞬間奴らは俺に向かって嘲笑するような視線を向けてきた。あ、どうせ奴隷ならそんな脅威じゃないなとでも思っているのだろう。絶対面倒な事になるだろう。まあ幸い今は人が少ないから戦闘になってもいいが。
「そう奴隷だったのね・・・・・・まさか、そいつが奴隷を買うなんてね。まあ奴隷なら別に死んでも構いませんよね、どうせもう命なんてないただの道具ですから」
そう言った瞬間、彼女は何処からか短剣を取り出し襲い掛かってきた。
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次回は27日更新予定です。