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Cinderella story  作者: Alan Smithee
6/8

06

「おのれ!よくも我が家族を!」


チュイィィィィン!!!


 甲高い空気を切り裂くような魔法の発動音が家の中に響く。


一同が慌てて音のあった部屋に駆けつけるとそこにはおそらく先ほどの銃声によって胸から大量の出血し、壁を背に膝から崩れ落ちているフリオ財務局長と向かい側には、銃を手に半場放心状態で棒立ちしているアントリニアージュニア。


「あぁ、なんて事を…」


そう呟いてエレノアが真っ先にフリオ財務局長に駆け寄る、ポケットからハンカチを取り出し、大量に出血している場所をそのハンカチで圧迫する。


「フリオ財務局長!気をしっかり持ってください!すぐにお医者様が来ますから!」


「うぅ…ハァハァ…あぁ…ハァハァ…おのれぇぇ…」


素早く、そして力強く両手でフリオ財務局長の手を握りしめるエレノア


「フリオ局長!大丈夫です!きっと、きっと助かりますから!」


息も絶え絶えになりながら、ぎゅっとエレノアの手を握り返し最後の気力を振り絞り、かすれた声で何かを訴えかける


「エレノァ…」


「フリオさん!フリオさん!わたくしに、わたくしに何か伝えたい事があるのですね!私ならここです!ここにいます!エレノアです!」


エレノアの懸命の看病も虚しくそれがフリオの最後の言葉であった。


「フリオさん!フリオさん!なんて事に!うああああああああ!」


そう言って大声で泣き崩れるエレノア。それを合図に周りで動揺していた人々が動き出す。アントリニアーノジュニアの銃を奪い、放心状態の彼をどこか別の場所に移動させようとする者達や、エレノアに近づきエレノアの介抱をする者など、各々の行動によって自体は終息に向かいつつあった。


ーーー1時間後ーーー


そこには目が腫れ、青白い、血の気の引いた、今にも倒れてしまいそうな儚げな少女が、その少女の体格には似つかわしくない、大人用の大きめのソファーの上にちょこんと、丁寧に座っていた。幾分か落ち着きを取り戻した様子のその儚げで可憐な少女は、目の前においてある湯気の立った紅茶を一口軽くすすり


「皆さん、私が至らないばかりにこのような事になってしまい…申し訳ありません…」


そう言ってホッと大きくため息を付く。


精巧な氷細工のような、触ったら崩れ落ちてしまうかもしれない、そんな印象のその少女にどのような言葉をかけて良いものか?人々が沈黙している中、デリウスが口を開く。


「…なぁに、お嬢のせいだけじゃありやせんぜ…お嬢は俺たちの為に本当によくやってくれた。俺はもうジュリアーノのバァサンに殺される覚悟だったんでさぁ、それをお嬢は…お嬢はそんな俺なんかの為にバァサンとの中を取り持ってくれて…俺は本当にお嬢に感謝してやすぜ…」


「…デリウスさん。ありがとうございます… そう言われて、少し、気持ちが楽になります。」


両手で持っている紅茶のティーカップを暫くじっと見つめ、それから、覚悟を決めた顔立ちをし


「…皆さん、ここで立ち止まっても何も始まりませんし死んでしまったフリオさんも浮ばれません。確かにフリオさんは良い人間ではありませんでした。しかし…殺される程の悪人でもありません…私は、今回の会合で何とかフリオさんには穏便に事を納めて頂くよう邁進しておりました。」


「残念ながら、このような結果になってはしまいましたが、わたくしは、今回の会合を必ず成功させたいと思います。それがフリオ財務局長への、我々のせめてもの(餞)はなむけに…」


滲み出る涙をぐっとこらえ、指でそれを払いのけ、エレノアが静かに語りかける。


「…デリウスさん、若輩者で世間知らずのわたくしを信頼してくださり、又、このような大きな場所を交渉する権限を頂き大変感謝しております。」


「ダスティアーノさん…このような結果になってしまいましたが、貴方が殺めたフリオ財務局長の為にも、是非とも我々と協力していただけませんでしょうか?」


「わたくしは、若輩者で至らぬ事も多々あると思います。しかし、死んでしまったフリオ局長の為にも是非とも皆様のお力を、このわたくしエレノアにお貸しください!」


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