Happy birthday us.
こんにちは、葵枝燕です。
タイトルの「Happy birthday us.」は、日本語に訳すと〝誕生日おめでとう私達〟になりますかね。Googleさんの翻訳機能に頼りました。
それでは、どうぞご覧ください。
「誕生日おめでとう」
永依は呟いて、ワイングラスに入った紫色の液体を飲み干した。ワイングラスに注がれているというだけで、それは赤ワインのように見える。しかし、その正体はアルコールなど一切入っていないブドウジュースであった。年齢的に酒が飲めないわけではなく、単に酒が苦手なだけだった。それでも形だけは整えたいという、そんな意思の表れがワイングラスに注がれていたブドウジュースだ。
永依はこの日、二十一歳の誕生日を迎えた。そんな一生に一度の記念日に一人、自室で誕生日を祝っている様はどう映るだろう。哀れまれこそすれ、褒められたものではないのだろう――と、永依はひっそりと思う。しかし当の本人は、そんなことを感じていなかった。
通っている大学の友人には、祝いの言葉と共にプレゼントももらったし、「せっかくだから、飲みに行こう」とも提案された。アルバイト先であるケーキ屋の人々は、誕生日ケーキをワンホール準備して、それなりに祝ってくれた。永依としては、自分の誕生日祝いはそれだけでも充分だったのだ。
そうそれは、あくまでも自分の誕生日のみに関しての話だ。
自身のワイングラスに、先ほどと同じようにブドウジュースを注ぐ。それを口元に持っていきかけて、永依は手を止めた。そして、自分と向かい合う形で置かれたそれらに視線を合わす。
そこには、永依と瓜二つな顔をした、一人の女性の写真。そして、ワイングラスが一脚。
永依は、持っていたグラスをテーブルに戻した。それから、向かいに置かれたワイングラスに、なみなみと果汁百パーセントのオレンジジュースを注ぐ。それは、写真に写った女性が好んで飲んでいた飲み物だった。
「寧依」
今年も、一緒にまた一つ歳を取るはずだった相手の名前を呼ぶ。
「寧依も、誕生日おめでとう」
彼女の誕生日を祝うことに、きっと意味はないだろう。それでも、祝いたかったのだ。
グラスを合わせる代わりに、軽く掲げてみる。こちらを見つめ微笑む女性と視線を交わし、永依はあらためてブドウジュースに口を付けた。冷えた液体が喉を伝い落ちる。
そして、永依はそっと思ったのだった。
(誕生日おめでとう、私達)
『Happy birthday us.』、読んでくださりありがとうございます。
ここで少し解説というか、設定など書いておきます。
永依さんと寧依さんは、双子の姉妹です。永依さんがお姉さんで、寧依さんが妹、ですね。ちなみに寧依さん、〝テイ〟とか〝メイ〟とか〝レイ〟とか、そういった名前が候補に挙がっていました。結局、〝ネイ〟になりましたが。考えたら、別作品に〝レイ〟っていましたしね。
さて、寧依さんですが、写真しかないところをみるとこの世に生きていないと思われるかもしれません。実際、作者もそのつもりで書いてます。でも、何もそうでなくてもいいと思っているのです。例えば、海外に留学してるとか、それでなくても北海道と沖縄くらい離れたとこにいるとか、そういうのでもいいのかもって思うんです。丸投げかもしれませんが、読者の想像に任せます!
というわけで、読んでくださりありがとうございました。