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小さなお友達

 小さなお友達の好みは、本当に様々だった。

あの子はズボンにカッターシャツ。

この子はハイウェストのワンピース。

その子はフリフリのキャミソールにミニスカート。


 服だけじゃなく、靴下や靴も欲しいと身振りで示されて、彼女は笑いながらその希望を叶えた。

靴下や靴にも、それぞれ好みがあって中々面白い。

そうして希望を叶えていくと、小さなお友達に変化が表れた。

ある者は、大きさはそのままに大人っぽくすんなりとした肢体をもつ女性の姿に。

またある者は、綿菓子の様な可愛らしい少女の姿へ。

性別の無かった彼等の中に、今は男性の姿も混じっている。

年齢や姿はやはり様々ではあるけれど。


 彼女にとって嬉しい事に、変化はそれだけではなかった。

それまで、割と受動的だった彼等が彼女におねだりをするようになったのだ。

おねだりと言っても可愛らしいもので、彼等は彼女の歌を聞きたがる。

そうして彼女がおねだりに応えて歌を歌うと、その内彼等も一緒になって歌う様になったのだ。


 これは、彼女にとって驚きであると同時に、何よりも嬉しい贈り物となった。

彼女が歌うと、彼等はそれに合わせてハミングを返して楽しげに体を揺らす。

楽しく一緒に歌う内に、一部の者はそのまま踊り出すのだ。

踊り出すのは決まってちんまりむっちりしたお友達で、よたよたとした足取りと、それに合わせてぷるぷると震えるほっぺがとても愛らしい。

たまに転げてしまい、その失敗を無かった事にしようと澄まし顔で踊りに加わり直すのを見る度に、彼女の口からは笑い声が漏れる。


 彼等が歌ったり踊ったりする事が好きらしいと考えた彼女は、贈り物を思いつく。

それを手にした時にどんな表情を浮かべるのだろうかと、想像をめぐらすと自然に頬が緩む。

彼女は淡い橙の種を作ると、力ある言葉を唱えた。


「種よ種。綺麗な音色を奏でる多様な楽器を実らせて。」


 言葉に応えて、種は育つ。

すくすくと育った小さな木は、お友達の手に丁度良いものから彼等の身長に近いものまで、様々な大きさの実を付ける。

彼女がそれを収穫して、彼等の前で実をひとつ割ってみると、中からは小さな小さなバイオリン。

それを見た小さな友人達は、早速その小さな小さな楽器の取り合いを始めた。


「みんなに行きわたるだけ、たーくさんあるから落ち着いて。」


 その声に、喜びの声を上げると彼等は、彼女が次々と実を割っていくのを嬉しげに見守りはじめる。

そして、みんなに楽器が行きわたると、楽しい演奏会が始まった。

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