始まり
これは世界征服を目指す大魔王、九郎の物語である。
この日九郎のもとには勇者たちがやってきていた。もちろん目的は九郎の討伐だ。
「なんで俺たちを殺さないんだ!?どうせ国に戻ったって大魔王を倒せなかった役立たず扱いされるんだ!今でさえ雑務をいいようにやらされ寝床は馬小屋、それに食事だってろくなもんじゃない。こんな暮らしがもっと悪くなるんだったら死んだ方がましだ!!」
「何、貴様たちはそんな扱いを受けているのか?」
「ああ、勇者なんて名ばかりでただ働きの傭兵みたいなもんさ。むしろ王族の奴隷だよ。」
「それでなぜ貴様たちはそんな国のために命を賭ける?肉親を人質にでもとられたか。」
「その通りだ。だがなぜそんなことを聞く。」
「さぁな。ここで提案だが俺に仕えないか?そうすればお前たちの仕えるエクテリア王国の支配権をやろう。当分は無理だろうができるだけ急ぐぞ。」
「なんで俺たちがお前に!」
「人質が開放されればお前たちがエクテリア王国に所属する理由はなくなるだろう?少々腹が立ったのでな。潰してくる。ああ、無論民には手を出さん。」
「なんでお前はそんなことを・・・。」
「命を賭けて戦う者は素晴らしい。そんな者たちを不当に扱うくずが許せないだけだ。約束だからな!仕えろよ!?」
そう言うと九郎は大きな3つ足の烏に変化した。九郎は大八咫烏という魔物に変化できる鳥魔族だった。他にも獣魔族や魚魔族もいる。そのまま九郎はエクテリア城についた。
「なんだ、貴様は!」
当然衛兵が止めようとする。しかし
「黙れ。死にたくなければ通らせろ。死にたいのならその通りにしてやる。名乗るのが遅れたが俺は大魔王九郎だ。これよりこの城は崩れるぞ。」
そう言って睨むとそれだけで怯えて駆けていった。そして門をぶち破るなどということはなく普通に開けて通過。先に地下牢へ向かう。
牢の番をしていた兵士に勇者たちの人質はどこかと聞く。答えなかったから壁を殴って嚇したらすぐにべらべらと喋りだした。
勇者のたちの家族を逃がした九郎は王のいる階へ行く。もちろん兵士に取り囲まれる。
「今すぐに武器を捨てて跪け!」
九郎の武器は刀だ。しかしそれを捨てることはない。
「こちらからも言っておこう。今すぐに武器を捨てて跪け。」
「何だと!?ふざけるなよ!!」
「はぁ・・・雑魚ほどよく吠えるな。黒之波動」
この一撃で全滅。誰も止める者なく王のいる部屋にたどり着いた。
「なんだ貴様はぁ!!」
「大魔王九郎だ。1つだけ聞く。勇者はどのような待遇を受けているのだ。」
「安い金でこきつかってやっているさ。人質もとっているから反逆の心配もない。だが貴様がここにいるということはやつらは負けたか。役立たずどもめ。」
役立たずという言葉が九郎君の逆鱗に触れた。
「天帝之憤怒」
九郎が手を天に向けると金色の光が九郎の手を包む。そしてそれを一気に降り下ろすと城は消滅していた。
住民街の方へ行き高らかに宣言をする。
「王は死にその象徴である城も崩れた。これよりこの国を大魔王領とする!」
怯えている民も多かったようだ。
「安心しろ。理不尽な圧政を敷いたりはしない。いずれは貴様らの気持ちがわかるような者に統治を任せる。勇者も無事だ。この国の王は命を賭け我々と戦う勇者たちを奴隷のごとく扱っていた。それゆえに殺した。俺は理由がなければ殺しはしない。まずは新しい法律を作らねばな。貴様らが自由に暮らせるように。」
ここまで言った時点で先王の統治への不満や九郎を支持する声もあがり始めた。しかしこれからが本番だ。まだまだ大魔王九郎の行く先は険しい。