些細な動機 2
月森は突然怒り出した。
「あの社長はやってもいない痴漢の濡れ衣を着せた。この前のヨーロッパでの商談でもそうだ。あの社長はヨーロッパの有名美術館で絵画鑑賞をして商談に遅刻しかけた。その責任を私に着せて。だいたいこの程度の恨みで人を殺していたら今頃刑務所の中で人口爆発が起きますよ。刑事さん私が容疑者なんてつまらないことを言わないでください」
木原は質問をする。
「では午後十二時頃何をしていましたか」
「アリバイですか。昼食を食べに行っていましたよ。証人はいませんがね。近くにある隅田公園で弁当を食べることが日課になっていましてね」
アリバイを確認した神津は月森に頭を下げた。
「ありがとうございました。」
二人は帰ろうとした。しかし木原は引き返した。
「月森さん。この会社では絵画の取引は行っていますか」
「いいえ」
木原は帰ろうとしたが再びあることを思い出したようにもう一度引き返した。
「すっかり忘れていました。あなたは絵画に興味がありますか」
「ないですよ。ヨーロッパの美術館で見たくもない絵画を見せられたからあそこまで怒っているのです。遅刻の責任を取って謝罪したくらいでは怒りませんよ。まあ趣味の野球には興味があったようでしたが。今もこの鞄に野球道具は入っています」
「ありがとうございました」