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諦めた夢 2
小川は笑った。
「美術コンクールで最優秀賞を取ったとしても上には上がいる。画家という職業も厳しいからね。ピカソだって生きている内は駄作と言われ有名にはなれなかった。生きている時に巨匠となれる人は少ない。だけど夢はあきらめていない。松原雲彩先生の主催する風景画コンクールにかけているから。まあ趣味でドローイングはしていますが」
ドローイングという聞きなれない言葉に合田は首を傾げる。大野は補足をした。
「ドローイングというのは炭を使ったデッサンですよ」
大野は思い出した。
「そうです。ドローイングです。被害者の中林敦さんはドローイングを描いていたのではないのでしょうか。その証拠に彼の右手には炭が付着していました」
合田は相槌を打つ。
「そうとも考えられるな」
すると小川が割って入ってきた。
「そういえば月森君から聞いたことがあります。中林敦は若いころ画家だったって」
大野は本題であるアポを取ろうとした。
「今岡正巳館長に会わせていただけますか」
「いいですよ」