取調
午前十一時三十分。警視庁の取り調べ室で熊田の事情聴取が始まった。熊田は一生懸命訴える。
「だから俺は殺人なんてしていない。麻薬の取引に中林さんの家に行ったらコレクションルームにはいなかったから周りをうろついていただけです。今日は麻薬取引について相談したいことがあるという匿名の電話があったから相談相手を待っていただけで」
須田は質問をする。
「ではその相談相手の声に心当たりは」
「さあ。変声器で声を変えていたようだったので性別や年齢は分からない」
「なぜジャージを捨てた」
「あんなジャージを持っていたら犯人だと疑われる可能性があったからだ。十二時四十分頃に行った時には鍵が掛っていてドアノブには血が着いていたからな」
その様子をミラー越しに合田と大野は見ていた。
「つまり犯行時刻は十二時から十二時四十分の間」
大野は呟く。
「この事件は本当に流星会の口封じだったのでしょうか」
「組織犯罪対策課の事件だとすればその動機が適当だろう」
丁度その時大野の携帯が鳴った。その報告に大野は驚く。
「それは本当ですか。ありがとうございました」
大野は電話を切り合田に報告した。
「朗報です。容疑者が五人になるかもしれません・・」