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中林家に集う容疑者たち 2
中林教授の勧めを聞き話声のするリビングに二人は入る。三人の男は椅子に座っていた。
その中で黒いスーツを着た男が激しく玲子を説得している。
「良い話でしょう。あのコレクションルームに飾ってある絵画を全て売っていただければ三億円払います。これであなたの借金が払えます」
その右隣に座っている小太りの男は反論する。
「そんな口車に乗ってはいけない。俺は生前敦君と約束をした。自分が死んだらコレクションを全て俺に譲ると。奥さん。どうか敦君との約束を守らせてくれよ」
玲子の隣に座っている白ひげの男が鼻で笑った。
「でまかせじゃ。敦君は全てあんたに譲るとは言っていないのじゃよ。彼が気にいっていた松原雲彩の四大天使だけはわしの経営する東都美術館の物じゃ。これだけは誰にも渡さん。もう売約済みじゃ」
「その絵画は捜査が終わるまで我々警察が預かります」
三人の男は声のする方を見る。木原と神津は警察手帳を掲示した。
「警察です。少し話を聞かせていただけませんか」