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コクハク(密室)

 「…………へっ??」


 急に飛躍した話にフェイトは着いて行く事が出来なかった。


 「待て……待ってくれ、いや、今そんな場だっけ?」


 フェイトが戸惑うのも無理はないが、レイが抑えてきた気持ちも理解出来る。

 第三者から見ればどちらが悪いとは言い切れないが、それでも敢えてジャッジを付けるのであれば、レイが早急であったとみる。


 「姉さん、ちょっと性急過ぎじゃない?フェイトだって……ホラ、頭がついて行かなくてフリーズしてる」


 そうみてピアが仲裁に入ったのだが、レイは止まらなかった。


 「でも、でもずっとずっと言いたかったの!!フェイトが目を覚ましたら絶対に言うんだって決めてた」


 いやいやいや、レイの気持ちは嬉しいが本人抜きで話を進めないで欲しい。


 「レイ、レイ。分かった、レイの気持ちは本当に分かったから!」


 ひとまず取り為そうとフェイトが声を掛けるも、


 「フェイト、本当に分かった?伝わってくれた!?私、ずっとずっと待ってたんだよ、フェイトが入院をしてからようやく自分の気持ちに気付いて、ずっと……」


 いかんな、どうにもヒートアップが止まらない--と思った所に助けが来てくれた。




 

 「お兄ちゃん!!」


 アイリスが場の空気すら読まず、というよりドア越しでは分からなかったのだろうが乱入してきた。

 そういえばアイリスの学校にもちゃんと連絡が行ってたらしい。

 レイ達に比べて到着が遅かったのは一重に距離と足の差だろう。

 


 アイリスは脇目も振らずに一直線にフェイトのベッドまで駆けだすと、そのままの勢いで フェイトの胸へと飛び込んだ。



 さすがにその行動にはレイですら唖然と見守る他無く、先ほどまでの空気を蒸し返せるような雰囲気ではなかった。


 「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん!!良かった、本当に良かった!!」


 フェイトの胸の内で泣きじゃくるアイリスは、誰よりも寂しがっていたのだろう。

 レイが胸の内に抱く気持ちも強いが、長年兄を見て育ってきたアイリスもそれに負けない気持ちがあった。



 そんな妹に対して、フェイトは表情を柔らかくし、アイリスの頭を優しく撫でることにした。

 兄が今までずっと妹をあやすために行ってきた行為は、どうやら抜群の効果があったらしい。

 寂しがり屋で、甘えん坊なアイリスはしばしの間兄の胸の中でようやく再会出来た暖かな鼓動に身を委ねていた。






 しばらく後、フェイトは落ち着いたアイリスを引き剥がすと改めてレイに向き直る。


 「あー、でレイ。さっきの話なんだけど……」


 今ここで蒸し返すのはフェイトに取っても、レイに取っても気恥ずかしさの他無かったの だが、こういう事は早めに清算しておいた方がいい。


 「分かってる、確かに私が焦り過ぎてたわよ。--悪かったわね」


 レイだって感情が先走らなければ十分に頭が回るのだ、その理性で何とか自分の感情を宥めたらしい。

 が、そこを蒸し返したのは、


 「レイ、もしかしてお兄ちゃんに告白したの?」


 「ブッ!!」



 アイリスだった。……というより何でアイリスがその事を知っているんだ?

 そんな疑問は直ぐにアイリスの口から聞く事が出来た。






 「お兄ちゃん、レイはねお父さんやお母さんよりもずっと多く、長い時間お兄ちゃんのためだけにお見舞いに来てたんだよ?」




 …………えっ?




 初めて聞いた話だった。

 いや、そういった二ヶ月間の話を聞いていないのだから初耳なのはそうなのだが。

 

 これは、不意打ちで聞いたら----


 「アイリス!なんでそう簡単に言っちゃうのよ!!」


 一方のレイは知られたくなかったようだ。もしかしたらそういった部分で縛ってはいけないと配慮していたのかもしれない。

 

 --でも、でも聞いちゃったらこっちだって覚悟決めないと駄目じゃないかよ……!!


「----話は良く分かった。……でも、頼む、少しだけ時間をくれないか。さすがに色んな事を聞き過ぎてまだ頭の処理も感情の処理も追いつかない。

 必ず返事はするから、頼む」


 フェイトはレイに対して頭を下げた。


 「べ、別に頼まれたら頭なんか下げなくたって聞くわよ!フェイト頭上げて、そんなんじゃ調子狂っちゃうー!」


 なんて頭を抱えているレイをみると不謹慎ながらも、可愛いと思ってしまう。

 自分がまだまだ知らないレイの一面、それを全部知ってみたいと思うのは我が儘だろうか?



 今はまだ感情に整理が付かないけれど、いつかはこの感情にも名前が付くんだと思う。

 それは急いで見つけて間違えたくない名前、だからこそもうちょっとだけ待ってもらおう。


 「んじゃこの話は一旦終了、他にこの二ヶ月あった話聞かせてくれよ」


 そしてフェイトが話をねだり、上手く感情を切り替えたレイによって色々な事を聞いた。






 「なるほどな~確かに目まぐるしく変わったわ」


 レイが上級生を討ち果たした事、アイリスが突然火と水に関しては上級魔法が使えるようになったこと、ゲイトのランススタイルが変化したこと、ピアに関しては目立ったことはないが、ゲイトと付き合いだしたということが一番大きな変化だと思う。


そして



 「シンは修理中か……」


 自分の愛剣であり、相棒であり、最後に言葉を交わした戦友は、復帰段階だそうだ。

 ベッド脇にブレイヴフェニックスは立て掛けられあったが、中身であるシンがいないのは寂しい限りだ。


 「とは言ってもお父さん達の事だし、復旧は心配いらないと思うな」


 そう簡単に事を構えているのは勿論アイリスだった。


 「そうだな、創ったのも父さん達だし大丈夫だろう」


 フェイトは心の中で、シンが帰ってきたら真っ先に礼を言おうと思った。

 あの戦いを戦い抜けたのも、そして勝利を収めることが出来たのも一重にシンのおかげだと思うからだ。

 フェイトは一瞬ブレイヴフェニックスを手に取ろうかと悩んだが、結局はそのままの姿勢でいることを選んだ。





 「それで最後にはディーバか」


 ディーバは今も相変わらず多忙な毎日を送っているようだが、一ヶ月後に開かれる文化祭に対して早くも意見を欲しがっている。


 「そうね、私も案を幾つか送ってはいるんだけど全部草案止まりね。やっぱりフェイトに最終的には決めて欲しいみたい」


 全く持って厄介な話だった。今までディーバとは恋愛感情抜きで接していただけに、次会った時に平静でいられる自信がない。

 それに関してはレイも同じなので、この際全部棚上げで保留にする。


 「そうだな、俺もこの通り完治したわけだし、早々に退院して学校に戻るよ」




 剣を振りたい、という感覚は今も相変わらずあるし、何よりもレイに申し訳ないと思った。

 少なくとも、この病院から寮までは時間が掛かるし、今までの間知らなかったとはいえ通い続けさせたのだから今後は少しでもラクにさせてあげたい。


 「フェイト、復帰戦予約は俺な」


 と、今まで以上に陽気な声が届く。


 「なんだ、試してみたいのか?」


 その口調は挑発でもあり、興味でもある。ゲイトがどれだけ成長したか見たいのは、友人として当然だろう。


 「なら次は私ね」


 ピアが二番手として名乗りを挙げるが、


 「ピア目立って変化ないんじゃないの?」


 と思わず核心を突いてしまったのだが、ピアは少しだけ表情を迷わせても、いつもの勝ち気な笑顔のまま続けた。


 「なんだかんだでフェイトには負け越しだからね、病院で二ヶ月も寝たきりだったフェイトとは動きが違うわよ!」

 

 「待て、そりゃハイエナ理論じゃないか」


 「誰がハイエナよ!!」


 なんて、いつも通り怒らせてしまった。





 「勿論私もだ」

 

 レイもまるでお祭り騒ぎの一興であるかのように、立候補した。


 「うへ~レイは一番強くなってそうだからな~、お手柔らかに頼むぜ」


 「安心しろ、病人相手に全力で斬りかかる程勝ちには飢えていない」


 少しだけホッとした。

 二ヶ月もあれば、実力で置いていかれることなんてザラにある話だったからだ。

 とはいえ、レイだってその二ヶ月間ずっと自分の看病していてくれたのならば、レイだってそんなに鍛錬は積めていないはず。



 それでも勝ち気な表情を崩さないのは、ピアのお姉さんであり、フェイトが知っているレイその人だった。





 時間はあっという間に過ぎ、気付けば日も暮れており大分時間を使っていたようだ。


 「本当二ヶ月ってのは長いんだなあ」


 まるで自分が浦島太郎になった気分だ、誰からも情報に置いていかれてしまい、自分の親しい人間達の間ですら変化があった。

 そんな置いてけぼりの感覚は恐くもあったが、それでもこうして自分の傍で笑っていてくれる仲間がいれば、大丈夫だと思った。





 「んじゃフェイト、学校で会おうぜ」


 「待ってる、早く退院手続き済ませなさいよ」


 そう残してゲイトとピアが先に帰った。


 しばらくの間、アイリスとレイは入院していた時の病院の話等をしてくれて、これはこれで面白かった。

 その中でも、フェイトと同じく病院に担ぎ込まれたローウェン騎士団の安否を聞けたのも良かった。



 隊は壊滅こそしたものの、奇跡的に死者は0名。

 重傷者こそ多数出したものの、死者が出なかったのは救いだと思った。

 今はまだ本調子には程遠いが、<エデン>から<ロア>が淀みなく供給され、蓄えが出て来るようならば騎士団の重症者にも治癒魔法を使える。

 それはもう少し先になると思うが、本当に良かった。





 更にしばらくすると、アイリスの方が先に帰った。

 あの妹にしては気が利いたのか、完全にレイと二人きりにするためだけにわざと帰りやがった。

 --全く、そう思いつつもアイリスが少しだけ大人に近づいた気がした。



 昔からお兄ちゃんっこで、こんな状況ならば誰がいようがずっと泣きわめいて離さなかっただろうに、今は少しだけ分別が着くようになった。

 アイリスは相も変わらず溺愛している妹だが、その妹が成長して兄離れしていくのは嬉しくもあり、少しだけ寂しくもあった。





 レイもしばらくは残っていたが、病院食が部屋に運ばれてきた時には、ついでに席を離そうとしていた。

 なので今日一日と、それから二ヶ月もの間面倒を掛けた事について、今日の内に全部言葉にしておくことにする。


 「レイ、ちょっとだけいい?」


 看護婦が食事を運び終え、部屋から退出したのを見計らってフェイトはそう呼び止めていた。


 「どうしたの?まさか嫌いなものは食べたくないなんて言わないでしょうね?」


 「誰が言うか!アイリスの料理に比べれば地上で喰えない物なんか殆どない!」


 「それはそれでどうなのよ……」


 妹をいいように出汁にしてしまったが、そうではない。


 「違うって、あのさちょっと真面目な話」


 「何?」





 そう言って、部屋から出ようとしていたレイは改めてこちらに近づいて表情を正す。

 凛々しくもあり、可愛さと綺麗さが相まったとても可愛らしい女の子。

 騎士を目指す仲間としては心強い味方でもあり、遊び回る友達としても自分に持っていない魅力を振りまいてくれる。

 

 そんな女の子に、フェイトは改めて言葉を出した。



 「今日と、それから今まで二ヶ月間のこと。----本当に、ありがとう」


 頭を下げて、全身の感謝を込めてお辞儀する。


 「止めてったら、私が好きでやっていたことだし、お礼とかいいの」


 「いや、ちゃんと言わせてくれ。ありがとう。俺二ヶ月も置いてけぼりにされていてすっごい不安を感じたんだけどさ、

 --それでもレイがずっと俺の側にいてくれた、って思ったらなんか不安じゃなくてさ、むしろ嬉しさが沸いてくるんだ」


 レイはフェイトの言葉一つ一つを噛みしめながらも、聞き洩らさないよう真剣に聞いてくれている。


 「さっきの話、みんなと話しながらも考えてたし、やっぱレイが一番最初感情だけで突っ走ってきてくれた事考えるとさ、俺も理屈とか抜きに今の感情でぶつかった方がレイに答えられるんじゃないかと思って、やっぱ今日言うことにした」




 そこまで聞き終わり、レイの表情が少しだけ硬くなった気がした。

 --レイ、俺はいつからお前にそんな顔をさせちゃうようになったんだろうな?


 そして、フェイトは言葉を紡ぎ出す。




 「こんな俺だけど、レイさえ良ければ付き合って欲しい。----俺もレイの事もっとよく知りたいんだ」



■■■■■■




 「嘘……」


 フェイトの言葉に対して放たれた第一声はそれだった。

 もっとも、自分に都合が良すぎる言葉は往々にして疑われるのが世の常だ。

 フェイトはもう一度ちゃんと言葉にして返す。



 「本当だ、俺からお願いしたい。レイと付き合って、もっとレイのこと知ってみたいんだ」


 フェイトはこれ以上言う事が無いので、自分の偽らざる全てで答えたつもりだ。

 そのまま時が凍ったようにお互い言葉を発さないまま時間が過ぎ、ゆうに5分は過ぎた所でようやくレイから返事をもらえた。




 「本当にいいの?私じゃなくたってディーバだっているんだよ?」


 それはなんの比較は分からないが、今この場でフェイトがその気持ちに応えようと思ったのはレイだけだ。


 「俺はレイから告白されて、俺はそれに答えたんだ。なんでディーバをここで引き合いに出すんだ?」


 フェイトとしては、そこでディーバを引き合いにだす理由の方こそ分からない。


 「だってディーバだよ?私より全然綺麗だし、私より全然可愛いし、私より----」


 「待っーーた!!」


 このままでは永続ループになってしまうと思い、強引に流れを断ち切った。





 「レイ、卑屈になり過ぎ。俺の知ってるレイってそんなんじゃなくて、もっとなんつーかハッキリしてたぞ?」


 と言葉にしてみるが、これには効果があったようでレイが目を丸くしている。

 だが、それもしばらくしてみると徐々に柔らかくなり最後には微笑みかけるようにして、教えてくれた。


 「そういう女の子、の私もいるんだよ?今まで見せていなかっただけで」


 これには面食らってしまった。



 (……早速教えてもらっちゃったな、レイの一面)



 こちらもなんだか照れ臭くなって、レイを直視出来ない。

 けれど、レイはこちらに近寄ってきてわざわざ顔を覗き込むように顔を接近させる。


 「近い近いっ!!」


 「フェイト」


 なんだか楽しそうに、そしてはにかむレイにフェイトは意識を持っていかれてしまった。


 (本っ当、可愛いよなレイ)


 そんなことを思っていると、そのまま二人の顔が近づき----




 唇と唇が一瞬だけ、触れ合った





 「--レイ?」


 離れた温もりと、僅かに残る確かな鼓動。

 何よりレイの女の子独特の甘い匂いが鼻孔をくすぐり、まるで花畑で蜜を舐めたように心地良く甘かった。

 最後に飛びっきりに微笑んで、クルンとターンしながらレイは離れていった。



 「ずっと我慢してたから、もらっちゃった。--フェイトのファーストキス」


 耳まで真っ赤になりながらも、そう宣言して帰っていったレイ。





 …………しばらく沈黙したままフリーズが解けないフェイト。

 ようやく意識が戻ると、そこにはレイはもういなかった。





 「俺、今、レイとキスしたの?」


 自分が知る限りは確かにファーストキスだ。彼女なんかいたことすらないのだから。

 ファーストキスって、なんだかもっとロマンチックな夜景とかの下交わすのかと思っていたけれど----


 「これはこれで----」



 嬉し恥ずかしかった。

 だが、何よりもキスされた事よりも、飛びっきりに微笑んだレイの笑顔が一番心に焼きついた。



 「うーーあーーー」


 思わず枕に顔を埋めて、ジタバタしてしまう。


 「俺が……俺が、レイの彼氏になったってか」


 なんだが彼氏という言葉が、まだ自分にはイマイチしっくりこない。



 どうにも、自分は女の子とは友達、もしくは姫、という感覚でしか接してこなかったからかもしれない。

 そう考えると、今後はレイが自分に取ってのお姫様ということになるのだろうか?



 「……なんか違うよーな、イメージが沸いてないからかな?」



 そんな悩みを抱えたまま過ごしていたフェイトに、食事を下げにきた看護婦がご飯はいらないのか、と脅されたのはまた別の話だった。





 それから夜遅くになったが、両親も来てくれてひとまず面会に訪れる人は打ち止めとなった。


 (シキブと九行先輩に関しては連絡はレイがするし、ディーバは文化祭の時か。

 他にはリードとアマリリス先輩位かな?先輩は明日辺り来る気がするけど)


 アマリリスもフェイトが目を覚ましたという事を知っていれば、直ぐに駆けつける人だ。

 レイ達も先生もうっかり忘れたに違いない。

 リードに関しては所在すら掴めないのだから、気の向いた時にまた会えればいいだろう。


 「とりあえず----寝る!」


 まだまだ頭の方もゴチャゴチャだし、身体も鈍ったままだが、ひとまずは眠って整理する事にした。


 「早く退院して、みんなの所に戻ろう」


 そう思ってフェイトは早めに床に着いた----






 翌日早朝に、アマリリスとリードが来てくれた。


 「先輩!?それにリードまで、どうしたんだこんな朝早くに」


 「それはこっちのセリフだ、どうして病室にいないんだ。全く、探したぞ」


 「フェイト、めっ」


 「いやはは」


 実はあれからサッパリと眠気が訪れなかったのだ。



 二ヶ月眠り続けたせいなのか、それともレイの告白に舞い上がっていたのかは定かではないが、それならということでコッソリ病室を抜け出し、素振りをする事にしていた。


 「全く、だが元気そうだな。体調の方はもういいのか?」


 気遣ってくれているのが分かるのが嬉しいが、僅かにだが怒っているような気がする?

気のせいかな?


 「大丈夫です!自分の身体は一番自分が分かってますから」


 なんて軽く言ってみるが、まだ表情が晴れる気配がない。

 はて、なんでかな?と思っていると、


 「全く--昨日は皆焦っていたのは分かるが、私だってずっと心配していたんだ。声を掛けてくれたっていいだろうに」


 「あっ----」


 そっか、やっぱり先輩はずっと心配してくれていたんだ。

 なんだか昨日は内輪の話みたいになって、ほぼ初期メンバーという構成で話してしまっていたのだ。


 それが、仲間外れみたいな感じで嫌だったんだろう。





 「すみません、俺がもうちょい早く気を回せれば良かったんですが……」


 やっぱりここは謝っておく、うん、何事に関しても謝罪は丁寧に。


 「まあいいさ、おかげでフェイトも無事だということが見て取れたしな」

 

 「フェイト、これ」


 とリードから差し出されたこの品は--退院祝いかな?


 「あげる」


 「……ありがと、リード」


 ここは大人の対応が出来たのを本当に褒めて欲しい、いや誰にかって?誰にでもだよ!



 もらったのは、ペロペロキャンディーだった……



 この歳になってこのキャンディーは舐めたくない。

 ----持ち帰ってアイリスにでもあげるか。そう密かに決定した。


 「それじゃあ私達はこれで帰ろうか」


 そう言って踵を返すアマリリスに、フェイトは知らず尋ねていた。


 「あれ?もう行っちゃうんですか?」


 その言葉にアマリリスは頷いた。


 「ああ、朝一番で来たのは悪いと思ったが、放課後まで待てなくてな。

 ----だから放課後改めてまた話にくるよ、今朝は無事な顔を見れてホッと出来た」


 そういってそのままリードも着いていってしまった。


 「フェイト、またね」


 リードも放課後一緒に来るのだろうか?


 「……分かんないけど、とりあえず俺は時間までは体動かしてよ」




 そしてフェイトは病院が稼働する時間まで、庭で素振りを続け、担当医に怒られるのであった----

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