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コイビト……!?

 「……早いもんだね、もう二カ月か」


 そんなため息交じりに呟く可憐な声は、病室のベッドの脇から発せられたものだった。


 「フェイト?そろそろ皆いつ治るんだ、いつだ?ってそわそわしてるんだよ?

 --もう、フェイトが起きたらなんていうかずっと前から考えてたんだから」


 優しい瞳で眠っているフェイトを見つめる少女の服は鮮烈な赤を基調とした、騎士学校ナイツォブラウンドの証。

 そっと前髪かき上げ、少しだけ膨れてみせる。



 「早く目を覚ましてよ、一杯喋りたいことがあるんだから----」



 季節は移ろい今は10月。

 そろそろ秋も深まる頃、紅葉のシーズンも夏休みの海水浴シーズンも遊びに出掛けなかった。

 騎士を目指してそろそろ半年、少女も今ではすっかり一人前の剣士となり上級生相手に模擬訓練をして勝ちを掴む程に成長していた。

 ふと、少女が横に目をやるとそこには見慣れた騎士剣が映った。






 この少年が入院することになるキッカケであった戦闘でも刃こぼれ一つせず、燃え尽きる事無く回収された少年だけの専用剣。

 だが、今はその剣が喋ることはない。

 元々剣が喋ること自体おかしかったと思うが、今では喋らない方がおかしいと思ってしまうのが慣れというものだった。


 「シンは今お父さんとお母さんがフェイトのために修復しているよ」


 剣自体の破損こそなかったものの、シンのプログラムは殆どが壊れており、なんとか記憶プログラムも再生しようと頑張っている所だった。

 少女は包帯で撒かれた少年の手を取ると、額を寄せて話しかける。


 「こんなにボロボロになって……本当にバカなんだから」




 コンコン


 控えめにノックされた戸は、ゆっくりと開かれた。

 もうそんな時間か、と窓の外を眺めてみれば成るほど、確かに日暮れが近い。


 「レイ、そろそろ交代」


 この時間に来て、控えめなノックをする人物に心当たりは一人しかいなかった。


 「分かった、アイリスも遅くならない内に帰るのよ?」


 「分かってるってば。もう、レイったら休みの日は一日中ここにいるんだから--そんなにお兄ちゃんの事好きなの?」



 女の子同士の軽いコミュニケーションは、もう何度繰り返されてきたのか分からない。

 アイリスは、何度も答えをもらっているにも関わらず何度も質問するのは、彼女なりのからかいなのかもしれない。

 だからレイは、毎回歯切れよくこう答える。



 「うん、フェイトの事大好きだよ」







 二ヶ月前、九頭竜神社にて古よりの怪物八岐大蛇が復活した。

 国もその事態を予見し、国の兵力の三分の一に当たる騎士団の大隊を送ったのだが、敢え無く全滅。

 その事態を救ったのが、騎士学校に通う少年フェイトだった。



 学生でありながら様々な危機に立ち向かっており、騎士であるにも関わらず扱いこなす高度な魔法は注目の的であった。

 騎士王と名高いアルト王とも面識があり、フェイトは騎士王よりこの世に一つしかない『赤魔騎士』という称号を授かったのだ。

 フェイトは赤魔騎士として、九頭竜神社の巫女姫シキブと知り合った後、守る事を約束する。

 だが、その約束を本人は絶対だと考えているようで、騎士団を潰走させた八岐大蛇にすら命を懸けて立ち向かってしまったのだ。

 彼にしか為せない自爆のような奇跡によって、八岐大蛇を討伐することに成功したものの、フェイトは瀕死の重傷を負ってしまった。

 常人ならば、そのまま植物人間になるか、生命力が尽きすでにこの世を去っていたかもしれないが、フェイトは運命に愛されているようで、生き残った。

 そして彼が持つ<エデン>という生命の根源は、彼を完治させる事が出来る奇跡の術でもあった。






 かくして、フェイトは<エデン>より湧き上がる<ロア>を蓄えるために入院しているのであった。

 しかし、<ロア>が溜まっていなければ奇跡は執行できないためこの二ヶ月の間意識を取り戻した事は一度も無かった。



 だが、それはある意味フェイトに取って救いであったのかもしれない。

 フェイトは重度の火傷を負っており、もし意識が先に戻るようであればその苦しみは想像を絶するからだ。

 一度包帯を変える作業を看護婦に頼みこみ手伝わせてもらったが、直視出来なかった。



 正直な所、吐くのを堪えるのが精一杯だったのだ。

 それほどまでに皮膚は爛れ、包帯を解くごとに浮かぶのは腐臭にも近いものがあり、耐えられなかった。

 自分の大好きな人であるにも関わらず、我慢することも出来なかった私は最低だと思う。

 その看護婦は以前は従軍婦でもあったようで、他の看護婦誰も包帯を変えたがらない中、唯一包帯を変えてくれる貴重な人材であった。




 一応補足するが、これに関してはレイは正常だと言わざるを得ない。

 何せフェイトの家族でも、フェイトの妹であるアイリスも駄目であったし、母親も駄目であった。

 唯一父親だけは我慢出来たようだが、それでも見たくなかった、と愚痴をこぼしているのをしばしば聞いた事がある。






 そんな状態の中ではあったが、フェイトの両親、アイリス、そしてレイは頻繁に病室を訪ねていた。

 親友であるゲイトとピア、それにアマリリス先輩もよく見舞いに来てくれるが、レイ程通い詰めてはいない。

 巫女姫シキブと九行なずな先輩は、ディーバに一喝されてからは一度も顔を見ていない。

 どうやら九行先輩は騎士学校を辞めたようで、今二人は諸国を旅して回っているらしい。

 自分と同じように伝統を受け継ぐ人達を巡って、その伝承が途切れていないか、という自分にしか出来ない事を見つけたようだ。




 この二人にも、フェイトが目を覚ましたら連絡を入れようと思っている。

 ディーバに関しては、公演が途切れることなく続いているため彼女の情報はよく入ってくる。

 ディーバはあの一件以来顔を出していないが、文化祭の話が私に来た辺り来月来国するのは間違いないようだ。



 最後にリードだが、リードは本当に気まぐれで三日続けて病室にいたと思えば、パッタリと一月以上姿を見せなかったりと、本当に野良猫のように気まぐれだ。

 ちなみに余談だが、見舞いの品で一番奇妙な物を持ってきたのもリードだ。

 マタタビ酒なんてどうすればいいのだろう?

 未成年であるため飲めないし、そもそもマタタビ酒って飲めるのか?という物議を醸し出した。





 反対に一番いい見舞いの品は、アルト王とユキ姫直筆の手紙だったと思う。

 お見舞いにはこれなかったようだが、それでも心配して手紙をくれる辺り紳士淑女だと思う。

 手紙が届いた日、あまりにも自分が驚いたため、もしかしたらフェイトも驚いて目を覚ますんじゃないかと思った時期もあった。

 --もちろん目を覚ます事は無かったのだが、その場の勢いとは恐い。

 発想が往々に飛ぶのは自分がまだ子供だからだろうか?




 そんな自分だが、これをキッカケに自分と向き合うことにした。

 そして、フェイトが好きだということを自分で認識して、向き合う事にした。


 だからこそ----


 「フェイト、早く目を覚ましてよ。--私、まだ告白すらしていないんだから」



 この少年はどれだけ女を待たせるのだろう?

 ディーバやシキブの例もあるし、意外と天性の女泣かせなのかもしれない、とちょっとだけ思った。






 しばらく後、いつものように学校でトレーニングを受けている最中教官であるギルバード先生が、息を切らしながらこちらに駆け寄ってきた。


 「病院から電話があったぞ!!フェイトが目を覚ました!!」


 その嬉しい知らせを聞いた瞬間、私はトレーニングの事等すっかりと放り出して早退手続きすら踏まずに学校を飛び出した。



 入学当初こそ真面目で、成績優秀の模範生と言われていたが、今やすっかりフェイトに悪影響されたのか規則を無視する癖がついてしまった。

 もっとも、それを分かった上で知らせてくれたのだろうからギルバード先生は、上手く誤魔化してくれるだろう。


 病院まで急ぐ----



 (フェイトに、会いたい!!!!)






 病院に着くと、そこにはまだ誰も着いていないようで病室の中には検査をしている医師と、看護婦、そして二ヶ月振りに起き上がったフェイトの姿があった。



 「フェイト!!」



 思わず大きくなる声も、医師達は苦笑するだけで咎める様子はない。

 ……二ヶ月も待たされたのだ、これ位は許されてもいいと思う。


 私はフェイトに近寄って、彼をまじまじと観察する。



 --------



 「うん、健康そのものみたいだね。--良かった」


 フェイトは既に<エデン>から治癒魔法を発動したようで、彼には火傷の跡も、生命力が尽き痩せこけた頬や腕もなく、何より生気溢れる瞳をしていた。



 「おかえり……フェイト」



 私の言葉にフェイトはしばらく考えこんだあと、こう返す。



 「ただいま、レイ」



 その言葉だけで十分だった----







 それから医師達が引きあげると、病室は二人きりとなった。


 (ああ、どうしよう!!話したいこと一杯あったのに!!)


 私のバカバカ!二ヵ月もあれば話すことなんて山のようにあるのに--フェイトの顔見てたら話したい事なんて全部吹っ飛んじゃった。

 そうして、沈黙が早々に流れるがフェイトも気にした風ではなく、むしろ私と同じように何を話そうか、何を聞こうか迷っているようだった。

 意を決して自分から話そう、と決心して--



 「「あのさ!!」」



 ……お見合いしてしまった。


 私のバカー!!思わず顔が熱くなり両手で隠すように覆う。


 「プッ……」


 そんな様子を、フェイトは笑い出した。


 「あはは、レイ似合わないって。レイずっと前にデートした時だって、耳が赤くなった位でポーカーフェイスしてた癖に」


 まだ笑っているフェイトに、こちらも恥ずかしさがどんどん高まり、その熱が勢い余って逆切れに繋がる。


 「目覚めて早々何それ!?こっちがどれだけ心配してたと思って----」





 あっ、駄目だ--

 そう思った時にはすでに遅く、涙が溢れて止まらなかった。


 「あ……」


 フェイトもようやく笑い止んだようで、今はオロオロしている。

 分かってるわよ、フェイトが女の涙に慣れてないこと位!

 だが、なんとか自分で涙を止めようと思っても止まらない--

 あれ、いつから私こんなに女の子女の子してたんだっけ?

 頭は回るのに、感情は止まらない。

 こんな悪循環を止めてくれたのは----



 ポンッ



 と頭を撫でてくれる手だった。




 未だ泣きやまないままで顔を上げると、そこにはやっぱり少し困ったような表情のフェイトがいて、それでも何とかしようとこちらの頭を撫でているのだった。

 不器用かと思えば、存外頭を撫でるペースやタイミングは心地良く、しばらく撫で続けられれば不思議な事に私は泣きやんでいた。




 私が泣きやむと、フェイトは困った表情を少しだけはにかんだ表情に変えて言葉を掛けてくれる。


 「ごめん、レイの事考えて無かったな。……っても聞かなきゃ分からない事多いし、レイに聞いてもいいかな?」


 それは私だからって考えてもいいのかな?

 フェイトに頼られて嬉しいと感じる私は泣きやむと、姿勢を正して近くの椅子に腰かけた。


 「分かってる、フェイトまだ状況が整理出来てないもんね。……全部話すよ」


 フェイトが撫でるのを辞めると、少しだけ惜しいな、という感情が表に出そうになるが何とか押し留める。

 そして口を開こうとした瞬間----




「あのーお邪魔じゃなきゃ俺らも入っていいでしょうか?」




 なんて、バカげた口調で聞いてくる親友達の姿があった。


 「ゲイト、ピア!!いつから!?」


 述語は抜けたがそれでも彼らには伝わったらしい。



 「結構前から……姉さん、可愛い」


 …………妹に今まで一度も見せた事の無かった泣き声を聞かれた、初めての時でもあった。




■■■■■■




 「コホン、それはそれとして」


 レイがわざとらしい咳払いと共に話を再開しようとしていた。

 最もこれは観察してみるからに、今までの流れを無かったことにしたいんだと分かる。

 まあ、自分もレイを撫でていたということに突っ込まれると、気恥ずかしさが込み上げてくるからその点はレイに同意だ。


 「それでフェイト、まずあなたは二ヶ月眠ったままだったの」


 そう、レイから告げられた。

 

 ----二ヶ月。


 自分には意識がないから良く分からないが、ドッキリを仕掛けるような奴らじゃないし、それは純然たる事実なのだろう。

 いや、二ヶ月掛かったとはいえ今は命が助かった事を喜ぶべきか。


 「その間の事についてだけど、フェイトの知り合い殆どに連絡したわ。アルト王やユキ姫もそうだし、勿論ディーバも」


 「アルト王達にも!?」


 そんなに大事になっているとは露ほども思っていなかったため、飛び上がるほどにビックリした。



 「それじゃまずこっちから。……ハイ、アルト王とユキ姫からの手紙よ」


 そしてレイから手渡された手紙には----


 「本物だ……」


 騎士王アルト・アヴァロン、グランドプリンセス・ユキ・アヴァロンからの直筆の手紙だった。


 「ちょっと読ませて」


 そう先に断りを入れて、フェイトは急いで手紙を読み始めた。






 「親愛なるフェイトへ

 この手紙を受け取った時、まだ君の意識は戻っていないと思う。

 だが、私達もとても心配していることをここに記しておく。

 残念だが国事が多忙で見舞いにいくことはとうとう叶わなかったが、それでも遥か遠い異国の地より、君の無事を願っている。

 フェイト、あまり無茶ばかりしないように。



 フェイト、この手紙を読んでいる時にはもう回復している事でしょう。

 あなたの<エデン>にはとても驚きましたし、運命の行く末は自分で決めたいとフェイトならばそう言うでしょう。

 しかし、今回の件で回りへ掛けた迷惑については反省するべきです。

 ご家族や親友、ご学友の方々への陳謝を怠ってはなりません。

 特にあなたは姫の心を預かる騎士として、姫に対してあまり心配をかけないように。

 私自身アルトが出立する度に不安で胸を痛めるのですから、女性は誰でも大切な人をいつでも心配しているということを常々忘れ無きように。



 最後になりますが

 フェイト、本当に無事で良かった。

 本当は飛んでお見舞いに行きたい所でしたが、行けなかった事を素直に謝らせて下さい。

 フェイト、本当にごめんなさい。

 次、いつローウェンを訪れる事が出来るか分かりませんが、なるべく早く会いに行けるようにします。



 追伸

 フェイトからアヴァロンに来て!


 ユキの我が儘だ、公事以外で口を出すのは珍しいため私としてもきいてやりたい。

 それにフェイトにはまた新しいマントが必要だと思う。

 既に織らせているので、是非取りにきて欲しい。

 私の心からの友として、君が今回無事だった事を喜びたい。」







 手紙の内容はそれで終わりだった。


 「……フェイト?」


 レイが心配そうに尋ねてくるが、フェイトは顔を下に向けるとレイ達に向けこう言った。


 「……少しだけ、泣かせてくれないか?」


 その言葉にレイ達は頷くと、フェイトを嗚咽を必死に押し込みながらも思うままに泣いた。

 暖かい言葉がたくさん詰まった、大切な大切な手紙を胸に抱えて----






 しばらくして、フェイトが泣きやみレイ達に向き直ると、


 「悪い、続き、いいか?」


 そう話の続きをせがんだ。


 「分かった」


 そうしてレイは続きを語り始めた。



 ひとまずフェイトが入院した日のことを話終えると、フェイトは息を吐きだした。


 「……ディーバまで、っていうかそれ俺に伝えて良かったのか?」


 レイは当時の会話を余すところなく伝えた。

 勿論、ディーバがフェイトを好きだと断言したことも、ディーバがシキブに絶交宣言をしたことも。


 「……シキブと九行先輩には後で俺から連絡するよ」


 そう言ったが、


 「駄目、私から連絡する。シキブ達は直接ここに来るまでフェイトの声を聞いちゃ駄目なんだよ」


 何故かレイにそう言いきられてしまい、当時の会話を聞いただけの身のフェイトとしては頷く他に無かった。


 「それから?」




 それから、というのはこの二ヶ月の話だろう。

 レイはちらっ、と隣の二人に視線を送ると二人がフェイトに改めて向き直る。



 「フェイト、驚かないで聞いて欲しい」


 なんてゲイトがやけに強張った表情をしているため、フェイトは何事かと構えて心の準備をした。


 「実は……その、実はーーだな……あーっと」


 折角心の準備をしたのだから、こんな煮え切らないのは勘弁して欲しい。


 「早く言ってくれよ、俺の心臓が持たねえよ」


 レイが肘でゲイトと突っつくが、ゲイトはあーとかうーとか漏らすだけで一向に進む気配がない。


 それに見かねたのか、それとも呆れたのかピアが先に言葉にした。


 「私とゲイト、夏休みから付き合い始めたの」






 …………ハッ?


 いやいやいやいや、なんか話が急展開過ぎて着いていけない、と言った表情でレイに助けを求めるように視線を戻すと。


 「そうなの。この二人付き合うことになったのよ」


 なんて、簡単に肯定された。


 ……待て待て待て、ということは!!!!


 「ゲイト!お前彼女持ちになったっていうのか!?」


 なんて八つ当たりを叫ぶことになった。


 「そこかよ!?」


 予想された突っ込みがこなかったようで、いつもの四人漫才の様子を呈し始めたが、いつものようにレイが収めにかかった。




 「ハイハイ、ストップストップ!違うでしょ、フェイト。こういう時は?」


 なんてお姉さん振った言い方をするレイだが、この場合は素直に折れた方が得だと思い言葉に出す。


 「おめでとう、ゲイトずっとピアの事好きだったもんな。二人が今も幸せそうで良かったよ」


 なんて笑顔で祝福した。





 のだが、


 「待て、待て待て待て、俺フェイトにピアが好きだっていう恋バナしたことないんだが?」


 とゲイトが疑うような声を出して聞いた。

 それに対してフェイトはあっけらかんに答えてみせる。


 「いや、だってなあ、いっつも教室に居る時にピアのことばっか気にしてたし、そうじゃないかなーって思ってたんだよ」


 恋愛に対し鈍いかと思っていたら、意外な所だけは鋭かったフェイトに対してゲイトはウッと息を詰まらせる。

 そこにまさかの追撃を掛けるように、


 「私だって分かってたわよ。むしろピアがいつ気付くかなーって思ってた位だし。

 ……やっぱり言わなきゃ気付かなかったけどね」


 「姉さんまで!?」


 とまさかのコンボが決まり、幸せ報告した二人はこうして無事に親友達に認められ、からかわれたのであった。






 二人の報告が終わった所で一段落着き、改めてレイに視線を向ける。


 「しっかしゲイトとピアが恋人同士かー。いいなあ、俺にはまだお姫様が見つからないし」


 なんていうフェイトに対しゲイトから突っ込みが入った。


 「お前な……ユキ姫と知り合って、ディーバからは好き発言もらって、アマリリス先輩と仲良くなって、しまいには巫女姫シキブをぞっこんにさせたんだろ?

 これ以上何を望んでんだよ、この色ボケ男!!」



 まさかの病人に対して突っ込みとはいえ暴力が振るわれた瞬間であった。


 「痛え!?病人をぶったな!?」


 なんて子供の喧嘩が勃発しそうな予感をレイが先に止める。


 「ハイハイそこまで!……ピア、ゲイト位抑えてよ」


 「姉さん、どっちかというと今のフェイトが悪い」


 と、本当の意味での正論はゲイト達にあった。

 フェイトを庇うのは、一重にレイが盲目であるからだろう。





 その流れ、という訳ではないがレイは二人を収めるとフェイトに向き直った。

 おっ、とフェイトが思って姿勢を正す様はお互いを習熟し合った夫婦のようにも見える。

 そんな以心伝心にレイは心を焦がしながらも、今しかないと思って勢いに任せて今まで二ヶ月の間ずっと言えなかった言葉を口にした。



 「フェイト!!私、フェイトが好きなの!!フェイトが入院して……ううん、フェイトが死にかけてようやく分かった。

 この気持ちは本物だって、ディーバにも誰にも絶対負けたくないって!!


 だから言うね、フェイト、私と付き合って!!!!」





 10月も中頃

 

 季節外れの夏の恋が、残暑恋をを引きずるかのように秋に遅咲いた----

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