校内大会 開催 個人戦
週末、本日の授業は全て無くなり、午前中より校内大会が開催される。
「いよいよだな」
柄にもなく緊張するフェイトに、隣のゲイトが気楽に話しかける。
「何緊張してんだよ?相手は俺らと同学年の1年だぞ?」
「そうよ、大した事ないわ。……アマリリス先輩相手に三日も練習してると、同級生位じゃ止まって見えそう」
苦笑交じりのピアに励まされると、バチン、と頬を叩き気合を入れ直す。
「うし、行くか!!」
校庭で集合している1年生、各クラス毎に分かれているため今隣にレイはいないが、校庭のどこかにはいるのだろう。
……しばらくすると、校長であるライト・ローリングが壇上に姿を現す。
「皆さん、おはようございます。良い天気に恵まれ、本日第29回ナイツォブラウンド校内大会を開催致します。--まず、始めに退屈でしょうが私の話を」
騎士見習いの1年生は総じて身を引き締め、校長の言葉を待つ。
「騎士とは、お行儀がいいだけの世界ではありません。私もかつてのアヴァロン王に仕えていたころから、そう思っていました」
「アヴァロンの前王と知り合い?」
「シッ!」
ピアに諭され、質問は空振りをする。
「その頃からアルトと知己であり、競争相手でもあり、よき友人でもありました。……そして私は騎士という過酷な任務に耐えきることが出来ず、ドロップアウトをしました。それは皆さん御存知の通りでしょうが」
いや、フェイトは知らない。何故なら入学式に不参加だったからだ。
「だからこそ、諸君らに今一度問いたいのです。……本当に騎士になりたいのか、と」
誰も返事を返さない……礼儀上今は校長先生の話を聞くのが正しいのだろうが、それは違うと思う。
思ったこと、心に秘めた事は声に出さなくては!
「なりたいです!!!!」
一際大きな声を張り上げ、フェイトは校庭中からの視線という視線全てを受け止めた。
生徒からも、友人からも、教師からも、そして校長からも----
「良き日です。そう、フェイト君の言う通り、ここで声を張り上げられない騎士が多くなってきたからこそ、最近の騎士の質は落ちてきました」
……どうやら校長先生はこの展開を読んでいた訳ではないようだが、フォローによって救われた。
フェイトがホッと胸を撫で下ろしていると、
「アルトは常に声を大にして叫んでいた。この国はもっとこうあるべきだ、と。その前向きな意志に羨望が集まり、信頼を得る事となって、王や姫に召し抱えられるようになり、ついには国王となったのだ。だが、最近の騎士は優秀な主に仕えることが出来れば、それだけだ。お行儀が良いだけだから護衛にしかならない。
よいか?騎士とは誰よりも国を愛し、誰よりも王を理解し、誰よりも体を張らねばならない!!今年声を張り上げられたフェイトを見習い、皆も精進を怠らないよう邁進するよう。--私からは、以上だ」
ライト・ローリングが壇上を降りると、奇妙なざわつきが伝染するように辺りを伝わってきた。
皆騎士の素行を嗜むばかりに、お行儀の良さと皮肉られてしまい胸の内を抉られたような感情なのだろう。
そして、唯一声を張り上げたフェイトは、既に「赤魔騎士」という騎士の称号を得ている。
--実績に裏打ちされた行動、それが誰も反論出来ないからこそ悔しかったのだ。
「フェイト、私負けないから」
「その通りだ、俺も負けないぜ」
だが、友人もそうであるように、一度注意されたのならば直ぐに物にし同じ轍は踏まない。
素早く立ち直って宣戦布告する友人達は、頼もしくも思えた。
続いては、1年生教師代表でギルバードが壇上に立つ。
「さて、私からは手短に。今年入学した新入生はおよそ800人。一月経て何人残っているかというと、500人。既に300人は訓練の厳しさに耐えきれず退学届を出した」
300人、まさかたった一月で300人とは予想もしなかった。
「年間600人程退学者が出てしまう現状はいかんともし難いものだが、諸君らが後200人程辞めるというのは毎年恒例なのでもはや止める気にもなれん。
……だからこそ声を大にして言おう。お前ら!この校内戦に命を賭けて望んでこい!!それすら出来ない奴は遠からず脱落するんだ、他の生徒のために今すぐ出ていけ!以上だ」
まさかルール確認でもなく、激励でもなく、追い込みとは……
ギルバード先生が取る手段はもはや何でもアリだな、とフェイトは思った。
「では、ルール確認です」
新たに壇上に上がった生徒は--クロ先輩?
「生徒会長を務めるクロ・シンフォニアです。ルールの方は、相手を殺さないよう務めること、そして512名でバトルロイヤルを行い、最後まで立っていられた16名によるトーナメント戦を午前中の内に行います。そして上位4名は午後から始まる2年生のバトルロイヤルに進出、同様に16名を絞ってトーナメントを行い上位4名を決定する。
……後はこの繰り返しですが、今日決まるのは3年生の上位4名決定までです。明日午前中にて4年生、5年生の試合を消化し、午後にチーム戦を行います。そして明後日午前にチーム戦準決勝と決勝、午後に個人戦決勝が行われます」
まあ、つまる所勝たなければ何も残らないと覚えればいいだけの話だ。
「明日、明後日は一応休日扱いのため欠席でも構いませんが、出席した場合は振りかえ休日もありますので参加や見学希望の方は、当日出欠確認を忘れないように。--以上になります」
クロ先輩は一礼した後壇上をおり、ついに開会式が終わった。
……後は壮絶なバトルロイヤルだ。
「では生徒の方は10分の待機時間が与えられます。その間はどうぞ自由に」
フェイトはゲイト、ピアとはぐれないよう気を付けながら、レイを探した。
この待機時間の間に、どれだけ有利なポジションを取れるかも、勝敗に関わってくる。
ど真ん中、孤立無援の場所にいたら巻き添えや流れ弾だけで、戦闘不能になってしまう。
狙いが殺到しがちなのは壁際。ただし、隅になると囲まれた時の脱出がしにくいので不人気だ。
範囲が校庭だけなので、高所が存在しないが、遊具(筋トレマシーン)ゾーンも範囲に含まれるため、乱戦が得意な面子はそこを目指しているだろう。
一方、フェイト達四人は。
「あちゃー、壁際はダメだね」
他クラスのレイを迎えに行った時点でスタートダッシュが望める訳もなく、壁際どころか隅すら空いていない。
「こうなったら、戦り易そうな生徒を見つけて、そいつらからポジションを奪うしかないな」
敢えてすぐ衝突するような配置で挑み、速効でポジションを奪う。
実力さえあれば出来るが、地形の不利には変わらない。……挟撃されなければいいのだが。
「フェイト、私が殿を持つから、10秒で決着つけてきて」
レイはこれでも今年最優秀の生徒である。彼女に殿を任せればまず、問題ないだろう。
ちなみに余談だが、バトルロイヤルとはあるがチームで行動しても問題はない。
というより、アマリリスやクロと言った実力者でも無い限り、単独で立ち回って勝ち上がるというのは鬼門だ。
どうせ上位で個人トーナメントを組まれるのだから、そこに辿り着く過程はそんなに気にしない。
現に、2~4人、もしくは20人以上で組んでいるように見えるチームもある。
「んじゃ先手はピアに譲った」
「譲られた」
「俺も直ぐに突っ込む、フォロー頼んだ」
「任された」
「殿は任せてね」
そして、1年生512名によるバトルロイヤルがついに幕を開けた。
「ハァァァ!!」
鬼神の如き表情で矢の如き駆けようを見せるのは、双剣士のピアだ。
持ち前の速さを活かして、ポジション奪いの先鋒を切って駆け抜けるが、
「あれ?」
狙われた相手の2人は、アッサリとポジションを放棄し逃げるように回り込む。
だが、ゲイトが逃がさない。
ここで逃がしてもいいが、叩ける時に叩いておかないとライバルは一向に減らず時間だけが消耗してしまうからだ。
逃げる2人は更に大廻りに迂回するが、ゲイトを飛び越え躍り出たフェイトの一刀の下斬り伏せられる。
「ナイス引き付け」
「ナイス一刀」
手早く確認すると、ピアは既にポジションを奪取していたため、早速襲われていたレイにも引き上げるよう声を出す。
素早くバックステップで下がりフェイト達と合流すると、今までレイを狙っていた生徒達は素早く方向転換し、逃げるよう他方面に駆けだす。
「……なんだなんだ?」
ゲイトが不審そうに声を出すと、
「恐らく、フェイトとレイが合流したからだと思いますねー。騎士の称号を持つフェイトが恐れられるのは当然です、唯一崩せる隙があるとすれば、今のレイの孤立した状況を叩くのみ。それが失敗しては、もう時間まで誰も寄ってこないでしょう」
「……納得いかねえ」
忌々しげに呪詛でも吐き出すかのように、ゲイトが声を絞る。
確かにこれではゲイトとピアは、虎の威を借る狐であろう。それは騎士を目指す少年少女には、耐えがたい侮りだ。
「すまん、フェイト、レイ。俺行ってくるわ」
「俺、じゃなくて、俺ら、でしょ?」
ゲイトの隣から勝ち気な瞳を覗かせるのは、ピアだ。
あの紅蓮の瞳には、復讐の炎でも宿っていそうな程強く燃え盛っている。
そんな戦好きの二人を止める気など、友人である二人は持ち合わせていなかった。
「行ってこいよ」
「残っていなくて、笑い者にならないようにね」
視線で答えると二人は直ぐに駆けだし、戦場へと戻っていった。
ゲイト達が戦乱の最中舞い出ると、そこは既に大乱闘であった。
直ぐ真横から槍が突き出たかと思えば、上空から斧が振ってくるし、いつの間にか狙われた弓兵のしつような狙い撃ちは、ほとほと困ったものだ。
ガン!
ランスで刺しては、致命傷になるためランスを鈍器として扱い怪我を抑える。
そんな手加減をしつつも、ゲイトは7人程討ち取った。
背中を任せているピアは、張り切っているようですでに倍以上の16人だ。
--しかし、問題はピアのスタミナだった。
入学直後から言われ一ヶ月間取り組んできたスタミナ強化だが、それでもこの時間生き残るには足りない。
既に息が切れかかっているピアを、ここに置くのは危険と判断するが、相手もさるものでその瞬間を待っていたかのようハイエナの如き嗅覚で、こちらを囲む。
「やーれやれ、どうするかね?」
強行突破はゲイト一人なら可能だ。ランスの突進力を止められる武器は少なく、今構えて走り出せば容易に抜け出せるだろう。
しかし、そもそも狙われているのがピアなので、いくら包囲を破ろうともピアだけを狙い撃ちされればピアが逃げ切れない。
他に方法は----
焦りだけが募るなか、ついに包囲網を狭めた10人を超える生徒が二人に襲いかかった。
(ヤバイ!!)
本能だけで回避を拒否し、ピアを守るようにガードの姿勢を取る。
「ゲイト、逃げ--」
既にピアの目の前に迫る敵は、ゲイトの後方。ゲイトは今正面と左右だけで手一杯でこちらまで、気を配れない。
(動いて!!)
ドスン!バタン!!ドシャアアア!!!!
……??
ふと視界が開けると、先ほどまでの包囲網は既に完膚無きまでに崩されていた。
というより全滅していた。
そして、理解するより先に声が聞こえる。
「ヒーロー参上、ってか」
「主役は遅れて来るものよ」
……全く、格好つけの友人と姉だ。
「バカ、来るのが遅いの」
ピアもようやく息を整える時間が出来、後にまた出陣する----
■■■■■■
バトルロイヤルは想像以上に密集していたため、1年生の部は時間通りに終了した。
上位16名の中に勿論フェイト達4人は残り、周囲を絶望に変えた。
そして、発表された組み合わせとは--
「俺と」
「私ね」
フェイトVSピア
「マジか」
「よろしくね」
ゲイトVSレイ
これらのカードが1回戦で決まった。
ちなみに入学式直後絡んできた侯爵家のナイト・ファブレは、バトルロイヤル予選落ちだ。
フェイト達はブロックが違うため、どちらが勝ち上がっても2年生バトルロイヤルに最大二人参加出来るが、最低二人はトーナメント落ちとなる。
そして、広い校庭で16名、8組みが一斉に個人戦を開始する。
まず始めに激突したのは素早さがウリのピアと、フェイトの組みだった。
「惜しいな、上手くいけば四人とも勝ち上がれたのにな」
鍔迫り合いをしながらも、呑気に会話をするフェイト。
「本当ね、フェイトが予選落ちなんて可哀想だ、わ!!」
交差させた双剣でフェイトとの鍔迫り合いを払うと、すぐ様追撃に掛かる。
----双剣のメリットは流れるような連撃だ。
弾こうが、避けようが、防御しようが、どれでも直ぐに次の攻撃に繋げられる。
剣が2本あるというメリットはズバリそこに尽きる。
片方の剣を避けても、もう片方が刈り取る。よしんばそれすら避けても、最初の剣が舞い戻り再び剣撃が舞う。
双剣使いを相手にするならば、間合いを外すか、剣を先のように鍔迫り合いで固定しなくてはならない。
お互い、訓練で手合わせをする内にお互いの癖、呼吸、好みの戦術、弱点は把握している。
この勝負、どちらが先に相手の弱点を補足出来るかが勝負の分かれ目となる。
一方
ゲイトのランスは闇雲に走っていた。
技術的にレイに劣っているゲイトが導き出した戦術は、ズバリ体力勝負そのものだ。
ランスに乗せる突進は、走駆力、武器の重量、ゲイト自信の筋力と体重、それらを乗せて、レイが正面から受け止められない衝撃を持つ。
レイからすれば、暴走するトラックを相手にしているようだ。
ガソリンという名の体力が尽きるまで、手出しが出来ない。
それまでは避け続け、隙が出来るのをひたすらに待つ集中力の持続こそが勝負の分かれ目だった。
そんな光景を遠目から眺める、大きな弓を持つ女性。
「フェイト、羨ましい潜在能力だ。--それに引き換え私は……」
左手に携えている弓を一瞥、九行なずなはそれきり姿を消した。
「ハッ!」
ピアの剣が舞うように顎先を狙って上昇する。
「くっ、」
見切りをつけて、毛先程の距離でかわすが続けざまに脇腹を狙うもう一つの刺客が、フェイトの反撃を決して許さない。
キンッ!
澄んだ金属音を響かせなんとか止めるが、その音を聞く前からピアは振り上げた剣を振り下ろしている。
ずっと積み重ね、体に染みついた双剣の記憶。
実戦で意識よりも、反射よりも先に体が動く修練の極致。ピアも入学前から相当に修練を収めてきたようで、本当に手強い。
だが、フェイトも負ける訳にはいかず、振り下ろされる絶断の剣を体裁きを用いて独楽のように回転し、防御に使った剣ごと引き抜き距離を取る。
そして、防御されていたピアの左手の剣はフェイトの着地を許さずに投擲され、攻撃はずっと止まらない。
フェイトが剣でガードすると、弾かれた剣をピアが空中でキャッチし、再び攻撃の手は止まらない。
(本当に参った)
同じ騎士剣でやるレイと、ランスで戦うゲイトとは違って、本当に双剣は苦手だ。
本来ならばフェイトも空いた左手で魔法を撃ち、剣と併用して攻めるためこうまで苦戦しないのだが、今は魔法を使わないで挑んでいる。
そうなれば普段の手数と比べ、半減以下なので開幕からずっとピアに主導権を握られたままだ。
残りの頼みは
「フェイト、身を伏せた後足払い、それで形勢が変わります」
ずっと黙ったままの、支援デバイス「シン」だ。
ようやく今のフェイトとピアを比較し、そして地形や態勢を判断して導かれた解答がこれだ!
地を舐めるように這い迫るピアに対し、身を伏せるという意味が分からないが、とにかくその通りに行動する。
地と擦れる程低空から舞い上げられた剣は、予想外の動きを捉えきれず空を切る。
だが、残してあるもう片方の剣で切れば----
その考えは、一足先に繰り出された足払いにより態勢が大きく崩れる。
元々地を這うような姿勢は人間としては不格好であり、バランスが取りにくい。
疾走と攻撃範囲を狭める、という意味ではメリットがあるが、反対にデメリットだってあるに然る。
それが無理な姿勢だったということだ。
躓き、前に滑るように転がっても双剣だけは離さない----
だが、頭上から突きつけられた騎士剣は勝敗を決するものであり、ついにせめぎ合いはフェイトに軍配が上がった。
「どりゃあああ!!」
相も変わらず重量ある突進を見せるゲイトだが、避けられたのは既に何度目か?
走れば走るほど体力は削られ、最初に見せた突進のピークは下降を辿る一方だった。
しかし、それに比例してレイの集中力も削られていく。
あの走駆力を前にすれば、毎回紙一重でかわさねばならない。
事前に大きく避けようとしても、ゲイトが方向を合わせるだけで直ぐに追いつかれてしまうからだ。
だからこそ、レイはまるで闘牛士かの如くその赤き制服を布に例え、ギリギリまで引き付けてからかわすのだ。
一撃もらえば、致命傷。
それが分かるからこそ、集中力は決して切らさないし、より研ぎ澄ませて反撃の機会さえ伺う。
だが、こんな体力勝負も既に走駆が二十度を超えた段階で、数えるのを止めた。
キレこそ落ちているが、反撃の隙を与えないゲイトに未だ一撃すら加えられず、回避に徹すうレイは次第に焦燥に駆られてきた。
周囲を見渡すことは叶わないが、気配が減っている事は確かだ。
もしかしたら、自分以外全ての戦闘が終わったのかもしれない。
それなのに、自分はまだ避けるしかしていないのだ。
ゲイトの体力を褒めるのもいいが、何故自分はその走駆を止めるだけの力がないのだろうか?
それを歯噛みしていた。
かわし際に一撃を下せるだけで、勝敗は決するというのにゲイトは全くその隙を見せない。
もし、捨て身で挑んでいたのならば……?何合か前には決着がついたのかもしれない。
5月にして照りつける太陽は、恨めしい如く燦々と輝く。
知らず疲労が溜まっていたレイが、一呼吸入れようと息を吐いた瞬間--
ゲイトは猛加速を以ってレイを射程圏内に捉えた。
(嘘っ!規則正しいリズムじゃない……もしかして、一瞬の隙を狙われていたのは私の方?)
ゲイトは次の突進に繋げるとは微塵も思えない程、力を振り絞り突撃を掛ける。
呼吸を吐いたばかりで、集中力が落ちたレイに取ってはまさに致命傷となる一撃に他ならなかった。
そして、見る者が回避を危ぶむゲイトとレイの交差の瞬間の軌跡----
一瞬の内に勝敗が決定した。
「勝者----レイ・ハルト」
あの瞬間、柄にもなく負けを覚悟したレイが取った行動は、
練習段階だった、足技を放つことだった。
剣の修行に時間を費やしてきたレイだったが、フェイトの魔法に感化されたためか、同じ騎士剣使いとしてフェイトとの差別化を図ろうとしていたのだ。
そのための技術の一つが、足技だった。
元より鍛錬を積んで鍛え上げられた自慢の脚は、技を覚えさせるよう染み込ませる時間こそ掛かったが、その威力は申し分ないものに仕上がった。
ただ、フェイトと戦うまで取って置きたかった、ということもあるし、何より実戦で初めて放ったため成功率が未知数だったのだ。
だが、レイはあの瞬間決断した。
騎士剣を地面に刺して、軸として固定。
そのまま跳び上がり剣を軸に半回転。この時点でゲイトのランスを刹那でかわす。
そのかわした勢いを以って、二の太刀いらずで突撃をかけたゲイトに振り下ろして、勝敗は決したのだった。
「やっぱ強いわ、レイ」
「ありがと」
「フェイト、次は勝つからね!今年はちゃんと勝ち上がるのよ!!」
「ヘイヘイ」
仲の良い友人達は、激励を交わし合って次のステージへと駆け昇る----